ひとり旅を満喫するために、ソロ温泉の達人があえて「手放すもの」とは?
「ひとり旅はさびしい」というイメージをもつ人は多い。手持無沙汰になり、ついついスマホをいじってしまうのが常だ。
しかし、せっかくのひとり時間をスマホに使っていては、ふだんと何も変わらない。
筆者が提唱するソロ温泉(=ひとりでの温泉旅)は、ひとりの時間を愉しむのが目的だ。ただただ温泉に入って何もしない、「空白の時間」をもつ。そうした非日常を体験することに価値があると思っている。
「空白の時間」をつくりだす上で、大きな障害となるのがスマホである。スマホを開けば、たちまち日常生活に引き戻されることになる。
ひとり旅では、スマホはさびしさを紛らわすツールでもあるが、ソロ温泉ではあえて「スマホを手放す」ことを提案したい。
人間関係のスイッチをオフに
ネット時代を生きる現代人は、広く浅い人間関係を抱えながら生きている。リアルの人間関係だけでなく、SNSでも多くの人とつながっている。
人類の歴史上、これほど多くの人と人とがつながりをもっている時代はなかっただろう。もはや人類の脳のキャパシティーを超えるほどの人間関係を構築しているはずである。
だからこそ、現代人は人間関係のスイッチをオフにすることが大切ではないだろうか。
ひとり旅が好きな人は理解できると思うが、まわりに知り合いが誰もいない環境はとてもラクだ。日常ではなかなか体験できない解放感を思う存分に味わえる。
だからこそ、その解放感を損なわないように注意を払う必要がある。せっかくソロ温泉に出かけて人間関係のスイッチをオフにしたのだから、むやみにそのスイッチをオンにしてはいけない。
ソロ温泉では「SNS禁止」
しかし、そのスイッチはあなたのすぐ手元にある。スマホのSNSやメールを開けば、すぐにスイッチがオンになってしまう。友人・知人のSNSを開くと、何をしているのか気になる。いつものように「いいね!」やコメントをしたい衝動に駆られてしまう。ひとたび仕事のメッセージを見てしまったら、気になってゆっくりくつろげない。
したがって、ソロ温泉では原則「SNS禁止」を推奨したい。
もちろん、着信やメッセージなど最低限のチェックはする必要はあるかもしれないが、1~2日、知人や友人のSNSを見なかったとして、何か問題があるだろうか。休日にまで仕事の対応をする必要が本当にあるだろうか。本当の緊急事態などは、めったに起こるものではない。
そもそも、いつものようにだらだらとスマホをいじっていては、はるばる温泉地に来た意味がなくなってしまう。
筆者は、ソロ温泉の旅の最中はできるだけSNSをチェックしない(長旅の場合は定期的にチェックする)。スマホを手に取ると、いつものくせでネットサーフィンをしたりアプリを開きたくなったりするので、機内モードにしたり、カバンの奥のほうにしまったりする。スマホの電源を切ってしまうことさえある。
「スマホなし」の食事を堪能する
ひとりで食事をするときは、手持無沙汰でスマホを見てしまう人も多いと思うが、とても損をしている。
筆者も昔はスマホをいじりながら食事をしていたが、ある温泉宿の夕食時にスマホを部屋に忘れてきてしまった。すでにコース料理も始まってしまったので、そのまま食事をいただいたが、このときの食事がことさらおいしく感じられたのである。
食事だけに集中できるから、料理の味だけでなく、見た目や匂いなどを五感で味わうことができたのだろう。特に高級な料理プランでもなかったのだが、「こんなにおいしいのか!」と感激した。
ソロ温泉は湯浴みがメインの旅ではあるが、旅先での食の楽しみは他の旅と変わらない。せっかくの旅先での食事。その土地でしか食せない地元の味を思う存分堪能したい。
現代人は、つねにネットとつながり、スマホ依存ともいえる状態だ。温泉地に滞在するときだけはスマホと距離をおくことで、心がすっきりしたり、新しい気づきあったりするはずだ。ぜひソロ温泉に出かける際は、スマホを手放してみてほしい。