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最年少名人候補・藤井聡太三冠(19)実力者・横山泰明七段(40)との対局始まる B級1組6回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月30日10時。大阪・関西将棋会館において第80期B級1組順位戦6回戦▲横山泰明七段(3勝2敗)-△藤井聡太三冠(4勝1敗)戦が始まりました。

 対局がおこなわれるのは関西将棋会館4階、水無瀬(みなせ)の間。これまで藤井三冠の多くの対局がここで指され、中継されてきたところなので、将棋ファンの方にとってもなじみの深い部屋かもしれません。

 5階・御上段(おんじょうだん)の間では王将戦リーグの▲豊島将之竜王-△糸谷哲郎八段戦がおこなわれています。

 いつの時代もトップクラスの棋士は多忙を極めます。藤井三冠も王将戦リーグを戦っていて、27日には糸谷八段に勝ちました。

 順位戦では20日に木村一基九段に勝っています。

 藤井三冠の今年度成績は29勝6敗(勝率0.829)です。

 藤井三冠がもし本局に勝てば、2021年度前半6か月だけで30勝目をあげることになります。2020年度、12か月を通して30勝以上をあげた棋士が10人しかいないことを考えれば、驚異的なハイペースというよりありません。

 9時42分頃。藤井三冠が水無瀬の間に姿を見せ、上座に着きます。続いて45分頃、横山七段が姿を見せました。

 横山七段の今年度成績は10勝6敗(勝率0.625)。直近の対局は9月16日、前節の順位戦で、近藤誠也七段に勝っています。常に安定した成績をあげ続けている横山七段。順位戦では何度も次点に泣くなど苦労を重ねてきましたが、ここからA級に昇級しても、なんら不思議ではありません。

 両者ともに駒を並べ終えたあと、静かに対局開始のときを待ちます。

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、横山先生の先手番でお願いします」

 記録係が声をかけ、両対局者は一礼。持ち時間6時間の対局が始まりました。

 後ろの髪が少し跳ねている横山七段。少し中空を見上げたあと、初手、飛車先の歩を突きました。横山七段は以前は振り飛車党。それをキャリア途中でスタイルチェンジして、現在は居飛車党に変わっています。

 藤井三冠はまず紙コップを口にします。そして2手目、いつもどおりに飛車の前の歩を一つ前に進めます。相手がどんな作戦でも堂々と正面から受けて立つ、デビュー以来変わらないスタイルです。

 進んで、戦型は相掛かりとなりました。現代将棋最前線の序盤です。

 本日、B級1組は全部で6局おこなわれています。

 昇級争いでトップに立つ佐々木勇気七段は、王座挑戦中の木村一基九段と東京で対戦しています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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