米国の国連大使が猛批判―安倍政権のせいで南スーダン大虐殺の危機、自衛隊PKO派遣の本末転倒
南スーダンでの自衛隊の活動を続けるため、現地の人々を虐殺の危機にさらす―安倍政権の外交の本末転倒ぶりが、内外の反発を招いている。内戦が激化の様相を見せ、大規模な虐殺が行われることが懸念されている南スーダンへ、国連安保理は、武器禁輸制裁を課すことを検討している。だが、この制裁案に日本は「PKO任務に悪影響が及ぶ」と難色を示しているのだ。今月19日には、米国のサマンサ・パワー国連大使が「(南スーダンに)多くの武器が流れ込むことが、人々の安全につながるのでしょうか?」と、日本の姿勢を強く批判するなど、国際問題化している。
◯自衛隊PKO派遣のために武器禁輸に反対
自衛隊の南スーダンPKOでの駆けつけ警護の問題については、これまで憲法やPKO協力法、自衛隊が直面する危険性などについて議論されてきたが、新たな問題が浮上してきている。それが国連安保理で検討されている南スーダンへ武器輸出を禁じる制裁措置への安倍政権の動向だ。ある外務省関係者は、筆者に対し「南スーダンに対しては、日本政府として、人権状況を改善するよう求めている」と弁明するが、やはり自衛隊を現地に派遣している中、南スーダン政府のご機嫌を損ねたくないというのが本音のようだ。「武器禁輸制裁が南スーダンでのPKO活動にとって良いかというと、日本政府としては違う考えを持っている」(外務省関係者)。また、「対南スーダン武器禁輸制裁案については、岸田外相と首相官邸が緊密に連絡を取り合って日本政府としてのスタンスを決めている」ともいう。つまり、安倍政権は南スーダンの人権状況がどうなるかよりも、自身の支持率にも影響し得る派遣された自衛隊への影響を優先しているのではないか。もし、そうで無いならば、武器禁輸制裁以外に、南スーダンで虐殺が行われないため、有効な手立てはあるのか?外務省関係者に問いただすと、「日本政府としては引き続き、南スーダン政府に対して理解を求めていく」と繰り返すにとどまった。
◯国内外から、安倍政権への批判や懸念の声
こうした安倍政権の詭弁に対し、前出のパワー国連大使は19日の国連安保理の場で手厳しく批判している。
国内の人権団体からも懸念の声が上がっている。国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の日本支部代表の土井香苗さんは「国連安保理で、対南スーダン武器禁輸制裁が決議されるためには9カ国の賛成が必要ですが、既に8カ国が賛成しており、日本の判断の行方が非常に重要です」と訴える。弁護士で人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」事務局長の伊藤和子さんも「対南スーダン武器禁輸制裁では、米国と意見が対立しがちなロシアや中国も拒否権を発動しないとしています。日本が賛成しないために、制裁案が成立しなかったとなれば、国際社会からの批判は免れないでしょう」と指摘する。
◯安倍政権のせいで、南スーダンで大虐殺の危機
南スーダン情勢をめぐっては、今月1日、人権問題を調査する国連の委員会が「飢えや集団強姦、村の焼き打ちなど、南スーダン各地で既に民族浄化が進んでいる」と警告。1994年にアフリカ中部のルワンダで、少なくとも80万人が犠牲となったとされる大虐殺の再来になりかねないと危機感をあらわにした。19日には、潘基文・国連事務総長も「即座に行動を取らない限り、南スーダンで大量虐殺が始まる可能性がある」と、武器禁輸制裁を急ぐよう安保理に繰り返し求めるなど、状況は非常に緊迫している。そんな中、安倍政権の姿勢は、あまりにも呑気なものだ。今月20日の会見で、岸田文雄外務大臣は武器禁輸制裁案への対応についての記者の質問に対し、「安保理理事国の中には,様々な考え方があるということも理解しているが、(南スーダン政府の和平への取り組みを後押しするという)我が国の考え方の大切さはしっかり訴えていかなければならない」と、煙に巻いた。前出の国連の委員会は、南スーダン政府が新たな大規模軍事作戦を計画していることや、反大統領派の武装勢力が軍備を増強していることを報告している。このままでは、安倍政権のせいで、南スーダンでの大虐殺が始まってしまうことになりかねない。
◯自衛隊南スーダン派遣の本末転倒
自衛隊を南スーダンPKO活動に派遣する目的が、同国の平和と安定を目的にしているのであれば、自衛隊の安全確保のために、対南スーダン武器禁輸制裁に安倍政権が反対することは、全くもって本末転倒だ。前出のパワー米国連大使も指摘している様に、南スーダンに武器が流入することで、自衛隊ほか各国のPKO部隊や国連職員らも脅威にさらされる可能性が極めて高い。今、日本がどう動くかが、どれだけ重い責任が伴うものであるかを、安倍政権の面々も、有権者らもよく考えるべきだろう。
(了)