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台風の接近状況に応じた行動チェックリスト 浸水対策や水確保を

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
非常用品(いらすとや)

 台風は事前に備えることができる災害だ。備えによって被害を最小限に食い止めることができる。天気予報では台風の発生から「○日後に最も接近する」などの情報を知ることができる。

 そこで台風の接近状況に応じた行動チェックリストをまとめた。事前に用意しておくと、いざというときの負担を減らすことができる。

台風発生前の行動チェックリスト

□ハザードマップ上に自宅の位置を記す

 ハザードマップは随時更新されているので最新版を確認。2015年に水防法が改正され、「50年から100年に一度の大雨を想定した浸水場所」が、1000年に一度の大雨を想定した浸水場所」に変わった。

□避難所へ避難か、自宅で避難かを決定し、同居者と共有する

 ハザードマップ上の自宅の位置に色が塗られていたら避難所、色が塗られていなければ自宅で避難が基本だが、以下の2点を検討する。

 1)色が塗られていなくても周囲に比べて土地の低い場所、崖の側に住んでいる場合→避難所へ

 2)色が塗られていても、以下の3つの条件が揃っている場合→自宅で避難

 a)洪水による家屋倒壊、崩落の恐れがない

 b)浸水深度より高い場所に住んでいる(高層階など)

 c)浸水しても水、食料の備え、トイレや排水など衛生環境の確保ができる

□避難所と経路を同居者と歩いて確認

 ・自治体のHPで近隣の避難所を確認(新型コロナの感染防止対策で避難所が増えている可能性がある)。

 ・同居者といっしょに避難所まで歩く(ハザードマップを持参し、道中に低い場所、崩れやすい場所がないか確認する。もしあれば実際に避難するときに、水や土砂で塞がれている可能性があるから、別の避難所、避難経路を見つける)

 ・避難にかかる時間を測定する。この時間によって警戒レベル2、3、4のいずれで避難するかを決める

□非常用品とリュックサックを用意する

 ※自宅避難か避難所へ行くかで分量は変わる。

 ・マスク、消毒液、体温計(新型コロナの感染防止対策として持参することが求められている)

 ・防水機能のある懐中電灯(夜間に自分の居場所を知らせることもできる。胸ポケットにさせるタイプ、ヘッドライトだと両手があくので便利)

 ・予備電池(スマホ用のモバイルバッテリー)

 ・着替え

 ・タオル

 ・マッチやライター

 ・救急薬品

 ・携帯ラジオ

 ・貴重品(公衆電話に使える10円玉も)

 ・非常用食料と水(飲料水、乾パンやクラッカー、レトルト食品、缶詰、粉ミルク、哺乳ビン、ナイフ、缶切りなど)

 ・ボンベ式コンロ(自宅避難の場合)

 ・簡易トイレ、携帯トイレ(自宅避難の場合)

 ・油性の太マジック(被災後、壁などに連絡先やメッセージを書いたり、自分の所有物に名前を書く)

 ・丈夫な靴(底がしっかりしていて脱げにくいもの)

 ・軍手

 ・使い捨てカイロ

 ・紙おむつ

 ・生理用品

 ・厚手のごみ袋 など

 ・杖(避難時に足元を確認する)

 ・復旧作業用のマスク(土砂災害が起きたのち乾燥してくると埃が出る。ゴーグルもあれば便利)

台風接近3〜5日前の行動チェックリスト

□雨樋、側溝、排水溝を掃除

 つまっていると洪水の原因になる

□屋根、塀、壁、窓などの点検と補強

□庭やベランダに飛んだり、倒れたりするものがないか確認

 ・庭木に支柱を立てる

 ・強風で飛ばされる可能性のあるものはしまうか固定 (傘立て、傘、物干し、植木鉢、プランター、ガーデニングの道具など)

□近所の人とのコミュニケーション

 台風が接近していること、自分の避難計画、避難所のことなどを情報共有する

□情報を確認する

 台風の経路や移動速度は変わる可能性がある

台風接近2、3日前の行動チェックリスト

□家電を高所や2階に移動するなど浸水対策をする

□断水に備えてポリタンクなどに水道水を確保する

□浴槽に水を張るなどしてトイレなどの生活用水を確保する

 小さな子どものいる家庭では常に蓋をするなど十分に注意する

 注)停電すると送水ポンプが動かなくなって断水することもある。マンションなど貯水槽水道を利用している場所では、停電後も屋上などに設置された貯水槽に水があるうちは問題ない。しかし、ポンプが止まっているため水がくみ上げられず、やがて断水する。

□非常用品をもう一度確認する。避難所にいく場合、リュックサックに入れる

□情報を確認する

 台風の経路や移動速度は変わる可能性がある

□携帯、スマホのフル充電を心がける

台風接近・避難時の行動チェックリスト

□台風、河川の増水、避難所の情報を確認する

 内閣府・消防庁の「避難行動判定フロー」によると、避難に時間がかかる場合は「警戒レベル3」で、時間がかからない場合は「警戒レベル4」で避難することとしているが、想定浸水地域が広域に渡る場合には、避難場所・避難所が遠くになる可能性があり、より早めの避難が必要になる(事前に自宅から避難所までの移動シミュレーションをしておくことが重要だ。

□ガスの元栓を閉める、電気のブレーカーを落とす

□戸締りを確認する

□あらかじめ用意しておいた非常用品入りのリュックサックをもつ

□脱げない靴、作業靴、紐履などの紐をギュッと結んで、中に泥が入らないようにする

 水かさが増しているときは長靴やサンダル履きだと、最初の一歩で土砂に埋まり、脱げてしまうケースがある。すると裸足で歩くことになり、地面にガラス や鉄筋があると危険。

□足元を確認するために杖をもつ

□近所の人に声がけする

台風通過中の行動チェックリスト

□情報を確認する

□外出しない。車で移動中に亡くなるケースが多い

□水のあるところに行かない

 田んぼ、用水路、河川、海岸。気になっても我慢する。亡くなるケースが多い

□低いところに行かない

 低地、地下街、アンダーパスなど

□山や丘を切り開いて作られた造形地、河川が山地から平野や盆地に移る扇状地に行かない

台風通過後の行動チェックリスト

□情報を確認する

 雨が止んで上流から水がきて増水するケースがある。しばらくは自宅や避難所にとどまる。

□土砂災害に注意する

 地盤が緩んでいるので十分に注意。少しの雨でも崩れることがある。

□復旧作業で必要なもの

 ・マスク(天気が回復してくると埃が舞う。粉塵よけ)

 ・ゴーグル(天気が回復してくると埃が舞う。粉塵よけ)

 ・軍手(ゴム製がよい)

 ・カッターナイフ、ドライバー

 ・厚手で大きめのゴミ袋(ものを入れて運ぶのに便利)

 ・油性の太マジック(流された所有物に名前を書く、連絡を取り合うなど)

 ・長靴やサンダルはぬげると足裏を負傷する恐れがあるので、作業靴か底のしっかりした靴がよい

あくまで目安だが、参考にしながら、落ち着いて行動して欲しい。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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