なぜマドリーはエムバペを生かしきれていないのか?求められるエース像と冬の補強の可能性。
欲したものが、すべて、手に入るとは限らない。
今季のチャンピオンズリーグで、不振に喘いでいるのがレアル・マドリーだ。リーグフェーズで5試合を終え、24位に位置。決勝トーナメント進出に向け、プレーオフに回る可能性が高まっている。
また、リーガエスパニョーラでは、首位の座をバルセロナに譲っている状況だ。
■エムバペに対する批判
そんな中、批判を浴びているのはキリアン・エムバペだ。
チャンピオンズリーグ・リーグフェーズ第5節、敵地アンフィールドで迎えたリヴァプールとの一戦で、エムバペはPKを失敗。そのキックのミスだけではなく、試合を通じて低調なパフォーマンスに終始したフランス代表のアタッカーに、欧州のメディアとマドリディスタは厳しい目を向けた。
エムバペは、今夏、フリートランスファーでマドリーに加入した。この数年、幾度となくマドリーへの移籍話が持ち上がりながら、取引が成立しないという経緯があったが、それが2024−25シーズンを前についに実現。当然、マドリディスタの期待も高まった。
だがマドリー加入後、エムバペはヴィニシウス・ジュニオールとの競争、新たなチームへの適応に苦しむことになった。
リヴァプール戦を前に、マドリーはヴィニシウスが負傷した。カルロ・アンチェロッティ監督は、エムバペを、本来のポジションである左ウィングに配置。そういう意味でも、エムバペに対する要求度は高まっていた。
しかし、ビッグマッチでは不発に終わった。
エムバペは今季、ここまで、公式戦20試合で11ゴール(リーガ14試合9ゴール)をマークしている。悪くない数字だ。しかしながら「マドリーの9番」に求められるのは、より多くのゴール数、チームを勝利に導く結果だ。
■過密日程と負傷者続出
マドリーの問題は「キリアン・エムバペ」だけではない。先のリヴァプール戦では、ベンチ入りした選手を含め、トップ登録しているプレーヤーが16名のみだった。
ダニ・カルバハル、エデル・ミリトン、ダビド・アラバが長期離脱。ヴィニシウスやエドゥアルド・カマヴィンガが次々に負傷でピッチから遠ざかった。
チャンピオンズリーグにおける「失態」で、マドリーはリーグフェーズにおいてトップ8に入り、決勝トーナメントに向けストレートインする権利を失った。これにより、試合数は増加。今季、最多で72試合プレーする可能性がある。
加えて、次の夏には、新たなフォーマットのクラブ・ワールドカップが控えている。32チームが参加するこの大会を加えれば、マドリーの試合数は、相当なものになる。
■補強の可能性
そこで考えなければならないのは、冬の移籍市場での補強の可能性だ。シーズン後半戦を見据えた時、守備陣の補強は不可欠に見える。
カルバハルとミリトンは不在。アラバの復帰は不透明。カンテラーノのラウール・アセンシオの成長は朗報だが、それでも本職のCBが彼とアントニオ・リュディガーだけというのは心許ない。ヘスス・バジェホは、実質的にアンチェロッティ監督の構想外となっている。
トレント・アレクサンダー・アーノルド(リヴァプール)、カステロ・ルケバ(ライプツィヒ)、ヨナタン・ター(レヴァークーゼン)、ヤレク・ガシオロフスキ(バレンシア)…。複数の名前が、メデイアでは踊っている。
若さで言えば、ルケバ、ガシオロフスキといった選手たちだ。だが将来有望な彼らを、現所属クラブが簡単に手放すとは思えない。
アーノルドやヨナタン・ターは、契約期間が2025年夏までとなっている。この冬に、契約が残り半年となり、自由交渉が可能になる。とはいえ、アルネ・スロット監督とシャビ・アロンソ監督のチームで、彼らは主力中の主力だ。こちらも容易なネゴシエーションにはならないだろう。
「決戦」となったリヴァプール戦で、マドリーはミリトン、カルバハル、チュアメニ、ロドリゴ、ヴィニシウスが不在だった。エムバペが不調だったとはいえ、これで勝つのは、やはり難しいだろう。
マドリーはお金がないクラブではない。しかしながら「誰を獲るか」というのは、おそらく今季、最終的な結果に直結する。慎重かつ大胆に。この冬のムーブは、マドリーにとって大事なものになる。