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日本代表、ミスをなくすよりも大事なこととは?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
トライを決めて喜ぶマシレワ(右)を流(左)が祝福する(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 ラグビー日本代表の共同主将を務めた姫野和樹は、「結果は残念でしたが…」と切り出す。

 7月15日、熊本・えがお健康スタジアム。ニュージーランド代表の予備軍にあたるオールブラックス・フィフティーンに27—41で敗れていた。

 JAPAN XV名義で臨んだ8日の同カード(東京・秩父宮ラグビー場で6―38)から2連敗。それでも姫野は「結果は残念でしたが…」の続きをこう結ぶ。

「チームの進むべき方向性は正しいと1週間を通して思いました」

 確かにエラーが失点に繋がりがちだった一方、攻防のシステムが機能するシーンもあった。

 試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチと共同会見に臨んでいた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――2戦連続でウイングとして先発のセミシ・マシレワ、ジョネ・ナイカブラ両選手への評価は。この2人がワールドカップで通用する見通しは。

ジョセフ

「(ウイングでは)いま、怪我をしている選手が何人かいます。木田(晴斗)は何週間も。(シオサイア・)フィフィタも(6月の)浦安合宿で。現状、(正規の代表選手では)2人しかいないため、フィジアンの2人がそこに入っている。他の選手もフィットしていれば、そこに入ってくる。

(昨年ウイングに入った)松島幸太朗はフルバックで見てみたい。彼はウイングができるのはわかっているので。

今後、フィットしている選手たちがいれば、状況(起用法)も変わってくる」

——グラウンド上のインタビューで、エラーが多かったことを悔やんでいました。

ジョセフ

「きょうは、自分たちのラグビーができる場面がたくさんあった。ただニュージーランドのチームはターンオーバーから得点を挙げるのが上手で、(ミスにより)そういうチャンスを与えてしまえば攻められる。ただ自分たちのラグビーができた部分はある。きょうあったミスをなくせばテストマッチで勝てる。いまはコンビネーション(起用法)を試しているなか、ミスをなくしていく必要があるのです。

ノックオン(落球)の原因は、姫野に聞いてみたらわかる。いや、何でノックオンをしたかは、本人もわからない。ノックオンをしたくてラグビーをしている選手はいませんので。

ただ自分が言えることは、試合の重要な局面で集中するようにして、改善できるのではないかということです。

コーチとしては、ミスはなくしたいと思うのは間違いない。ただ、自分たちがやらなければいけないことをやめてほしくない。自分たちのラグビーをし、成長し、自信をつけてもらいたい。自分たちらしさをキープすることで、ワールドカップで結果を出せるようになると思います」

——スクラムハーフの流大選手が入った後半11分以降に2トライが決まった。

ジョセフ

「私たちはアタックでミスをして、簡単にトライを獲られることがあった。クオリティの高いチームを相手にミスをすると、罰を受けることになる。

 ただ自分は今日、出ていた選手を誇りに思います。選手たちのボールを動かしてトライを獲ろうとする意志があった。特に後半のパフォーマンスはよくなった。ここから日々、改善し、チームを作り上げていく。流は、いいインパクトでした」

——新戦力のアマト・ファカタヴァ、長田智希両選手への評価は。

ジョセフ

「誇りに思います。アマトはリコーではブラインドサイドフランカーをしているなか、違うポジションでプレーしている(日本代表ではロック)。ポテンシャルがある。私は機敏に動ける選手が必要だと思っていますが、彼はスピード、スキルを持っている。よくなっていて、未来の選手と言える。

長田はこの2試合で中野将伍、中村亮土の穴を埋める位置に入りましたが、本当によかったと思います。身体は大きくないがスキル、フィットネスがある」

 なお、今季、正式な主将が誰になるのかは未発表も、この日は姫野和樹、坂手淳史が共同主将を務めた。特に姫野はナンバーエイトとして先発フル出場し、強烈な突進とタックルを重ねた。

——初めて主将を任されて。

姫野

「僕が持っているリーダーシップは、情熱を出して、チームに愛情を注ぐこと。その情熱はチームに伝染するし、隣の人、またその隣の人に火がついて…と、大きな火になる。今週、その火付け役は自分だと思うし、それをグラウンドのなかで表現し続けることはできたかなと」

ジョセフ

「彼はすごくいいリードをしてくれた。その他のリーダー陣もよくチームを盛り上げてくれた。

いまのチームにはたくさん経験のある選手がいます。このレベルで勝つには何が必要かを理解してきている。

日本に来てからずっとそうですが、(日本代表は)スロースタートになることが多い。チーム作りにはある程度、時間がかかる。後半になるとチーム力は上がってくる」

——姫野さん、ワールドカップ本番で主将を担うと想像しているか。

姫野

「このチームにはいいリーダーがいっぱいいる。(流)大さん、坂手さん、リーチ(マイケル)さん…。そのなかで今週は情熱が必要だったから、僕はそれをリードしました。自分の仕事を常に全うする、そのマインドしかないです」

——姫野選手を主将にする確率はどのくらいか。

ジョセフ

「主将に何が必要ですか? 姫野も、坂手(淳史/昨秋に主将)も、それを常に考えています。私が思うには、ベストプレーヤーでなきゃいけないということ。グラウンドで自分がリードしないといけない。それでメンバーに影響を与える。姫野はその素質を持っています。自分のパフォーマンスを妥協せずに出し、そこから他の仕事をしていくことが主将には重要です。誰が(ワールドカップで)主将になるか。今後の大きな試合で、見ていきたいです」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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