大型で非常に強い台風16号が伊豆諸島に接近 台風は強さランクは下がっても大きさランクは下がりにくい
台風16号の北上
大型で非常に強い台風16号は、29日(水)午後9時現在、日本の南にあって、時速15キロで北に進んでいます。
この台風は日本の南を北上してから次第に進路を北東へ変え、10月1日(金)には伊豆諸島にかなり接近するおそれがあります(図1)。
台風の予想進路にある海面水温は、伊豆諸島近海までは台風発達の目安となる27度を上回っています。
このため、しばらくは勢力を維持しながら北上し、1日は、伊豆諸島を中心に大荒れとなり、猛烈にしける所があるでしょう。
台風16号の中心付近では12mを超え、東日本から西日本の太平洋沿岸でも3m以上の波が打ち寄せる予報です(図2)。
東日本の太平洋沿岸に台風16号周辺の雨雲が入ってくるのは、10月1日になってからと考えられます(図3)。
また、東日本の太平洋沿岸で強い風となるのも10月1日になってからと考えられます。
そして、台風16号が北から強い寒気を南下させることもあって、北陸や四国まで強い風の範囲は広がることが予想されています。
広がる北上中の台風16号の強風域
気象庁が発表する気象情報や警報には、台風に「大型」など大きさを表現する言葉と、「非常に強い」など強さを表現する言葉をつけて発表しています。
この台風の大きさと強さの分類は、一つ一つ異なった顔を持つといわれている台風を、便宜上分類したものです。
たとえていえば、人間の身長と体重に相当しています。
身長と体重だけでは、その人の体力がある程度までしかわからないのと同じで、その台風の破壊力は、ある程度までしか判断できません。
昭和37年(1962年)から使われている分類ですが、当初は、大きさは1000ヘクトパスカルの等圧線の半径を使って5つのランクに分類(等圧線が変形している場合や防災上の問題があるときは暴風域を参考にして決める)していました。
また、強さは最低中心気圧を使って5つのランクに分類(防災上好ましくないと判断した場合は最大風速を参考にして決める)していました。
その後、大きさは強風域の大きさ(強風域が非対称の場合はその平均値)で5ランクに分類し、強さは最大風速で5ランクに分類となりました。
しかし、平成11年(1999年)8月14日の玄倉川水難事故をきっかけとして、安心感をあたえる表現は問題ということとなり、翌12年(2000年)からは、表のように表現を改めています(表)。
台風16号の大きさと強さの推移
昔、猛烈に発達した台風の一生を、大きさと強さの分類から調べたことがあります。
個々の台風によって様々ですが、ほとんどの台風は、昔でいう「ごく小さくて弱い台風」から始まって、大きさと強さのランクを徐々に上げてゆき、猛烈に発達した後、強さのランクは徐々に下がるものの、大きさのランクは、なかなか下がりにくいという傾向があります(図4の右下の図)。
中には、昭和54年(1979年)の台風20号のように、台風が温帯低気圧に変わって再発達するようなときは、逆に大きくなることがあります。
令和3年(2021年)9月24日21時に発生した台風16号は、急速に発達して25日9時には最大風速が35メートルの強い台風となっています。
その後も最大風速が強まり、26日21時には最大風速が55メートルとなり、猛烈な台風となりました。
強風域も次第に大きくなってきましたので、このまま猛烈で大型の台風になるとみられていました(図5)。
しかし、27日9時になると、最大風速が少し小さくなって非常に強い台風にかわり、強風域が大きくなって大型の台風となっています。
過去の台風のように、台風16号は最大風速が徐々に小さくなってゆくにしても、強風域の範囲はなかなか小さくならない見込みです。
台風から離れていても、地元気象台の情報等の入手に努め、警戒して下さい。
タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。
図4、表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。
図5の出典:「饒村曜(平成11年(1999年))、台風物語、日本気象協会」をもとに筆者作成。