Yahoo!ニュース

サンウルブズ齋藤直人、早稲田大学の日本一からどう気持ちを切り替えた?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
第1次スコッドから名を連ねていた(著者撮影)

 ノートとペンでスイッチを切り替えた。

 早稲田大学ラグビー部の主将として11年ぶり16度目の大学日本一に輝いた齋藤直人は今季、国際リーグのスーパーラグビーに初挑戦。日本から同リーグへ挑むサンウルブズと契約し、1月17にチーム練習へ合流している。

 1月25日には福岡・ミクニワールドスタジアムでのプレシーズンマッチに後半20分から出場。国内下部リーグ連合軍にあたるチャレンジバーバリアンズを81-28で破った。

 

 身長165センチ、体重73キロ。攻めの起点となるスクラムハーフとして運動量、パススピード、テンポの速い試合運びなどを持ち味とする。早稲田大学ではゴールキッカーを務め、2018年にはこの頃の学生で唯一の日本代表候補となっている。

 プレシーズンマッチでは接点から接点へ素早く移動しながら周囲の陣形を確認。時に目の前の相手を引き付けるなどし、鋭いパスを重ねた。

 防御が飛び出した裏へのキックも絶妙。後半25分頃には自陣10メートルエリア左のラックから球を持ち出し、ショートサイドと呼ばれる狭い区画へ走り込む。一気にゲインし、前方へキック。カバーに回った相手は、拾った球をタッチラインの外へ蹴り出すのがやっとだった。

 ただし試合後の共同取材では、生来の素直でストイックな気質をのぞかせた。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――いい感触だったのでは。

「いやぁ、相手もコンバインドチームだったのでそこは何とも。求められていたテンポというところは、色々考えすぎて出せなかった。

 全部が全部、速ければいいってものじゃないですけど、要所、要所で(テンポを)上げないと。その辺で、今日は自分自身も迷いましたし、スタンドオフともコミュニケーションを取れなかった。

 ショートサイドのところは(戦前に)敬介さん(沢木敬介コーチングコーディネーター)に言われていたところなので、1本、突けてよかったとは思います」

――サンウルブズのジャージィを着た感想は。

「テレビで応援していたチームのジャージィを着てグラウンドに立てたことは嬉しいですけど、スーパーラグビー自体は始まってもいない。着て満足するのではなく、もっと成長できるようにしていきたいです」

――対戦が楽しみなチームは。

「どのチームも。…ただ、アーロン・スミス(ハイランダーズに所属するニュージーランド代表スクラムハーフ)とやってみたいです」

――大学選手権決勝は1月11日。東京からサンウルブズのキャンプ地だった大分へ行くまでの間、どう気持ちを切り替えたか。

「オンとオフの切り替えが大事だと思って4日間くらいは何もしていなくて。でも(優勝に)浸っちゃっていたところがあったので、コンディションは考えながら、気持ちのところは移動中にノートとかを書いて、目標を文字にして切り替えました。目標は…。恥ずかしいので…。

 1回(23日)、テストで東京に帰ったんですけど、その時には早稲田で優勝したことを忘れていたなと。そのくらいこっち(キャンプ地)へ来てからはサンウルブズに集中してやれていました」

――外国人選手とも積極的にコミュニケーションを取っています。

「スクラムハーフって信頼が必要。それは人と話してもそう聞きますし、自分もやっていて思います。英語を喋れないなりに、自分から関わっていこうという姿勢は見せているつもりです」

――味方には海外の代表経験者もいますが。

「プロ選手はグラウンド外の姿勢、コンディションを整える行動が参考になります」

――自身がプロとして意識したいこと。

「1回の練習でベストなパフォーマンスを出すために準備すること、じゃないですか」

――スクラムハーフには他に、元南アフリカ代表のルディ・ペイジ選手もいます。齋藤選手がレギュラーになるには。

「英語を喋れないというディスアドバンテージがあるけど、そうも言っていられない。グラウンド内では常に全力でやり、グラウンド外でコミュニケーションを取る。信頼を得るためにできることをやりたいです」

 注目度の高い若手選手の1人について、サンウルブズの大久保直弥新ヘッドコーチはこう所感を述べる。

 

「面接をした時に『早稲田で勝ったということに浸っていたというか…』と。それは素晴らしい経験だったんですけど、自分で『このままではいけない』と思ったんでしょう。飛行機のなかでスイッチの切り替え(をし)、いまはプロとしてスーパーラグビーでプレーするのに何が必要かというマインドセットができている。きょうはプレー時間こそ短かったですけど、彼の持っている視野の広さ、キックスキル、パススキル(が発揮された)。ここは、今後チームに慣れてくればより活かされるんじゃないかと思います」

 開幕戦は2月1日、福岡・レベルファイブスタジアムでおこなわれる。相手はレベルズだ。

齋藤は4月以降、トップリーグ所属企業に入社予定。しかし関係者によると、長くサンウルブズに関われそうだ。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事