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ひとり旅は「ご褒美」ではなく「投資」。ソロ温泉の達人があえて〝孤独〟を選ぶ理由

高橋一喜温泉ライター/編集者

ソロ温泉という言葉を聞いて、「要は、ひとり旅ってことでしょ?」「言い方を変えただけでしょ?」と思われた方もいるかもしれない。

ひとり旅であることに変わりはないが、ひとつだけ一般的にイメージされるひとり旅とは異なる側面がある。それは、ソロ温泉は「投資」であるという点だ。

ソロ温泉は自分への投資

ひとり旅に限ったことではないが、温泉旅行といえば、自分への「ご褒美」という文脈で語られがちだ。よく女性誌で特集される「おひとりさまのご褒美温泉」などもその類いである。

たしかに、日頃の疲れやストレスを解消という意味では「ご褒美」ともいえる。筆者も温泉にハマった当初は、「ご褒美」としてのひとり旅を楽しんでいた。

しかし、筆者が提唱するソロ温泉の定義はもっとストイックである。

ご褒美とは、頑張った結果、与えられるもの。しかし、ソロ温泉ではベクトルが逆で、「温泉は日々の人生を頑張るために入りに行くもの」と定義している。

言い換えれば、ソロ温泉は自分への「投資」。将来の成果のために時間と資本を投入することである。

「この大きな仕事が終わったら、ご褒美として温泉に行こう」ではなく、「仕事で成果を出すために、投資として温泉に行こう」という発想だ。

恐山(青森県)はソロ温泉に向いている
恐山(青森県)はソロ温泉に向いている

高パフォーマンスを発揮するための旅

質の高い仕事をするためには、心身を整える必要がある。慢性的に疲れ切った脳や体では、集中力を維持できない。クリエイティブな発想や困難な問題の解決もおぼつかない。

脳と体が疲弊していれば、精神的にもネガティブになりがち。大きな仕事になればなるほど、充実した体力とタフなメンタルが必要になる。

筆者は仕事柄、優秀な経営者やビジネスパーソンに取材する機会があるが、彼ら彼女らはオン(仕事)とオフ(休み)のスイッチをうまく使い分けている。

日頃からベストパフォーマンスを発揮するために、効果的に休みをとっているのだ。目一杯、仕事をする一方で、休息や遊びにも徹底的に取り組む傾向がある。

城崎温泉でひとり湯めぐりする時間も楽しい
城崎温泉でひとり湯めぐりする時間も楽しい

徹底的に心身を休める

ムダな残業や休日出勤など日本企業の悪習が徐々に排除されていく一方で、生産性や効率が求められる現代社会を生きるビジネスパーソンは、かえって息の抜けない日々を送っている。

複雑で多岐にわたる人間関係、情報過多のデジタル環境の中で、頭と心は疲弊し、あっという間に時間が過ぎていく。昨今のコロナ禍によるストレスもじわりじわりと心身を蝕んでいる。

そんな日々を送っている人こそ、心と体を徹底的に休めるための「投資」が必要だ。そのためにいくつか方法は考えられるが、ひとりの時間を確保し、心身を休めるのに適したソロ温泉も当然、有力な選択肢のひとつになり得る。

以上のことを踏まえてソロ温泉を定義すると、こうなる。

「人生を頑張る力を得るために、ひとりでただひたすら湯に身をゆだねて、心と体を解き放つこと」

日々の仕事や人間関係に疲れ切っている人にこそ、ソロ温泉を実践してみてほしい。

さて、次の旅はどこへ行こうか?

高橋一喜|温泉ライター
386日かけて日本一周3016湯を踏破/これまでの温泉入湯数3800超/著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)/温泉ワーケーションを実行中/2021年1月東京から札幌へ移住/InstagramnoteTwitterなどで温泉情報を発信中

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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