奇跡の三冠王!? 首位打者、本塁打王、打点王のいずれも、キャリアを通して1度だけ
昨年、アーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)は、惜しくも三冠王を逃した。62本塁打と131打点はア・リーグ最多ながら、打率.311は2位。9月28日を終えた時点では、打率.313で僅差のトップに立っていたが、その後の6試合は18打数4安打(打率.222)に終わり、10月5日にレギュラーシーズンが終わった時は、ルイス・アライズ(ミネソタ・ツインズ)に5厘差をつけられていた。
ジャッジの本塁打王は、52本塁打の2017年に続く2度目だ。打点王は昨年が初だが、2017年は114打点を挙げ、ネルソン・クルーズ(当時シアトル・マリナーズ/現FA)と5打点差の2位に位置した。一方、打率は、昨年初めてトップ10にランクイン。それまでの打率は、決して低くはないものの、.290を超えたことがなかった。
打率からすると、将来、ジャッジのキャリアを振り返った時に、2022年は三冠王となる唯一のチャンスだった、ということになりかねない。
三冠王には、首位打者、本塁打王、打点王のうち、いずれか、もしくは複数のタイトルがキャリアを通して1度、という選手が少なくない。そのタイトルを手にしたシーズンに、他のタイトルも獲得し、三冠王となったということだ。
ベースボール・リファレンスによると、ナ・リーグとア・リーグを合わせて、三冠王は延べ16人を数える。そのうち、テッド・ウィリアムズとロジャース・ホーンズビーの2人は、三冠王が2度なので、当然ながら、3タイトルの獲得もそれぞれ2度以上だ。テッドは、首位打者が6度、本塁打王と打点王は4度ずつ。ホーンズビーの各タイトルは、7度、2度、4度だ。
彼らの他に、3タイトルのいずれも2度以上は、ジミー・フォックスとミゲル・カブレラ(デトロイト・タイガース)の2人。フォックスは、2度、4度、3度。カブレラは、4度、2度、2度だ。
あとの10人は、1度しか獲得していないタイトルが存在する。なかでも、フランク・ロビンソンは、どのタイトルも1966年の1度きり。その前の10シーズンも、その後の10シーズンも、タイトルは皆無だ。
もっとも、21シーズンというキャリアの長さからわかるように、ロビンソンは究極の一発屋だったわけではない。打率.300以上のシーズンが9度、30本塁打以上が11度、100打点以上は6度だ。三冠王の1966年を含め、この3つが揃ったシーズンは5度ある。1962年は3タイトルともリーグ・トップ3(2位、3位、3位)にランクインし、1967年も4位以内(2位、4位、3位)に位置した。
一発屋とは程遠く、むしろ、そのキャリアは、ハイレベルなコンスタントと形容すべきだろう。最後の2シーズンを除く19シーズン中、規定打席未満もOPS.820未満も、405打席でOPS.795の1972年しかない。
日本プロ野球の三冠王に、ロビンソンのような、3タイトルとも1度きりの選手はいない。昨年の村上宗隆(東京ヤクルト・スワローズ)は、首位打者と打点王が初だが、本塁打王は2年連続2度目だ。
なお、三冠王以外にも、3タイトルを獲得した選手はいる。それについては、こちらで書いた。