余市―小樽間の鉄道廃止で予想される地獄絵図 鉄道代行バス乗車で見えたバス輸送の限界
2024年3月末限りで廃止となるJR北海道・根室本線の富良野―新得間81.7 km。このうち東鹿越―新得間41.5kmは2016年8月31日の台風10号による被害を受け不通となったままバスによる代行輸送が続いており、鉄路としての復旧がないまま廃止される見通しだ。すでに、根室本線の富良野―新得間は廃線特需による鉄道ファンの訪問による混雑が始まっている。
筆者が先日現地を訪問したことについては、2023年9月16日付記事(2024年3月末で部分廃止、根室本線の現状は? 廃線特需で鉄道ファンが殺到【前編】)で触れたとおりだが、東鹿越駅で乗車した鉄道代行バスは、かなり窮屈な印象を受けた。こうしたことから、輸送密度が2000人を超えているにもかかわらず、すでに廃止の方針が決定された北海道新幹線「並行在来線」の余市―小樽間の代替輸送が非常に心配になった。
この日、東鹿越駅から代行バスに乗車したのは34名であったが、補助席なしの座席定員が45名の高速仕様のバスでも、実際に乗車してみるとかなり窮屈に感じられた。補助席を加味しても乗車定員は55名ほどで、これを座席定員が60名近いキハ40形と比較すると輸送力にはかなり開きがあるのは明白だ。
北海道庁が昨年発表した並行在来線の代替バス案の資料によると、朝の小樽方面の列車について余市駅を7時2分に発車する列車の乗車数を200名、7時40分に発車する列車の乗車数を115名として、この列車を、小樽駅を経由せずに塩谷・最上経由で直接小樽潮陵高校方面に向かうバス分で代替するという案を発表している。車両については高速仕様のものを想定しているという。
2列車分で315名の乗客をバス輸送するということは、7台のバスに補助席も含めてほぼ定員いっぱいにまで乗客を押し込めば輸送可能ということなのかもしれないが、居住性は鉄道比べて相当悪化することが容易に予想され、バスの台数が少なければ通勤通学時間帯に乗客の積み残しが発生するリスクが懸念される。さらにこの台数のバスが、朝ラッシュで混雑する対面交通の国道5号線を法定読度で縦列走行すると、道路事情が悪化することは明白だ。また、出入り口が一か所しかない高速仕様のバスでは、乗降には相当な時間を要することも懸念される。
加えて、現行のダイヤから鉄道と比較して所要時間が平均的に2倍近くに増加することも明らかで、これでは通勤通学客がそれぞれの職場や学校に到着する前に相当な疲れをため込んでしまい、結果的に沿線住民の生産性を下げることにつながりかねない。そもそも、昨今のバスドライバー不足などから、並行在来線のバス転換協議自体が泥沼化しているが、北海道庁の交通政策は、荒唐無稽な机上の空論による地域社会の破壊行為に他ならない。
(了)