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【オムツ】をして生きている犬や猫を知っていますか? ペットブームの最新事情

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:アフロ)

コロナ禍の中、孤独を感じる人が増えています。ペットに癒やしや温もりを求める人が多くなっています。そのため、にわかペットブームになっています。

SNSの中での犬や猫は、白いモフモフが子どもと一緒にいる動画などは、まるで童話の世界のようですし、猫がテレワーク中に、仕事を邪魔にしにきている動画や写真を見るだけで、笑顔がこぼれますね。ネット上で見る多くの犬や猫は、「老い」や「病気」がないような錯覚に陥ってしまいますね。確かに、犬や猫は長生きになりのは、うれしいことですが、ただ喜んでばかりいられないのが、むずかしいところですね。

しかし、現実は、犬や猫は、生きているものなので、当然、「老い」もあるし、「病気」にもなるのです。そんななか、オムツをして生きているペットがいることをご存じでしょうか? 今日は、いまどきの「ペットのオムツ事情」をお話しします。

なぜ、オムツがいるのか?

一般社団法人ペットフード協会によりますと、2019年(令和元年)全国犬猫飼育実態調査の結果は、犬は879万7千頭 平均寿命:14.44歳)猫は977万8千頭 (平均寿命:15.03歳)と発表されています(日本では15歳未満の子供の数に比べ、ペットの数のほうが多くなっています。総務省の発表によりますと、平成30年4月1日現在では子供の数(15歳未満人口)は、1,553万人)。

ペットのシニアの年齢は、個体差もありますが、ざっくり言うと7歳ぐらいからです。犬の平均寿命は約14歳、猫の平均寿命は約15歳なので、生涯の半分以上、彼らはシニアとして生きていることになるのです。

オムツを使っているのは、主に犬です(猫も数は少ないですが、オムツをして生活をしている子もいます)。

オムツが必要なシチュエーションは以下です。

撮影は筆者の病院の飼い主 脳腫瘍のために寝たきりになりオムツをしている
撮影は筆者の病院の飼い主 脳腫瘍のために寝たきりになりオムツをしている

・シニアになって尿が漏れる

・足腰が弱くなってトイレまで行けない

・糖尿病や腎不全や肝臓病など病気による尿量の増加

・認知症になりトイレに行くことを忘れた

・夜中に尿漏れ

・脳障害のためトイレまで行けない

・泌尿器系の疾患のため尿が漏れる

などの子たちが、オムツをして生活をしています。

上記のような子は、オムツをしないと室内飼いの場合だと特に部屋を衛生的に保つことが難しくなるのです。その上、犬や猫は、体が被毛に覆われているので、排泄の度に、「オシッコ」や「ウンチ」で汚れるわけです。そのときに、毎回、洗い流すと、飼い主の世話もたいへんですし、洗うとペットの皮膚に必要な脂がなくなるので、皮膚病の原因にもなります。

SNSでは、このようなオムツ姿のペットを見ることは、少ないかもしれませんが、飼い主に愛情をふり注いでもらってオムツをしながら生きている子もいるのです。

テレビのCMでマナーウェアが流れています。オムツとマナーウェアは、別ものなのです。次はそれを見ていきましょう。

介護オムツとマナーウェアの違い

ペットのオムツには、2種類あります。

ひとつは介護オムツで、シニアや病気の子がします。もうひとつは一般的にはマナーウェアと呼ばれて元気な子もつけています。マナーウェアは、いまの時代ならではの商品ですね。犬や猫は家族の一員というのは、だれもがわかってくれるようになりました。犬なら、一緒に連れてカフェや旅行に行ったりする人もいます。そのとき、公共の場にマーキングしたり、オシッコをしたりするとよくないので、マナーウェアをつけている子もいます。

撮影筆者 雄用のマナーベルト
撮影筆者 雄用のマナーベルト
撮影筆者 雄用のマナーベルトの中身
撮影筆者 雄用のマナーベルトの中身

特に、雄犬は、テリトリーが気になるので、ペニスの辺りに腹巻きのように、雄用のマナーウェアをつけています。外出するときは、そのマナーウェアの上に、マナーベルトをつけるので、服を着せているような感覚で、柄などもあり違和感が少ないです。

雌犬で、避妊手術をしていない場合は、ヒート(生理)のときにこれを使うこともあります。そのときは、陰部から血の成分が出てくるので、じゅうたんや床が血液で汚れてしまうことがあるからです。雌犬のヒート中に使うマナーウェアは、人の生理用のナプキンに似ています。雌犬のマナーウェアもデニム柄などまであり、外出しても洋服を着せているように見えます。

しかし、介護のいる子に、マナーウェアをつけると、尿の吸収量が少ないと尿もれなどします。介護用のオムツをしてあげましょう。そうはいってもその子に合うオムツがあまりないのです。介護をしている飼い主は、オムツ難民になる人もいます。なぜなら、オムツ選びは、その子の運動量、尿量、体格によって異なってくるからです。以下は、オムツ選びです。

オムツ選び ペットの尻尾問題

オムツをしている犬や猫は、割合にいるので、上記のような動画もあります。オムツを探している人は参考にしてみてください(動画は、投稿者の許可を得ています)。

筆者は、18歳の愛犬・ラッキー(5キロ少し)と暮らしています。11月頃からオムツ生活が始まりました。

若い頃は、室内飼いのため、排泄はトイレに行ってしていました。加齢と共に、トイレまで行かずその近くで排泄をするようになりました。そのため、トイレとその周辺までペットシーツを敷き詰めていました。そのうち、いろいろなところで排泄をするようになったので、ペットシーツをフローリングに何枚も敷き詰めるようになったのです。

そこまでは、よかったのですが、次は、ラッキーが起き上がることができにくくなり、寝たまま排泄をするようなりました。その度に、被毛が汚れ、犬自身も冷たい思いをするので、オムツ生活に突入したわけです。

犬用のオムツを使ってみましたが、尿漏れするので、筆者は人用のSサイズのはかせるオムツを使っています。寝たきりではないので、これだと、尿漏れもなくなり、被毛を洗うことも少なくなったので、世話がずいぶん楽になりました。脳腫瘍で寝たきりの猫にも同じオムツを使っていますが、問題がないようです。

もちろんペット用もあるのですが、以下が人用のオムツの利点です。

・人用のオムツの利点

・コストパフォーマンスがいい

ペット用に比べて、お手頃価格です。

・通気性がよくて、蒸れない

・はかせるオムツのウエスト部分が2倍以上に伸びる

・オシッコするとお知らせサインがある

濡れるとオムツの一部の色が変化します(私が使っているムーニーマンは、黄色の線から青い線に)

・体にぴったり合えば、後肢の尿漏れがない

などです。でも、問題はあります。

・人用のオムツの尻尾問題点

当然のことながら、犬や猫は尻尾があります。人用のオムツには、尻尾の穴がないので、通すところを作らないといけません。筆者は、十字に切り込みを入れていますが、丸く開けてテープを貼っている人もいます。尻尾を通すところを作ると中から、尿の吸収用のポリマーが出てくるので、工夫をしている人もいます。上部の動画を参考にしてみてください。

雄犬の介護オムツ

雄犬は、ペニスが、腹側についているので、オムツだけをつけても尿が漏れます。それで、オムツをしてその上に、ペニスを覆うように、尿パットを腹巻きのように、腹部に巻きつけます。大型犬などはペットシーツと人のシニア用の尿とりパッドを併用します。

オムツにマナーベルトを併用することもあります。

オムツかぶれ問題

犬や猫も適切なオムツをしていないとオムツかぶれを起こします。オムツをしているところが、病気になると、犬や猫もたいへんですね。そうならないようにしないといけませんね。オムツかぶれの症状は以下です。

・オムツかぶれの症状

・皮膚が赤くなる

・ただれる

・湿疹が出る

・化膿して、皮膚から膿が出ている

などの皮膚に炎症が起こります。

・オムツかぶれの原因

オムツかぶれの原因は、以下のことからなります。

・オムツの通気の悪さによるムレ

・雑菌の繁殖

・排泄物そのモノの刺激

・オムツが肌にあたる部分のこすれによる皮膚の傷み

・オムツ替えでお尻を拭く時の摩擦

などです。

●オムツかぶれさせない方法

オムツかぶれをしないように、以下のことに気をつけてくださいね。

・オシッコやウンチを排泄したら、できる限り早くオムツを交換

・その子にあったオムツを選ぶ

これがなかなか難しいのですが、おむつの試供品がもらえるお店もあったりします。そして、いまの時代は、フリマアプリなどでも不要になったおむつをバラで売っていることもあるので、そのようなものを利用して探すのもいいですね。

・吸収量の多いものにする

・おしり周りの毛を短くカットする

ウンチやオシッコで汚れたときに、お世話がしやすいですね。筆者は、全身の被毛をサマーカットにしてお世話のしやすいようにしました。

・下痢をさせないように、腸内細菌叢を整える

下痢にならないように、かかりつけ医と相談してくださいね。

このようなことをして、オムツかぶれのない生活をさせてあげてくださいね。

まとめ

撮影筆者 愛犬・ラッキー
撮影筆者 愛犬・ラッキー

コロナ禍でペットを飼い始めた人、ペットを飼っていない人にとっては、オムツをしてまで生き続けている子たちが、割合にいることは、驚きでしょう。電池が切れるように、朝、起きたらペットが亡くなっているものだと考えているのかもしれませんね。しかし、そのようなことは、あまりなく、ペットたちは、人と同じように「老い」を示しつつあちらに逝くことが多いのです。

飼い主の中には、もちろんオムツをしてまで、生きさせておきたくないという人もいるでしょう。

ただ、現実問題として、若い頃、飼い主に愛情を示してくれた子たちを、「老い」や「病気」になったからといって、そう簡単に安楽死ができるものではないのです。

オムツをして生きている子たちは、それだけ長生きしている子が多く、飼い主のきめ細やかなお世話の賜物なのです。睡眠時間を削ったり、外出を控えたりして、老犬や老猫のオムツを交換しています。

これからペットを迎えようとしている人は、ペットがSNSの中で癒やしの存在であり、キラキラと輝いているかもしれません。その一方で、自力ではもうトイレに行くことができない子たちも飼い主の愛情に支えられて生き続けている現実があるのです。それをよく理解して、想像してから、最後まで面倒を見てあげる覚悟を持ってから飼ってもらえたら嬉しいです。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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