「PS VR2」圧倒的臨場感ゆえの“戸惑い” 「ホライゾン」新作の絶景に思わず……
仮想空間を現実のように体験できる「バーチャルリアリティー(VR)」。近年「メタバース」のワードがビジネスで注目されていることもあり、一般にも広まりつつあるのではないでしょうか。そしてソニーの家庭用ゲーム機「PlayStation5(プレイステーション5)」向けに、高品質なVRが楽しめる「PlayStation VR2(PS VR2)」が22日、発売されます。PS VR2用の新作ゲーム「Horizon Call of the Mountain(ホライゾン・コール・オブ・ザ・マウンテン)」を発売前に実際にプレーしてみました。
◇VRの魅力の伝え方に苦労
PS VR2は、高品質なVRのゲームが楽しめる機器です。目や頭を覆うヘッドマウントディスプレー(HMD)をかぶって頭部に固定。両手に二つの専用コントローラーを装着して遊びます。
「ホライゾン」は、機械の獣が生息する雪山や密林などの広大な世界を舞台に、冒険をする人気シリーズ。新作「コール・オブ・ザ・マウンテン」は、罪を償おうとする戦士として、世界に隠された危機を解明するアクションゲームです。
発売直前ということで、多くのメディアから同作の体験記事が配信されています。高品質のVRゲームを体験したときの驚きを、未知の読者にどう伝えるか苦労している様子がうかがえます。これはVRに共通のことではありますが、高品質のVRになるほど、悩みが深くなりそうです。
新作「コール・オブ・ザ・マウンテン」は、PS VR2向けに作られただけに、高所からの絶景を見せ場に、専用コントローラーをしっかり使って遊べるようになっています。オープニングから、巨大な機械獣の姿に息をのむでしょう。シリーズで大活躍する女性戦士のアーロイも登場しますが、VRになるとキャラの体格がストレートに伝わり、「意外に小柄なんだな……」と感じました。
何せ視界は360度、現実のような世界。もちろんゲームなのですが、VRなので画面に奥行きを感じる上に、ゲームにつきものの文字・数字的なパラメーターなどはありません。体力の増減は、左手の甲にあるマークの数で判断します。アイテムを使うときには、選択のためのウインドーが表示されますが……。現実に近づけ、臨場感を高めようとしているのが分かります。
プレーヤーは現実世界の視覚をシャットアウトされ、仮想世界の中に放り込まれるわけですが、実際にプレーした皆さんは、そのときどんな反応をするでしょうか? 私の場合は、船から乗り出して川の水に触れようとしたり、キャラに触ろうとして前のめりになってゲームから“警告”を受けましたが……。VRに放り込まれた人がどんな反応をするのか。データを取って研究するのも面白そうです。
◇「疲労と癒やし」
遊ぶほど、いろいろな発見があるのですが、PS VR2の「コール・オブ・ザ・マウンテン」で最も印象に残ったことは?と言われると……。ゲームの面白さは他の記事でもありますので、あえて違う視点を挙げたいと思います。「疲労と癒やし」というワードでした。
山や建造物を登るとき、戦闘などで弓を撃つとき、アイテムを取るときも、両腕をフルに動かしています。私は座るプレーを選びましたが、立ってプレーするとさらにハードになります。運動不足が露呈するのです。
そして疲れたら、休みたくなります。目の前には、巨大な滝やジャングル、朽ち果てた遺跡などがあり、青空をバックにした雪山も見えるわけです。「世界遺産」以上の絶景がありまして、休憩がてら、ボーッと眺めたくなるのです。
ゲームのBGMをオフにすると、滝や川の水の音、風の音、鳥や動物の鳴き声、朽ち果てた建造物のきしむような音が聞こえてきます。谷には鳥が飛び、目の前の苔をなでると揺れ、滝を見ると水が跳ね返って霧状になっていて……。
イスに腰を掛けてプレーしていたのですが、思わず目を閉じて、自然の音(ゲームですけど)を聞いていると、心地よくなってウトウトしてしまったのです。もちろんHMDをつけたままで。
ふと目を覚まし「あれ……ゲームをやってるのに、何だか癒やされてる?」と驚き、“戸惑い”を感じてしまったのです。「疲れる」と「癒やされる」の二つの感覚が込み上げてきたのは、現実で感じることはあっても、まさかゲームで……。
その後もゲームを遊びながらも、ふと目に入った絶景に心を奪われてしまい、ゆったりとすることが何度かありました。おかげでゲームがなかなかすすみません。私が史跡・名勝を訪れるのが大好きなこともあるのでしょうが……。
PS VR2は7万4980円の価格ゆえに(おまけにPS5が必要)、誰にでも気軽にお勧めはできません。しかし高品質のVRを体験していない人は、何かチャンスがあったときは、ぜひ無理にでも触ってみてください。世の中の進歩を実感でき、話のネタにもなるでしょう。何かひらめくものがあるかもしれません。