オーストラリアを延長サヨナラで下したキューバは大逆転での来日なるか【プレミア12レポート】
第2回プレミア12は、11月8日にオープニング・ラウンドの最終日を迎える。メキシコ・グアダラハラで行なわれたグループAは、3勝のアメリカと2勝1敗のメキシコがスーパー・ラウンドへの切符を手にした。台湾・台中のグループBは日本とチャイニーズ・タイペイが2連勝であっさりと勝ち抜け、直接対決では四番・鈴木誠也の2試合連続本塁打などで日本が快勝した。韓国・ソウルが舞台のグループCは、ホストの韓国が2勝、カナダとキューバが1勝1敗で、第3戦にスーパー・ラウンド進出をかける。
亡命者の低年齢化で戦力が大幅にダウンしているキューバの窮状は、すでにお伝えしている。
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実際、第1戦はカナダに2安打完封で0対3と敗れた。11月7日のオーストラリア戦を見ると、チーム力の低下はかなり深刻だ。
36歳のベテラン右腕ブラディミール・バノスを先発に立てたが、1回表に2安打1四球で無死満塁とされると、早くも二番手にラザロ・ブランコを投入。オーストラリアの拙攻もあって何とか無失点で凌ぐという不安な立ち上がりだ。
5回裏には四番のアルフレド・デスパイネ(福岡ソフトバンク)が左前安打を放ち、元巨人のフレデリク・セペダが四球で無死一、二塁とし、アレクサンデル・アヤラが犠打を試みるも失敗。それでも、この大会で唯一好調のヨルダニス・サーモンが右中間にタイムリーを弾き返して先制すると、ヨスパニー・アラコンのサードゴロの間に2点目を挙げる。
しかし、直後の6回表にソロ本塁打を許し、さらに二死一、二塁から同点タイムリーを浴びる。8回表にはライデル・マルティネス(中日)が3三振を奪っていい流れを作り、その裏に一死一、三塁と勝ち越しのチャンスを築くも、三番のジュリエスベル・グラシアル(福岡ソフトバンク)が空振り三振、デスパイネはショートゴロで無得点に終わる。
9回表にはR.マルティネスが安打と四球で無死一、二塁にされると、リバン・モイネロ(福岡ソフトバンク)まで注ぎ込む必死の防戦。2対2のままタイブレーク方式の延長に入り、10回裏一死満塁からグラシアルの浅いセンターフライで三塁走者を突っ込ませ、相手捕手の落球でサヨナラ勝ちという際どい勝利だった。
戦力ダウンよりもモチベーションの低下が原因か
キューバ代表が来日した際には通訳を務めることも多い全日本野球協会の柴田 穣・国際事業委員は、日本代表のマネージャー経験も踏まえてこう語る。
「1999年のシドニー五輪アジア予選から2002年のアジア競技大会(韓国・釜山)までの日本代表は、プロとアマチュアの混成チームでしたが、期待された結果を残すことができませんでした。どうしてもアマチュア選手が遠慮してしまうこと、プロとアマの選手選考の違いなど、チーム一丸となり切れない要素があったことも、ひとつの原因だったと考えられています。現在のキューバは、その頃の日本に近いのではないでしょうか」
確かに、日本などのプロに選手派遣を解禁したことにより、デスパイネやグラシアルらプロ選手と国内リーグでプレーするアマチュア選手が一緒にプレーしている。
柴田氏が「年俸何億円と月給300ドルの選手が混在するチームの雰囲気はどうか。選手はモチベーションを保てるのか気になる」と言うように、戦力以上に気持ちの面で、全員がハングリーに向かってくるキューバらしさはなかなか醸成できないのかもしれない。あるコーチにそのことを尋ねても、「それは選手に聞いてくれ」と突き放されてしまったが……。
ともあれ、かつての絶対王者・キューバが、前回王者の韓国を相手に、どんな戦いを繰り広げるか注目したい。
(写真=Paul Henry)