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バルサとマドリー、クラシコ新時代の到来。ストップ・ザ・メッシが至上命題

森田泰史スポーツライター
ネイマールが去り、リーガで初めてのクラシコが行われる(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

世界中の視線が、一点に注がれる。「クラシコ」という最大級の符丁が、フットボールの香りで見る者を虜にする。

リーガエスパニョーラ第16節終了時点、首位バルセロナと4位レアル・マドリー(未消化1試合)の勝ち点差は11ポイントまで開いている。だが、クラシコにおいては皮算用など何の意味も持たない。

■「BBC」対「MSN」という図式

近年のクラシコでは、圧倒的な破壊力を持つ両チームにより、スペクタクルを含蓄した打ち合いが演じられてきた。

ルイス・スアレスが2014年夏に加入して以降、バルセロナはリオネル・メッシ、スアレス、ネイマール(現パリ・サンジェルマン)に攻撃の全権を託してきた。「MSN」は昨季のリーガでチームの116得点のうち、実に79得点を記録した。

一方、マドリーはカリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドを看板3トップに据えた2013年夏以降、計12個のタイトルを獲得。昨季のリーガでは、チーム総得点のうち、およそ40%を「BBC」が叩き出している。

■レアル・マドリーが示す勝負強さ

だがネイマールが去り、両者は新たな局面を迎える。リーガにおいては初の「ネイマール不在」のクラシコとなる。

「BBC」対「MSN」の構図は崩された。エルネスト・バルベルデ監督は従来の4-3-3に見切りをつけ、4-4-2の練度を上げてきた。そしてリーガ16試合無敗、公式戦24試合無敗と最高の状態で宿敵との一戦に臨む。

対して、ここまでのクラシコ5試合で3勝1分け1敗と60%の勝率を誇るジネディーヌ・ジダン監督は、先に行われたクラブ・ワールドカップで優勝を達成して、マドリーに新たなタイトルをもたらした。今季リーガで苦戦を強いられているマドリーだが、その勝負強さはまったく錆び付いていないことが証明されている。

■ボールを握るのは...

意地とプライドがぶつかる一戦で、果たしてボールを握るのは、どちらになるだろうか。

直近のクラシコ(スペイン・スーパーカップ第2戦)では、ポゼッション率はマドリーの53%に対して、バルセロナが47%だった。それまでのクラシコにおいては、31試合連続でバルセロナがポゼッション率でマドリーを上回っていた。それが覆ったのである。

一時はポゼッションの危機が叫ばれた。だが蓋を開けてみれば、バルサはバルサだった。ポゼッション率(61,2%)、パス本数(10576本)、ショートパスの本数(9603本)、縦パス本数(42本)、すべて現在リーガ1位の数字だ。

■バイタルエリア手前で火花

そう考えると、やはり、バルセロナがボールを握って試合をコントロールする展開が予想される。ポイントになるのは、メッシとカセミロの対決だ。

ジダン監督は前述したスペイン・スーパー杯第2戦で、マテオ・コバチッチにメッシをマンマークさせた。指揮官の策は見事に嵌り、メッシを無得点に抑えたマドリーは2-0で勝利。2017年に行われた59試合で、バルセロナはメッシが得点した試合で勝率88,9%という依存度なのだ。

今回の対戦で、メッシをマークするのはカセミロになるだろう。4-4-2の2トップに入るとみられるメッシだが、アルゼンチン代表FWが最も脅威になるのはバイタルエリア付近だ。

そこでメッシが前を向き、時間と空間を手にすれば、ゴールが生まれる確率は格段に高まる。それをカセミロが防げるか、どうか。今季1試合平均ボール奪取回数7,9回という刈り取り能力を備えるカセミロに、ストップ・ザ・メッシの任務が託される。

■メッシの最高のパートナーであるアルバ

バルセロナは可能な限りメッシをプロテクトして、サポートしなければいけない。鍵を握るのは、ジョルディ・アルバだ。

アルバはバルベルデ監督の下で「偽ウィング」として欠かせない選手となっている。左サイドバックでありながら、5アシストで現在チームのアシスト王だ。左サイドを疾風の如く駆け上がるアルバにメッシからパスが出て、相手守備陣がそれを注視した瞬間にメッシがフリーとなり、最後はメッシがフィニッシュする。これが今季のバルセロナの攻撃パターンのひとつだ。

裏を返せば、それはバルセロナの弱点でもある。アルバの背後には、膨大なスペースが空いている。マドリーはそこを突き、C・ロナウド、ベイル、マルコ・アセンシオ、ルーカス・バスケスらがスピードに乗ったカウンターを食らわせば、バルセロナDF陣は確実に後手になるだろう。

毎度毎度、クラシコの予想は困難である。ただ、ひとつだけ言えることがある。それは現地時間23日午後1時(日本時間午後9時)、レアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウで、興奮と熱狂が約束されているということだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『WSK』『サッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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