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最期に残されたモノはその人そのもの、たった1回だけの義母との片づけ

藤原友子小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

私の主人の母は約2年前に亡くなりました。義母は料理上手で、家の畑で野菜を作り食卓には手間ひまかけた旬の野菜料理が並んでいました。

また季節に合わせ、衣類や寝具、床の間や玄関の飾りを入れ替える暮らしは、私にとっては本当に新鮮で、五感で四季を感じながら過ごす素晴らしさを知りました。

嫁と姑の関係は約17年間、その間片づけの簡単なアドバイスを求められたことはありますが、本格的に一緒に片づけを行ったのはたった1回だけです。

そのたった1回の片づけが「お母さんらしさ」を残すものになったのです。

お母さんの願いが詰まった最初で最後の片づけ

それは義母が入院中に外泊をした時に行った片づけです。でも片づけるといっても捨てることは強制しません。

義母の場合は退院したら「また友達とお出かけしたい」というのが一番の願いだったので、友達とお出かけするときに着ていきたい服を選んで残す!と決め、押し入れの洋服を片っ端から取り出し一枚ずつ手にし一緒に考える時間を取りました。

洋服を一枚一枚洋服を手に取って見ると

これは、柄があんまり好きじゃない
これは、お友達に褒められた服、
これは、毛玉がたくさんできたなあ
これは、もう小さいかもしれない

服の数はたくさんあるけど洋服は一枚ずつ違うことに気づき、自分の願いを叶えるのに必要な服を選びます。

そして時には着替えて鏡の前に立ち、残す服を選んでいると義母はオレンジなどの明るい色の服がとても似合っていて、着ると顔色がパッと明るくなることに気づきました。

思い出話をしながら、大好きな友達とのお出かけで着たい服を選ぶ時間は、とても優しい時間でした。

また作業の最中に「コレは大事な服なの」と義母が教えてくれたブラウスが出てきました。それは息子(私の主人)が子どもの頃に母の日にプレゼントしたモノでした。

もちろんこの大事なブラウスもこれから着たい大事な服なので、大切にハンガーのかけて保管しました。

2時間程度の片づけの結果、これだけの不要な服が出て大切な服だけが残るクローゼットになりました。

無事に役目を終了したクローゼット

残念ながらその2年後、義母は退院することなく亡くなりました。

通夜の日、義母の棺に入れる洋服を探すために、妹が義母のクローゼットを開けたら「お母さんっぽい服ばかり!」と言っていました。

確かにそこにはお母さんらしい、オレンジ系・水色系の華やかな明るい服が並んでいました。と言っても、その押し入れは2年ほど前に私が義母と一緒に整えた当時のままです。

そして主人が子どもの頃プレゼントした宝物の服にも妹が気づき、無事に棺の中に入れることもできました。

残されたモノは、その人そのもの

残念ながら義母は自分で選んだ服を着て、再びお出かけをするという願いを叶えることができませんでした。

願いは叶わなかったけど、クローゼットの中は義母が選んだ服ばかり。

そこに義母はいないけど、義母の選んだ服が並ぶクローゼットはお母さんそのものでした。

「暮らしはその人が選んだモノでできている」と私はいつも思っていますが改めてそうじた瞬間です。その人が残したモノからの人を感じるのです。

私は最後に残された家族が「義母の大切なモノを知ることができた」ことに少しだけ貢献できたのではないかと思いました。

「選ぶ」繰り返しが「生前整理」や「終活」になる

キレイに整えること、使いやすくすること、そして増えたら捨てることはとても大事なことです。

とくに年齢を重ねてくると、散らかった家では転んでケガをすることもあるため、命を守るためにも整えることは重要ですが、やはりその人らしさの部分も大切です。

生前整理、終活という言葉がありますが、私はわざわざ行うものではなく、その人が本当に必要なモノを選び残していく積み重ねが「生前整理」や「終活」になるのが理想だと思っています。

モノが増えるとつい「捨てる」に目が向きがちですし、そうしないとどうしようもならない現実も多々あります。

でも、自分が選んだモノが自分の暮らしを作り、それがやがて自分の人生を作ることになります。

「捨てる」ではなく「選ぶ」を意識することで、その人の思いや願いが詰まった、今の自分を大切にした片づけになるのです。

小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

片づけのプロとして活動を始めたのに、自分の家は「片づけても、また散らかってしまう」という矛盾に悩む。家が散らかってしまうことを隠そうとしていたが、「いつもキレイじゃなくてもいい。何かあったときにすぐに片づく家にしておけばいい」と開き直り新たなメソッドを確立。 いつもキレイにしなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない、そんなプレッシャーから解放され、もっと自由に、その人らしく生きるお手伝いを「片づけ」を通して行っている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』(マガジンランド)

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