団塊Jrを見捨てた時点で日本の少子化対策は実質的に終了。いかなる少子化対策も時間稼ぎに過ぎない。
「異次元の少子化対策」で少子化は反転するのでしょうか?
機械的なシミュレーションではありますが、「異次元の少子化対策」で出生数や人口はどうなるのか?について考えてみたいと思います。
シミュレーションケースとしては、以下のケースを考えます。機械的なシミュレーションですので、どのような「異次元の少子化対策」が効果を上げるかは捨象して、「異次元の少子化対策」がこういう効果を上げたら、こうなるという結果であることにまず留意してください。
以上の結果、出生数や総人口が増加に転じるのはSim1ケースのみで、残りのケース(Sim5は少子化対策なし)は出生数は増加するものの、次第に減少してくことが分かります。
つまり、第2次ベビーブームを含む70年代並みに子どもが生まれて初めて出生数は反転するのです。それ以外は、一時的な時間稼ぎにすみません。
しかし、「異次元の少子化対策」によって今すぐ突然70年代並みに子どもが生まれても日本経済や社会を支えるには20年はかかりますから、それまでの間は、やはり少子化や高齢化、人口減少といった日本の宿痾である人口構造問題に何らかの対処が必要になります。
少子化対策を講じているから、その他の人口構造対策が不要になるわけでは一切ないことに留意が必要です。
また、かつて2060年代にも人口1億人レベルを維持するという少子化対策目標がありましたが、Sim2ケースはほぼそれに匹敵します。これは80年代の出生にまで現在の出生力を引き上げる必要があります。
別の解釈をすれば、90年代に抜本的な少子化対策が行われ、80年代の出生力を維持できていれば、現在、「国難」「有事」と叫ばれるほど危機的な少子化にはなっていなかった可能性が高いのです。
そこで、もしいわゆる団塊ジュニア(就職氷河期世代の核)が出産適齢期に達した2000年代に少子化対策が行われ一定の効果を上げていたとしたらどうなっていたかをシミュレーションしたのが下図です。
結果によれば、現実の動きや国の推計とは異なり、少子化も進まず人口も維持できていることが分かります。
「「異次元の少子化対策」に思う。(島澤諭)」という記事でも指摘した通り、団塊ジュニアを見捨てた時点で日本の少子化対策は実質的には終了しており、上のシミュレーションでも示したように、いかなる実行可能な少子化対策も今や時間稼ぎに過ぎません。
ただし、この時間稼ぎの間に社会保障をスリム化したり、外国人の導入を進めるなど、日本経済、社会、雇用、財政・社会保障制度等の持続性を高める施策を講じるのであれば、意味はあるでしょう。
個人的には時間稼ぎするまでもなくさっさと進めるべきだと思ってはいますが。
最近、政治家が賃上げを企業に要求するのが流行っているようですが、政治家は余計なことに口出しして何かやった感を演出するのではなく、政治家がやるべきことをやればよいと思います。