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阿弥陀様の後光が差す可愛すぎるテントウ虫=アミダテントウ

天野和利時事通信社・昆虫記者
つぶらな瞳とカラフルな衣装で可愛さを振りまくアミダテントウ。

 日本のテントウ虫の中には、阿弥陀(あみだ)様の名を持つありがたいテントウがいる。その名はズバリ「アミダテントウ」。

 なぜ阿弥陀なのか。命名者に確かめたわけではないので、真相は不明だ。しかし、このテントウを前方から見ると、頭部から放射線状に美しい模様が広がっていくように見える。

 恐らくその様子が、阿弥陀様の後光を連想させたのではないだろうか。黒く大きい目から、赤色、そして黄色へとカラフルな模様が展開していくのも、光り輝く後光を思わせる(虫好きの個人的感想です)。

「あみだくじ」とも無関係ではなさそうなアミダテントウ。
「あみだくじ」とも無関係ではなさそうなアミダテントウ。

真上から見たアミダテントウ。この模様の意味が何なのかは、阿弥陀様のみぞ知る。
真上から見たアミダテントウ。この模様の意味が何なのかは、阿弥陀様のみぞ知る。

 良く知られるくじ引きの「あみだくじ」とは無関係かと言うと、そうでもない。実は室町時代から始まったとされる「あみだくじ」の当初の形は、中心から放射線状に広がっていくものだったという。その形状が阿弥陀様の後光のようだったので、阿弥陀くじの名が付いたらしい。

 つまり、「アミダテントウ」も、「あみだくじ」も、阿弥陀様の後光のような、縁起のいいものということになる。ちなみに、欧米ではテントウ虫は「LADY BUG(聖母マリアの虫)」と呼ばれ、マリア様が畑の害虫駆除のために遣わした虫として愛されている。漢字の「天道虫」にも、天に導く神の使いのニュアンスがある。なので、アミダテントウを見つけると、各種神仏の御利益があるかもしれない。

横から見たアミダテントウ。これが大きな虫だったら、もっと知名度が高くなったはず。
横から見たアミダテントウ。これが大きな虫だったら、もっと知名度が高くなったはず。

 何はともあれ、アミダテントウの色柄の美しさ、可愛さは、美人ぞろいのテントウの仲間の中でもトップクラスだ。しかし、残念なことにアミダテントウはかなり小さいテントウ(体長4~5ミリ)なので、ナナホシテントウ、ナミテントウなどと比べると、見つけにくく、出会う機会が少ない。

 それゆえに、思いがけずアミダテントウに出会うと、ありがた過ぎて、つい手を合わせて拝みたくなる(嘘です。昆虫記者は必死になって写真を撮ろうとし、飛んで逃げられると地団太踏んで悔しがり、悪態をつきます)。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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