Yahoo!ニュース

森保監督だけではない。アジアカップの敗因は元選手、多くの日本人指導者が見過ごす問題点にあり(その2)

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

 香川がマンチェスター・ユナイテッドで満足な活躍できなかった理由について、ファーガソンの後任にあたるモイーズ監督との、相性の悪さを口にする人が多い。しかし、香川がポジションをカバーする概念を持ち合わせていないことは入団当初から明白だった。サイドを離れ、気がつけば内寄りで構えるその癖は、高い位置でボールを奪おうとする欧州サッカーに入ると、好ましくないものとして際立って映ったものだ。

 テレビ解説者には、逆に「ポジションは試合が始まってしまえば、あってないようなもの」と、反対の台詞を当たり前のように口にする人が多くいた。中には「ポジションにこだわらない流動的サッカー」をいまなお奨励する人がいる。森保監督の采配ミスには、このうえない必然性を感じる。彼らは選手時代、どのような教育を受けてきたのか。そのレベルがうかがい知れる事象でもある。

 もっとも2010年南アフリカW杯に臨んだ岡田ジャパン(第2期)のサッカーは、ポジションをカバーする概念が徹底されていた。ベスト16入りした最大の要因だと見るが、イビチャ・オシムから監督の座を引きついた当初は、ポジションにこだわりのない流動的すぎるサッカーを頓着なく実践していた。ほどなくすると布陣をウイングのいないサッカーから4-2-3-1に変更したが、数列表記を変えてもその根本となる、基本的な概念まで変更することはできなかった。

 前の4人は、奪われた瞬間を想定せず、自由にポジションを取った。3の右を担当した中村俊輔に至っては、ピッチのど真ん中でゲームメーカー然とプレーした。南野、香川は中村の系譜を引く選手と言える。

 ザッケローニに話を戻せば、彼は攻撃的サッカーの信奉者という触れ込みで招かれた監督だった。攻撃的サッカーを高い位置でボールを奪うサッカーと同義語だとすれば、2014年W杯のサッカーはその度合いにおいて2010年W杯のサッカーに遅れを取っていた。

 原博実技術委員長に2014年W杯後「ザッケローニのサッカーは本当に攻撃的だったのか」と、筆者は大会後、たまらず尋ねてみた。すると「うーん」と唸ったままで、明快な答えは得られず終いだった。

この記事は有料です。
たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバーをお申し込みください。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

杉山茂樹の最近の記事