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序盤、中盤スキなし豊島将之挑戦者(31)巻き返せるか藤井聡太王位(18)王位戦七番勝負第2局2日目

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月14日9時。北海道旭川市・花月会館において、お~いお茶杯第62期王位戦七番勝負第2局▲豊島将之竜王(31歳)-△藤井聡太王位(18歳)戦、2日目の対局が開始されました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 昨日1日目とほぼ同じく、豊島挑戦者は8時47分、藤井王位は50分頃に入室。上座の藤井王位が駒箱を手にして、盤上に駒をあけました。

 将棋の駒は多くの場合「王将」と「玉将」があって、上位者が「王将」を持つのが慣習です。本局で使われる駒は「玉将」が2枚。いわゆる「双玉」です。藤井王位、豊島挑戦者ともに「玉将」を所定の位置に据え、あとは「大橋流」で駒を並べていきます。

 本局の立会人は北海道札幌市出身の広瀬章人八段。記録係は地元旭川市出身の広森航汰三段です。

広瀬「それでは1日目の指し手を再現します」

広森「先手・豊島竜王▲2六歩。後手・藤井王位△8四歩。・・・」

 広森三段の棋譜読み上げに従って、両対局者は昨日の指し手を並べていきます。戦型は角換わり早繰り銀。

広森「後手△5四角。先手▲6五歩」

 藤井王位が自陣に筋違い角を据えたのに対して、豊島挑戦者は角と銀の利いているところに歩を突き出します。ここで1日目が終了。藤井王位が42手目を封じました。この一手の消費時間は1時間13分。熟慮の末の決断といえそうです。

広瀬「それでは封じ手を開封します」

 初めて正立会人を務める広瀬八段。封じ手を預かるのも、開封するのも初めてのことです。封筒がかなり頑丈にできているのに対して、使われるはさみはごく普通のもの。広瀬八段の手が少し震えているようにも見えました。

 封じ手用紙には赤ペンで角に丸がつけられ、歩が突かれた場所に矢印が引かれていました。

広瀬「封じ手は△6五同角です」

 藤井王位は歩を取って、角を斜め1つ前に進めます。歩を得する一方、角筋がそれて、先手陣右辺には利かなくなりました。

 両対局者は改めて一礼。2日目の対局が始まりました。

 藤井王位は手元の「お~いお茶」のペットボトルを手にして蓋を開け、グラスに注ぎ、一口お茶を飲みました。

 豊島挑戦者もまた同じようにお茶を注ぎます。藤井王位の指し手は意外だったのか。それとも前日からの読みを確認したか。豊島竜王はすぐに次の手を指しませんでした。

 豊島挑戦者は24分を使い、飛車先の歩を突いて攻めていきました。攻めの銀が相手の守りの銀と交換になり、自然にさばけて好調を思わせます。

 藤井王位は手にしたばかりの銀を打ち、相手の飛車を押さえこみにいきます。52手目、藤井王位が3筋に歩を垂らしたところで12時30分、昼食休憩に入りました。

 13時30分、対局再開。豊島竜王は飛車を浮き、攻めを続けていきます。

 56手目、藤井王位は筋違い角をじっと一つ引いて辛抱しました。形勢はわずかに豊島挑戦者ペースと見られています。また持ち時間8時間のうち、残りは藤井1時間0分、豊島3時間9分。かなりの差がついているのも、豊島挑戦者にとっては有利です。

 時刻はそろそろ15時。現在は豊島挑戦者が57手目を考えています。

 王位戦七番勝負の2日目は夕食休憩はなく、終局まで指し続けられます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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