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朝倉未来の強気な発言は「絶対負けられない闘い」の証し──11・21大阪城ホール『RIZIN.25』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
王座をかけて闘う朝倉(左)と斎藤。中央は榊原信行CEO(写真:RIZIN FF)

会見場には、緊張感が漂っていた。

10月19日(月)午後、東京・目黒『雅叙園』で開かれた『RIZIN.25』開催発表記者会見。出席した選手は、朝倉未来(トライフォース赤坂)、斎藤裕(パラエストラ小岩)、扇久保博正(パラエストラ松戸)、瀧澤謙太(フリー)、江畑秀範(フリー)の5人。

11月21日(土)、大阪城ホールで開催される『RIZIN.25』に出場する主力選手たちだ。

この日、発表された対戦カードは9つ(総合格闘技5試合、キックボクシング4試合)。

その中に以下のカードが含まれる。

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(提供:RIZIN FF)
(提供:RIZIN FF)

決して派手な会見ではなかった。むしろ終始、静かだった。それでも穏やかな感じではなく、空気がピーンと張り詰める。

その理由は朝倉の挑発的な発言にあった。

「俺の相手じゃないかな」(朝倉)

朝倉未来vs.斎藤裕。

おそらくはメインイベントとなるであろうこの一戦は、初代RIZINフェザー級王者決定戦として行われる。

朝倉は2年前の夏にRIZIN初参戦以降、強豪相手に7連勝。対する斎藤はRIZINのリング2戦目ながら、修斗世界フェザー級チャンピオンである。ともに実績を評価され、ベルトを賭けて闘うこととなった。

会見で質疑応答を通し、斎藤は次のように話している。

「このチャンスを逃したくない」と話した斎藤(写真:RIZIN FF)
「このチャンスを逃したくない」と話した斎藤(写真:RIZIN FF)

「タイトルマッチが発表されて嬉しい。朝倉選手は強いので、いい試合をして会場を盛り上げ、僕が勝ってチャンピオンになりたいと思います。(朝倉に対しては)頭がいい選手という印象がありますね。自分が勝つイメージを明確に持って試合に挑んで作戦を遂行する、そんなタイプだと感じています。

試合展開はやってみないと分かりませんが、5分3ラウンドを通して必ずチャンスはあるので、そこを逃さず闘いたい。チャンスを逃さなかった方が勝つと思います」

両者は表情に笑みを浮かべることがなければ、視線も合わせない。

そんな中で、朝倉は言った。

静かな口調ながら「競るようなことはない」と挑発的に話す朝倉。左は扇久保博正、右は榊原CEO(写真:RIZIN FF)
静かな口調ながら「競るようなことはない」と挑発的に話す朝倉。左は扇久保博正、右は榊原CEO(写真:RIZIN FF)

「試合は今年の2月以来ですが、その後もずっと追い込んで練習をやってきたので、さらに強くなった自分を見せられると思います。

でも(斎藤は)俺の相手じゃないかなって感じですね、率直に。圧倒的かどうかは分かりませんが(実力的に)競るような展開にはならないでしょう。

まあ、試合に勝っても怪我をすることもあるので何とも言えないですけど、大晦日もリングに上がって日本の格闘技界を盛り上げたいですね。今回のタイトルマッチで証明されるベルトの価値って、あまり高くない。今後、世界の強豪を倒してベルトの価値を高めていきたいと考えています」

(斎藤なんて眼中にない。俺は、その先を見据えている)

そう言わんばかりだ。表情を硬くしたまま斎藤は黙って聞いていた。

朝倉にとっての「試練の一戦」

朝倉は、斎藤をスッカリ格下扱いしている。だが実際のところどうだろう。私は、両者の実力は拮抗しているように思う。

勝敗の行方は、いずれが試合のペースを握るかに委ねられるのではないか。

気になったのは、会見の中で朝倉が発したこの言葉だ。

「練習は、ほとんどスパーリングなんですけど、その中で組み技が8割。組み技でも俺の方が強いんじゃないかと思っています。そういう展開にはならないでしょうけど、そうなった時は相手が俺の強さを実感するんじゃないかな」

大方は、朝倉はスタンドでの展開を保ち打撃で勝負するだろうと見ている。

逆に斎藤はグラウンドでの攻防に持ち込み、粘りのあるファイトをしたい。

そこで敢えて朝倉は「俺は組んでも寝ても強いぞ」とアピールした。

これは何を意味するのか?

おそらくは、牽制だろう。

本当は絶対にグラウンドの展開を回避したいのではないか。巧みな心理戦だ。

ファイターとしてのみならず、ユーチューバーとしても名を馳せ人気者となった朝倉。

修斗チャンピオンでありながら知名度では劣る斎藤。

このカード決定を俯瞰してみれば、朝倉は「絶対に負けられない闘い」を強いられたように思う。ここで負けるようなことがあれば、これまでに築き上げてきたファイターとしての地位を一気に失う。逆に斎藤は修斗を背負っているとはいえ「スターダムを駆け上がるビッグチャンス」を得た。

メンタル的に開放度が高いのは、斎藤の方だ。

試合当日、会場には、RIZINバンタム級王座をかけて闘った朝倉海vs.扇久保博正(『RIZIN.23』)の時以上の緊張感が醸されよう。

浪速の秋舞台で朝倉未来が、試練の一戦を迎える。

 

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

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