木星で「今世紀の太陽系内で最大の天体衝突」発生の瞬間を詳細に観測!
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「今世紀で太陽系内最大の天体衝突が木星で発生」というテーマで動画をお送りしていきます。
●木星の天体衝突事情
太陽系内には私たちがよく知っている惑星のような巨大な天体以外にも、無数の小天体が太陽の周囲を公転しています。
それらはたまに隕石として、他の天体に衝突することがあります。
地球に隕石が落ちることももちろんありますが、太陽系最大の惑星である木星は地球の11倍の直径がある上、地球の318倍の質量を持ち非常に強力な重力によって周囲の天体を引きつけるため、隕石の格好の的となります。
その結果木星には実に地球の2000-8000倍という頻度で隕石が落ちているそうです!
さらに木星の巨大な重力により、隕石は衝突前に加速させられ、衝突時には地球で同じ大きさの天体が衝突する場合よりも遥かに大きいエネルギーが発生します。
正確な値は不明ですが、地球から閃光が見えるほど十分に高エネルギーな衝突現象については、年間に20-60回程度も起きていると考えられています。
ですが実際は地球から見えない面で衝突が起こるなど、様々な理由によって実際に閃光が観測される頻度はそこまで高くありません。
●去年発生した木星天体衝突
そんな中2021年9月13日、その前の観測から2年以上ぶりに地球から木星に天体が衝突する瞬間を観測することに成功しました。
動画でも明らかに閃光が現れているのが分かりますね。
衝突で発生した閃光の明るさと継続時間から、衝突した天体の直径は一説では数十m程度であると考えられています。
大きな衝突だったことから、木星の大気に衝突跡が残る可能性もありましたが、結果的にそのような痕跡は残りませんでした。
●直後に発生した衝突の詳細が分析される
そしてそのたった1か月後の2021年10月15日、また別の小天体が木星に突入し、再び地球からでも目撃できる火球が発生しました。
これ以前の衝突は2010年以降は先述のものも含め、アマチュア天文家が偶然撮影したものばかりであり、詳細な分析をするにはデータが不足していました。
ですが去年10月の天体衝突については、京都大学の屋上に設置された、衝突時の閃光の検出に特化した観測システム「Planetary ObservatioN Camera for Optical Transient Surveys (PONCOTS:ポンコツ)」により観測されました。
ポンコツはこの閃光を、3つの異なる波長の可視光で観測データを得ることができました。
これによりこれまでにないほど詳細に閃光を分析でき、そこから衝突時の状況について多くのことがわかりました。
この分析結果は2022年6月28日に発表されています。
まず、この衝突はとても高いエネルギーを放出していたことがわかりました。
衝突時の閃光で発生したエネルギーは、過去に地上から観測された他の木星衝突の閃光と比べても10倍程度も大きかったそうです。
具体的には1908年に地球上で発生し、爆心地から半径30km~50kmの森林を焼き払い、東京都とほぼ同じ面積の木々をなぎ倒すほどの被害をもたらした「ツングースカ大爆発」とほぼ同程度のエネルギーだったそうです。
この規模の天体衝突は地球では100-1000年に1度の頻度で起こると推定されますが、木星表面では毎年1.3回程度、つまり地球の100-1000倍程度の頻度でこの規模の衝突が発生していることが判明しました!
さらに、木星の天体衝突で発生した閃光の温度は8000度にもなり、地球からの見た目の明るさは最大で4.7等級にもなったそうです。
これは木星自体の明るさを無視すれば、閃光が地球から「肉眼で」見えるほど明るかったことを意味しています。
仮に閃光発生地点直下100kmから観測できれば、地球から見た太陽の10倍も明るく見えていたことになります。
さらにこれまでの閃光が観測できたのが1-2秒間なのに対し、今回のものは5.5秒間と、非常に長く継続して観測されました。
分析結果から、閃光を発生させた天体の情報についても詳細に推定されました。
衝突した天体の直径は20-30mほどで、木星に対し60km/sの速度で大気に突入し、周囲の大気を過熱して地球からも見える火球を作り出したそうです。
そして閃光発生から約28時間後に木星探査機ジュノーが現地で撮影した木星の画像がこちらです。
これだけの規模の衝突にも拘らず、衝突痕が残っていませんが、これは衝突天体が大気上層で蒸発し、爆発しなかったからだと考えられます。
そしてこれは過去の観測事例と矛盾しません。
●木星は地球を守るのか
有名な説として、「木星は身代わりになって地球を隕石から守ってくれている」というものがあります。
確かに木星には頻繁に隕石が衝突していますし、より地球に近い小天体をも引き寄せ、地球にも接近する小惑星と衝突し危険を取り除いてくれるといった側面はあります。
ですが近年、「木星は逆に地球をスナイパーのように攻撃しているのではないか」という説が登場し、木星が守ってくれているという説が覆りつつあります。
どうやら地球からはるか遠くにある、本来衝突しようのない小天体の軌道を歪め、地球方向に投げつけている可能性が高まっているようです。
現在の所木星には地球を守る側面と、攻撃する側面の両方を持っている可能性が認められているものの、どちらの役割の影響がより大きいのかははっきりとわかっておらず、今後より詳細な研究が必要とされています。
木星は果たして地球の味方なのか、敵なのか、このあたりも気になるところです。
木星の存在は太陽系の歴史全体で見ても非常に大きいので、今後も色々なことがわかっていくことでしょう。
今回登場した、過去の地球で起きた大爆発である「ツングースカ大爆発」については多くの謎が残っています。
それらを以下の動画で紹介しているので、併せてご覧ください。