【最新グルメ】タパタイザーのすすめ
タパタイザー
タパタイザーをご存知でしょうか。
知っているとすれば、かなりの最新グルメ通です。タパタイザーとは「タパス」と「アペタイザー」を合わせた造語です。
タパタイザーは2014年9月16日からストリングスホテル東京インターコンチネンタルの「ザ・ダイニング ルーム」で提供されている新しいスタイルの料理で、ディナーコースの前菜として組み込まれています。
コースの前菜
タパタイザーは、タパス風の小皿料理が数品テーブルに供され、食べ終えるとまた次の小皿料理が数品テーブルに供されるというスタイルです。全部で15種類以上もあり、一通り食べ終えると、また食べたいものがあるかどうかを訊かれ、再び持って来てもらうこともできます。
これだけでも、かなりのボリュームですが、タパタイザーはあくまでもコース料理の前菜に過ぎません。従って、当然のことながら、この後にメインディッシュ、デザートが順番にサーブされます。
通常のフランス料理やイタリア料理のコースと異なることはもちろん、ブッフェやオーダーバイキングとも異なる、全く新しいユニークなシステムです。
タパタイザーとは一体何ものなのでしょうか。
宿泊部門の女性から提案
広報マネージャー土屋薫氏は「ティールームと呼ばれる、若い社員が総支配人と自由に話せる場が、月1回設けられている。そこで、宿泊部門の女性から、様々な小皿料理をご提供できたら、お客さまにきっと喜んでいただけるはずだと意見があった」ときっかけを話します。
それを受けて、総支配人 金子宏之氏は「各部門長が集まり、互いに忌憚のない意見を述べ合う、レベニュールームと呼ばれるミーティングが週1回行われている。この場で、様々な小皿料理をご提供できないかと、私が自ら提案した」と振り返ります。
「面白い試みであると賛同してもらえたが、どういった形にしようかと悩んだ」と話し、どういうことであるかを問うと「お客さまに様々な小皿料理を召し上がっていただくのであれば、世間でも流行しているブッフェが相応しい。しかし、ザ・ダイニング ルームでは、ブッフェ台を十分に設けるスペースがない。本格的なブッフェを行うことは難しいと判断した」と答えます。
レイジースーザンを導入
それで諦めたのかというとそうではありません。「どうしても、お客さまに様々な小皿料理を楽しんでいただきたかったので知恵を絞った。その結果、調理スタッフとサービススタッフに負担はかかるが、テーブルに様々な小皿料理を次々とご提供するスタイルを新しく開発した」と、他ではみられない試みに至った経緯を説明します。
土屋氏は「全部門を挙げてアイデアを出し合った。タパタイザーという言葉は、ウェディングのマネージャーが考えたもの」と補足した後に、「ラウンドソファテーブルにはレイジースーザンを設けて、よりタパタイザーを楽しんでいただけるように工夫した」と意気込みを語ります。
レイジースーザンとは回転台のことで、中国料理店で大皿料理を取り分け易くするために用いられる仕組みです。タパタイザーは小皿料理が次から次へと運ばれて来るので、大きなテーブルで配り易いようにするため、わざわざ設けたということでしょう。
また「今後はタパタイザーの中身も季節やフェアに合わせて、どんどん新しくしていきたい」とアイデアは尽きません。
お客さまにご満足いただくために
料理長 小橋潔氏は「最初に相談を受けた時には調理スタッフもサービススタッフも大変になりそうだと感じた。しかし、お客さまによりご満足いただけるならと思ってチャレンジすることにした」と真剣な表情で振り返ります。
「タパタイザーは普通のアラカルトやコースと全く違う。宴会やパーティーと同じで、次から次へと手際よく作っていかなければならない」と明かしますが、「キッチンが1つしかないので、もともとアラカルトもコースもパーティーも同じ調理スタッフで対応していた。そのため、現状の調理スタッフでも、効率を上げていけば問題なく対応できるはずだと判断した」と述べます。
気を付けていることを問うと「メインディッシュをご提供するタイミングが難しい。サービススタッフと密にコミュニケーションを図り、最高の状態でご提供できるように努めている」と、食べ終わりが読めないタパタイザーならではのオペレーションの苦労を挙げますが、「サービススタッフが頻繁にテーブルを回るので、お客様との楽しいコミュニケーションが増えれば嬉しい」と期待も込めます。
メインディッシュもより魅力的に
「タパタイザーに力を入れているのはもちろんだが、これを機にメインディッシュも新しくした。食味がよい上にコレステロールが少ない『コレナイ豚』を使ったり、蓄熱性に優れた岩手県の『南部鉄器』を用いて旨味を逃さないようにしたりと、新しい試みに溢れている」と説明します。
タパタイザーを組み込んだディナーコースの一部をご紹介しましょう。
ボタン海老のマリネ オレンジとディル風味 パテ ド カンパーニュ マーマレード添え、ポテトとブルーチーズのサラダ、チェリートマトとポッコンチーニのカプレーゼ、オレンジとレーズン入りキャロットラペサラダ(タパタイザー)
パテ ド カンパーニュはお酒によく合います。ポテトとブルーチーズのサラダはブルーチーズの香りが解き放たれていて、口中一杯に広がります。チェリートマトは球形のモッツァレラであるポッコンチーニと相性抜群です。
ブランダード キャヴィエ添え、ポークリエット コレナイ豚のペースト、本日のスープ(タパタイザー)
ブランダードはスプーンで一口に。ポークリエットはコレナイ豚なのでしつこくありません。本日のスープは焼きとうもろこしの冷製クリームスープ。焼きとうもろこしのスープはほのかに焦がした香りが、甘くて優美なトウモロコシとよいコントラストです。
フォアグラコンフィ ドライフィグの赤ワイン煮添え、鴨のロースト、魚のマリネ ニース風味(タパタイザー)
フォアグラのコンフィは小さいクロッシュで閉じられています。適度なボリュームで辛口のシャンパーニュが進みます。鴨のローストはピケにして、細長い小グラスに納めて。
ナッツクラストフライドフィッシュ、スパニッシュオムレツ トリュフ風味、海老のアヒージョ、マッシュルームとしいたけのマリネ(タパタイザー)
スパニッシュオムレツは邪魔にならない程度でトリュフ風味。ナッツクラストフライドフィッシュは、ナッツの香ばしさと白身魚の旨味とが一体化した強い味なので、赤ワインとよく合います。海老のアヒージョはニンニクの香りが軽めです。
骨付きコレナイ豚ロース肉のロースト 塩レモンソース 野菜のトマト煮込み添え(メインディッシュ)
千葉県産のコレステロールが少ない豚「コレナイ豚」を目の前で好きなサイズにカービングしてくれます。思いきって、厚めにカットしてもらっても大丈夫です。ジュを合わせた塩レモンソースは異国情緒感があり、とてもさっぱり。白インゲン豆たっぷりのカスレを添えているので、ボリュームは満点。
黒毛和牛フィレ肉とフォアグラのコニャックフランベ トリュフソース(メインディッシュ)
王道のロッシーニを、目の前でコニャックを加えてフランベしてくれます。ソースはトリュフが香りますが、コニャックの甘味と優雅さが勝っているでしょう。フィレ肉は黒毛和牛なのでバランスよく脂があり、フォアグラもボリュームがあります。底にはたっぷりとマッシュポテト。
仔羊背肉の香草風味ロースト 野菜のトマト煮込み添え(メインディッシュ)
蓄熱性に優れ、一気に表面を焼き上げることでムラなく熱を伝える、岩手県奥州市水沢区「南部鉄器OIGEN 及源」を使った、仔羊背肉のロースト。ダイナミックに仕上がっており、背肉なので脂がたっぷりですが、ローズマリーとローリエ、黒胡椒で味を調えているので、結果的に品よく仕上がっています。
品川の港南エリアで存在感を
土屋氏は「品川の港南エリアにあるホテルはストリングスホテル東京インターコンチネンタルだけ。存在感を示していくと共に、品川にも恩返しをしていきたい」と想いを語ります。その想いが通じたのか、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルは、日本で初めての地ビールとなった「品川縣麦酒」(シナガワケンビール)を昨年から提供するようになりました。
品川縣麦酒は、1869年、品川縣知事が明治維新後に職を失った人を雇用するために藩主の下屋敷跡地にビール工場を建設したことで作られるようになりました。しかし、ビール工場の経営はうまくいかず、1877年には廃業となったので、品川縣麦酒は幻の地ビールとなりました。
それが2006年、立会川駅周辺にある商店街の有志たちが、品川を活性化させようとして集まり、当時の品川縣麦酒を再現させることに成功し、見事復活させることになったのです。品川という地域の地ビールにこだわっていたので、品川区内でだけ販売を開始しました。
品川縣麦酒とタパタイザー
実は、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルは、最寄駅こそ品川ですが、住所は品川区ではなく港区です。しかし、品川を盛り上げていこうという志は、商店街の有志たちと同じであり、それが通じたので特別に販売できることになりました。
130年もの時を超えて復活した品川縣麦酒を飲みながら、最新のタパタイザーを嗜む。このスタイルが広まっていけば、ストリングスホテル東京インターコンチネンタルは間違いなく、品川を盛り上げることができ、品川の港南エリアで、その存在感を確かなものにできるはずです。
タパタイザーの次なる一品に期待しています。
情報
詳しくは公式サイトをご確認ください。
参考
ザ・ダイニング ルームについてはレストラン図鑑にも詳しく載っていますので、ご参考にどうぞ。