【終生飼養の義務】犬や猫が長寿に 飼い主にのしかかる問題とは?
犬を飼うと認知症の予防ができることが報告されているから、高齢者が犬を飼うことが話題になっています。それ以外にも一般の人でも犬や猫を飼うと、生活の潤いや喜びが得られます。
これらは、ペットと共に暮らすことのよい点です。よいことももちろんありますが、犬や猫が長寿になってきているので、新たな問題が出てきているのです。犬の寿命が平均で約14歳、猫の寿命が平均で約15歳になっています。未来は獣医学がもっと発達するので、犬や猫の寿命がさらに延びるだろうと予想されています。
犬や猫が長生きしてくれることは喜ばしいのですが、「犬や猫を最後まで飼うことができるのか」という新たな問題が出てくるのです。その辺りを見ていきましょう。
犬や猫の終生飼養は義務
さみしいから犬や猫を衝動的に飼う人はいます。しかし、犬や猫を飼えば、終生飼養が義務づけられているのを知っていますか?
夜鳴きをするから、徘徊をするからといって安易に行政に連れていっても引き取りを拒否されることもあるのです。
その辺りを詳しくみていきましょう。
平成24年9月に動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(改正動物愛護管理法)が公布され、平成25年9月1日より施行されています。
改正動物愛護管理法は、終生飼養の徹底と動物取扱業者による適正な取扱いの更なる推進等を目的としています。
一般の飼い主が問題になってくる点は、終生飼養の徹底です。犬や猫を適切に最後まで飼わないと改正動物愛護管理法違反になる可能性があるのです。
たとえば、飼い主が75歳で犬を飼ったとします。ペットショップならお金さえ出せば、高齢でも犬を購入できます。犬は飼い主が90歳ぐらいまで生きていることになるのです。
その場合、後述する高齢犬の問題が出てきて、対処できるかどうかということをしっかり考える必要があるのです。終生飼養ができなくなると改正動物愛護管理法違反になる可能性があるからです。
高齢犬が直面する問題点
高齢犬が直面する問題点は多岐にわたります。
身体的な健康問題
関節炎や筋肉の衰えにより運動能力が低下し、歩行が困難になることがあります。今まで上がり下りしていた階段で、転んで落ちてケガをすることもあります。そうなれば、犬が階段を使えなくなります。
チワワなどの小型犬なら抱っこもできますが、ゴールデンレトリバーなどの大型犬なら抱っこするのもたいへんです。犬が自分で動いてくれるときはまだいいのですが、寝たきりになるとウンチやオシッコも垂れ流しになる可能性もあるのです。
内臓の健康問題
特に小型犬は、心臓が弱く僧帽弁閉鎖不全症になる子が多くいます。そして、人と同じようにがんになる子もいます。
どちらの病気も高額な医療費がかかります。
精神的な健康問題
高齢犬になると認知症の症状が現れることがあり、これにより徘徊や夜鳴きなどの行動が増えることがあります。
徘徊などは、飼い主が我慢すれば解決します。
しかし、夜鳴きは近所に聞こえるので、その対策はたいへんです。防音室があればいいですが、一般の家にはそのようなものはありません。そうなれば、薬を飲みます。犬の薬の量を昼間は起きていて夜は寝るように調節するのは、認知症に詳しい獣医師でないと難しいことが多いです。
もちろん、そうなれば、毎日、犬の睡眠の薬代もかかります。
飼い主の負担
高齢犬のケアが増えてくると、飼い主の睡眠時間が減ったり、排泄物の処理や投薬などで飼い主の自由になる時間も減ったりします。愛犬が年齢を重ねてくると、食事も自分で食べることができず、食べさせてあげる必要があります。
白内障になったり、うまく歩けなくなったりした愛犬の老いを見て飼い主の精神的な負担が大きくなることもあります。
高齢猫が直面する問題点
高齢猫が直面する問題点には、高齢犬とは違う身体的、精神的な変化が多く見られます。
内臓の健康問題
トラやライオンなどのネコ科の動物は、年齢が高くなると腎臓が悪くなりやすいです。もちろん、飼い猫もネコ科なので、慢性腎不全になり、食欲不振になり、最終的には体内に毒素が蓄積して尿毒症になる子もいます。
高齢犬にはあまり見られないのですが、甲状腺機能亢進症は高齢猫に多く見られます。この病気は、元気になり、食欲も旺盛になります。この段階では気がつかない飼い主も多く、夜鳴きをするようになり血液検査をすると甲状腺の値が高値になり判明することもあります。
犬と同じように、猫ももちろん心臓病になる子もいますが、犬より少ないです。
身体的な健康問題
高齢犬ほど、猫は寝たきり状態になる子はいません。それでも関節炎や筋肉の衰えが挙げられます。これにより、運動能力が低下し、ジャンプや歩行が困難になることがあります。
精神的な健康問題
猫の認知症が発症することがあり、これにより混乱、徘徊、夜鳴きなどの行動が増えることがあります。
犬よりも猫は認知症が少ないです。上述した甲状腺機能亢進症と似た症状ですので、血液検査をして類症鑑別をしてもらいましょう。
飼い主の負担
飼い主にとっては、高齢猫のケアが増えることで時間や労力が求められます。犬より体重が軽いし、猫は犬ほど寝たきりになる子はいませんが、慢性腎不全になる子が多いので、動物病院に通う負担や治療費がかかることがあります。
まとめ
平成25年9月1日より改正動物愛護管理法が施行されています。終生飼養の徹底が推進されています。
以前なら、がんで治る見込みがない場合でも行政に連れて行き引き取ってもらえたかもしれませんが、そうできないようになっています。
犬や猫の寿命を考えて、「老い」「病気」をすることを覚悟しないと、高齢犬や高齢猫になったとき、こんなはずではなかったと思う飼い主もいるでしょう。犬や猫が高齢となると、飼い主も高齢になっていることが多いので、老老介護になる場合もあります。
いまの時代、犬や猫は気がついたら死んでいたということはあまりなく、老いていく姿を見せながら、彼らは旅立っていきます。
目の前にいる子は、たとえ認知症になり夜鳴きをしても、歯が全部抜けてフードをポロポロと落としても、ウンチがうまくできずトイレ以外のところでもしても、それら全部が愛しいと思えることが大切です。
愛犬や愛猫がどんな状態になっても飼うことが終生飼養です。もし、それができない飼い主は、事前に老犬・老猫ホームを探しておくことです。その場合は、高額な費用がかかることもあるので、お忘れなく。犬や猫が長寿になることは、そんな問題も孕んでいます。