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【老犬問題】お漏らしするようになった犬を暴行して飼い主が書類送検。対処方法を獣医師が解説

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
イメージ写真(写真:イメージマート)

犬の平均寿命は、一般社団法人ペットフード協会の調べでは2022年で14.76歳です。一般的には犬は7歳からシニア期に入るので、犬を飼えば、半分は高齢犬と暮らすことになります。

そんないまの犬事情のなか「お漏らしをする」という理由で、叩く、蹴るなどをされていた犬がいます。飼い犬に暴行を加えたとして、60代の男性が神奈川県警に書類送検されましたと日テレニュースが伝えています。

飼い主が愛犬に叩く、蹴るなどの暴行

【飼い犬に暴行か】60代男性を書類送検「怒りをコントロールできず…」日テレNEWSより

上の動画を見ると、60代の男性が横須賀市での散歩中に自分が飼っていた犬に吊り上げて叩く、蹴るなどの暴行を加えています。この様子を見た人がSNSに動画を投稿したようです。

男性は調べに対し容疑を認め、「老犬になってお漏らしをするようになり怒りをコントロールできずにやってしまった」などと話しているということです。

老犬になるとお漏らしする理由

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お漏らしをする理由は、加齢によるものと病気のものとがあります。、老犬のお漏らしの正しい知識を持つことは、大切です。

「加齢によるもの」

筋肉の衰え

犬も年齢を重ねるごとに全身の筋肉が衰えていきます。老犬になると泌尿器系の筋肉も同様に薄くなり弾力がなくなるので、犬の意思と反してお漏らしをしてしまう機会が増えていきます。

それに加えて、足腰の筋力の衰えにより、トイレに向かう途中で、踏ん張る体勢がつらくて失敗するケースもあります。犬にとっても不本意な行為です。

目の衰え

愛犬がお漏らしをするようになったら、トイレがよく見えないのかもしれません。目の衰えもチェックしてみてください。成犬のときのように、トイレの場所が判断できなくなっているのです。

目があまり見えていないと飼い主が気ついたら、周りに障害物のないところにトイレを置いてください。トイレの位置を変えずに、周りを綺麗にしましょう。

「病気によるもの」

認知症

加齢とともに認知能力が衰えてしまい、老犬も認知症になることがあります。トイレでするというコマンドを忘れてしまうこともあります。

慢性腎不全

犬も猫と同様に慢性腎不全があります。初期は尿の色が薄くなり、水を飲む回数が増えて、尿の回数が増えるなどがあげられます。この病気は、動物病院に行き血液検査や尿検査をすればすぐにわかります。

避妊や去勢手術による膀胱疾患

老犬の尿失禁は、過去に行った避妊や去勢手術が一因になる場合もあります。

ホルモンバランスの変化により外尿道括約筋が衰えてしまい、就寝時に尿漏れが起こります。

膀胱炎 尿結石

膀胱炎や尿結石などは、尿の回数が増えるので、お漏らしすることもあります。このような病気のときは、血尿なども混じることもあります。

糖尿病

犬が水を異常にがぶ飲みするようになったら「糖尿病」の疑いがあります。水をよく飲むので、多尿にもなります。動物病院に行き、血液検査や尿検査をすればすぐにわかります。

クッシング症候群

犬の「クッシング症候群」とは、ホルモン異常で起こる内分泌系疾患です。この場合も異常に水を飲み、多量の尿をします。動物病院に行き、血液検査をすればすぐにわかります。

老犬がお漏らしするようになったらオムツを

撮影は筆者 愛犬・ラッキー
撮影は筆者 愛犬・ラッキー

愛犬がお漏らしをするのは、加齢によるものか、病気のものかをまずは見極めてください。病気の場合は、治療すれば治ることもあります。

愛犬がシニアになり、お漏らしするようになれば、ショックかもしれません。そのうえ、お漏らしが始まると後処理が大変になるのも事実です。

真っ先に行いたい老犬のお漏らし対策としては「ペット用オムツ」の利用です。

以前、【オムツ】をして生きている犬や猫を知っていますか? ペットブームの最新事情という記事を書きました。オムツをしているペットは多くなっています。

最初は犬も飼い主も抵抗があるかもしれませんが、オムツを着用すれば後処理の世話とイライラする回数が減ります。毎日のことなので、飼い主も精神的に楽になれることが大切です。

ペット用オムツより、人用のオムツの方が経済的な場合もあります。人用オムツは、シッポを通すところがないので、穴をあける必要があります。

飼い主は、愛犬にオムツをすると皮膚病になるのでは、と心配されるかもしれません。オムツは進化しているので、オシッコをしたときにこまめに変えるとそういうことはあまりないです。

オムツをしていても、オシッコが漏れることがあります。お漏らし用のマットなどがあるので、オシッコを拭けばいいようになっています。

まとめ

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老犬のお漏らしには原因があり、病気であるケースもあります。

何度かお漏らしが見られる、異常行動や気になる症状があれば早期に獣医師に相談することが重要です。

高齢を迎えた犬との暮らしは大変な面が増えます。オムツ代などもかかることもあります。

老犬になり、こんなはずではなかったと思わないように、飼い主は老犬になるとお漏らしをすることもあることを知って犬を飼ってほしいです。

この事件になった老犬は、報道によれば、飼い主いないところにいるそうです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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