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お正月は無病息災を祈る「大福茶」でスタート!宇治のお茶屋さんに聞いた新感覚の大福茶レシピ

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター
お正月に飲む風習のある「大福茶」。地域や家庭により入れる具材やお茶が違う。

お正月に飲むお茶「大福茶(おおふくちゃ/おおぶくちゃ)」をご存知でしょうか?

京都で生まれたと言われるこの風習。

遡ること1000年以上も前、京都がその発祥の地とされ、お茶に梅干しや昆布を入れて飲むのが主流です。

一般的に茶葉は玄米茶や煎茶を使うことが多いのですが、つい先日訪れた京都の宇治で新感覚の大福茶に出会いました。

今までその発想はなかった!

お茶はもっと自由で楽しい!

そんな大福茶をご紹介します。

「大福茶」とは

一説によると、951年に都で疫病が流行った際に、六波羅蜜寺の僧であった空也上人が祈祷とともに薬用として梅干しを添えたお茶を人々に飲ませたことが始まりだそう。

そのおかげで疫病が治まり、時の村上天皇がこれにあやかり毎年お正月にお茶を服されるようになったことから「王服茶」や「皇服茶」と呼ばれるように。

その後庶民にも広がり、縁起の良いものとして「大福茶」に字が変わったとされています。※諸説あり

今では12月になると「大福茶」として煎茶や玄米茶が売られ(お店によって茶葉の種類が違います)、お茶碗の中に入れる小ぶりな梅干しや結び昆布がセットになっているものもあります。

写真は祇園辻利の「大福茶」。赤と緑のカリカリ梅と結び昆布もセットに入っている。茶葉は上級の煎茶に玄米茶が少し入っている品の良い玄米茶。
写真は祇園辻利の「大福茶」。赤と緑のカリカリ梅と結び昆布もセットに入っている。茶葉は上級の煎茶に玄米茶が少し入っている品の良い玄米茶。

毎年、年末が近づくと大福茶の準備をはじめます(3年前の記事「お正月は「大福茶」を飲んで運気アップ!日本茶マニアおすすめの縁起のいいお茶で新年をスタート

時々買うお店を変えてみたりもしています。

昨年の大福茶。炒り枚を手炒りし煎茶に混ぜたものを淹れた。梅干しは家に合った小ぶりなもので、昆布は出汁用のものを切って結んで作った。
昨年の大福茶。炒り枚を手炒りし煎茶に混ぜたものを淹れた。梅干しは家に合った小ぶりなもので、昆布は出汁用のものを切って結んで作った。

昨年はうっかり大福茶用の玄米茶を買い忘れていたので、炒り米から作ろうと焙烙(ほうろく)でお米を炒って煎茶の茶葉に混ぜて大福茶としました(1年前の記事「お正月の縁起物「大福茶」を買い忘れた人に朗報!日本茶のプロが家にあるもので作る大福茶のレシピを公開」)。

京都ではお正月の準備の一つに、大福茶が入っているそうです。

大福茶も自由に楽しんで

私が大福茶を飲む風習を知ったのは20年程前で、初めて飲んだ大福茶が玄米茶ベースだったのもあり、これまで大福茶は玄米茶のイメージでした。

昨年自作した大福茶。手炒りの炒り米はと宇治の煎茶の茶葉を混ぜたもの。
昨年自作した大福茶。手炒りの炒り米はと宇治の煎茶の茶葉を混ぜたもの。

しかし、お店によっては大福茶として煎茶も売っていて、茶葉については自由なのです。

これまで毎年玄米茶で大福茶をいれていましたが、先日訪れた宇治のお店で私にとっては斬新な大福茶に出会いました!

「売茶中村」の大福茶

宇治の平等院や宇治橋の近くに2年前にオープンした「売茶中村」さん。

5月に研修に同行して取材させていただき、今回も取材に訪れました(お店については改めて別の記事でご紹介します)。

ちょうど前日まで「大福茶ワークショップ」を開催していたのもあり、年末のこの日も大福茶の話題に。

「ほうじ茶」を使う中村家の大福茶

地域や家によっても大福茶の内容は違うと聞いていましたが、売茶中村の中村栄志さん宅ではずっと「ほうじ茶」を使っているのだとか。

親戚一同が集まる場で最初に飲むのがこちらのほうじ茶の大福茶なのだそう。

ほうじ茶を使うとは珍しい!ということで、実際にどんな大福茶なのか作っていただきました。

使用するのはこちらの碾茶や玉露、上級煎茶の茎を焙じた軽やかで上品な香りのほうじ茶です。

梅干しと結び昆布の入ったお茶碗にほうじ茶を注ぐ中村さん
梅干しと結び昆布の入ったお茶碗にほうじ茶を注ぐ中村さん

ほうじ茶はもちろんそのまま飲んでもおいしいですが、大福茶にも合うのだそう。

ほうじ茶の大福茶。少し置いておくと梅の塩味と昆布からの出汁でお茶漬けのような風味になる。それがまたおいしい。
ほうじ茶の大福茶。少し置いておくと梅の塩味と昆布からの出汁でお茶漬けのような風味になる。それがまたおいしい。

初めてのほうじ茶の大福茶

軽やかで香ばしく、とてもおいしいです!

これは真似してみたくなります。

今年はほうじ茶の大福茶にしようかな。

新たな形の大福茶も

前日までの個々にオリジナルブレンドで大福茶を作るワークショップに使用したものを少し見せてもらういました。

奥は煎茶塩で塩を作る際に煎茶も塩水に混ぜて一緒に結晶化している貴重なものだそう。手前左は入り玄米、右は乾燥したゆず皮。
奥は煎茶塩で塩を作る際に煎茶も塩水に混ぜて一緒に結晶化している貴重なものだそう。手前左は入り玄米、右は乾燥したゆず皮。

炒り玄米以外はなかなか斬新!

今回はゆずが一番気になり、煎茶とゆず皮のブレンドを作っていただきました。

まず香りと味のバランスを考えて茶葉を合組(ごうぐみ)します

※合組とはブレンドのことです。

茶葉を合組(ごうぐみ)する売茶中村の中村栄志さん。煎茶のベースは香駿(こうしゅん)というほのかに桜の香りのする品種。そこにオリジナルで別の茶葉をブレンドしているところ。
茶葉を合組(ごうぐみ)する売茶中村の中村栄志さん。煎茶のベースは香駿(こうしゅん)というほのかに桜の香りのする品種。そこにオリジナルで別の茶葉をブレンドしているところ。

産地も品種も様々なものを扱う売茶中村さん。

大福茶もこだわりがいっぱいです。

ゆず皮を入れて、お茶を淹れます。

煎茶の香りに、ほんのりとゆずの香り、そして香駿の桜のような香りも少し漂います

このままでもおいしいですが、梅干しと昆布との相性もよく、おいしくいただきました。

こちらもとても気に入りました!

大福茶を楽しもう!

古くからの慣わしには「こうでなければならない」など約束事が多く、お正月の準備もそれに倣って進めなければと堅苦しい窮屈な気持ちになりがちです。

しかし大福茶に関しては、どんな茶葉を使っても楽しめることが今回の訪問でわかり、ちょっと気が楽になりました。

玄米茶を買い忘れていても、家に煎茶の茶葉がなくても、大丈夫!

ほうじ茶でも番茶でもあるものでよいのです。

ゆずなどを茶葉にブレンドしたり、自由な発想で楽しむと、新たな発見や新感覚のものが生まれるかもしれません。

ぜひお家にあるもので大福茶を作ってみてくださいね!

お正月は大福茶を飲んで無病息災を祈り、2025年も良い年になりますように。

取材協力:「売茶中村」(外部サイト)

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日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。 美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。 日本茶の商品開発、カフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導も行う。 NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。 日本語教師(外国人対象)。

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