福祉を超えていくと何に出会えるか。
第4回超福祉展 SUPER WELFARE EXPO
2014年開始当初から福祉のあるべき未来をテーマに様々な新技術、手法そして意識変革を発表してきたこのイベントが、今年はますます熱く盛り上がっています。イベントへの期待の大きさは、直前まで開催されていた東京モーターショーの盛り上がりをそのままお台場から渋谷に持ち込んでいるかのようです。福祉とモビリティという異分野の取り組みがかなりクロスオーバーである現在。超福祉展の超とは単に福祉を解決するテクノロジーを紹介するというものにとどまりません。
まず会場がこれまで渋谷ヒカリエのみだったものが、渋谷キャスト スペース・ガーデン、ケアコミュニティ・原宿の丘さらにはハチ公前広場でのトークセッションなど渋谷駅周辺9会場で展開されています。渋谷駅は谷の底。周辺といっても離れるほどに高台となります。現状はバリアだらけな会場アクセスです。「超大変!」とホイールチャレンジャー(車椅子利用者)は嘆きながらも楽しそうです。バリアフリーマップアプリ「WheeLog!」のワークショップでは車椅子メンバーとサポーターによる渋谷のバリアフリーマップ作りを第3回から実施。今回は街に出て、最新のパーソナルモビリティでの試乗巡回ツアーもあります。視覚、聴覚など移動に不安を持つ方々とともに巡り歩くことで、超えていくバリアを実感し、課題を検討できそうです。
多彩なテーマは豊かなダイバーシティの実現への挑戦を提示。
規模が拡大し、テーマも実に多彩です。A3サイズ6ページにわたるガイドパンフレットを見てみましょう。シンポジウムだけでも33テーマ。ちょっと自分の行動視点からピックアップ。街に出る際にバリアといえば、まず確認したいものがトイレ。「だれでもトイレ」はどこかを把握したいものです。その前に本当に快適で受容できるトイレを作っていくこと。ちゃんとそれもありました。11/9に実施された<パブリック・トイレから考える都市の未来>2020オリパラのパートナーであるLIXILによるシンポジウムでした。現在仮設だれでもトイレを開発中とのことです。安心してだれでも、どこへでも行ける超トイレに期待。
働き方を改革することが最重要課題である現在の企業経営。それを絞り込んだテーマ設定したものが11/7開催<病とともに生きるこれからのキャリア>でした。超長寿時代は病を得ても自分のため、そして社会の一員として働かねばならない時代。会社が如何にそれをサポートし、継続性を共に作り出せるかが討論されたセッションでした。
それに連動すると思われるのは11日に開催される<「注文をまちがえる料理店」と「認知症」>だと思います。超働き社会は実は超スローライフなのかもしれません。
13日月曜日までまだ多数のシンポジウムが開催されます。ぜひ参加してみてください。
超福祉の超は何を超えるのか
超福祉展から遡る2週間前の週末10/28。渋谷駅周辺はハロウィンの最中でした。そこに現れた黄色いコスチュームに金色の渦巻き帽子集団200人。これは筆者が5月に紹介したうんちマンのフラッシュモブです。ハロウィンの渋谷駅で普段できない事をする〜〜〜それは街に出ること、熱い交流を楽しむこと。それをやりたい人は、障害がある、難病と闘っている、日本社会に馴染みたいと頑張っている、心の内と外界のバランスに悩んでいる…そしてその仲間を支えて楽しみたいと思う、そんな200人。福祉の先にあるのは、このみんなで街に出ることです。
それを実現するためにはここまでの記事に書いたことの全てがバリア課題として存在していました。身体不安のあるメンバーのトイレ、着替え場所確保。宮益坂上〜谷底のハチ公前〜宮益坂上の進行ルート計画づくり。安全誘導・看護サポートスタッフ確保etc.半年間でその全てを検証し解決を確信して迎えた10/28。あいにくの台風22号の影響での悪天候にも負けないイベントプラン組み換えも的確に、盛り上がりと全員のパフォーマンス安全終了に笑顔が弾けました。
投入された最新の技術、プロのボランティア参加、入念な段取り。そして成果は全員の笑顔です。デバイスやデジタルソリューションを身につけても険しい難所を超えるものは結局、何でしょう?うんちマンフラッシュモブで見えたのは、想像力と検討力で自然に思えるレベルに定着させることでした。これは正確かつ安全が当たり前な公共交通網をはじめとして、実現している日本の誇らしい「あたりまえ」づくりです。実はあたりまえこそが最もありがたい事であり、目指すべきものでしょう。超福祉展の英語タイトルはSUPER WELFAREです。OVER THE WELFAREが望ましく思えます。福祉という概念を化学変化させてNormalization、いやAtarimaeに進化させる事を目指したいものです。
参考:5/4掲出記事「あなたもうんちマンになりたくなる。世界を笑顔と誠意で練り上げろ?」
多様なビジネスパートナーとともに
超福祉展に戻りましょう。企画展示されている&HANDのプロジェクト「スマートマタニティマーク」はこの理想を着実に形にしようとしています。電車やバスで席を譲って欲しい人と譲りたい人を出会わせるサービスをLINEアプリで実現。
12月には銀座線で実証実験に入ります。デジタルソリューションでターゲットを即座に狙い撃ち。さらにAtarimaeにするためにアナログな手法で広くコミュニケーションするチームとの連携も進めています。
こうした多様な取り組みやソリューションが垣根を超えて繋がる事で、より豊かで安定した解決策が生まれていくはずです。それがまさにAtarimae展開。パラレルな課題や目標を一緒にディスカッションするパラディス思想スタイルで進めていきたいものです。
渋谷のダイバーシティ推進はさらに続く
超福祉展がクロージングを迎える11/13から15日まで渋谷ではDiveDiversitySummitShibuyaが開催されます。熱いカンファレンスが渋谷の晩秋を彩り、期待高まるダイバーシティメトロポリスの近未来を体感できる事でしょう。
DiveDiversitySummitShibuya公式ホームページ
2017/11/12追記
筆者コメント的補足です。
開発される技術や取り組みに対して、抱く疑問があります。<当たり前に気遣いしあえばいいだけ。それだけ>
しかし気遣いはまぼろしのようなものです。昔は当たり前でしたよ、そう言われますが、情報社会が成長して気がつかない様々な辛さや、お手伝いすることの難しさがかつてないほど分かってきます~まだまだ途上。
たとえばわたくしは50歳の頃から電車で席を譲られるようになりました。最初は固辞していましたが、気が付きました。譲ろうとしてくれた人の勇気を挫いてしまっていないか?断られると次の機会にはその何十倍の勇気が必要になるはず。もしかすると見えないふりをするようになるかも…。そこで申し出は断らなくなりました。その代わりに周りを見渡して、わたくしより譲るべき人を探します。「こちらのご婦人に譲ってもいいですか?」。
譲るべき人がいなかったら、満面の笑顔で座らせていただきます。「ありがとうございます。助かります」と。
譲るべき人を探すのも難しいものです。内部疾患など見えない辛さのある方は苦労しています。友人のひとりは心因性の症状で階段やエスカレータが使えません。エレベータを使おうとすると、周囲の方々の視線が突き刺さります。格闘技競技で活躍した女性は、内臓を病んで引退し、家庭へ。現在妊娠中。病もあるためマタニティマークを使用中ですが、立派な体のせいで視線が痛いと言います。知れば知るほどに対応は難しいものです。現状では善行(ほぼ死語?)をするも、頼るも勇気がかなり必要です。悲しい思いをすることもあります。
気遣いが欲しい人と提供できる人をマッチングできるようにするコミュニケーションツールが、サポートしてくれる。これはあくまでプロセスです。いずれ社会が成長して気遣いがAtarimaeになり自然に、ごく普通に優しくなってほしいものです。今、このプロセス期を懸命に引っ張ってくれる方々や組織に期待しつつ、市井の名もない一般人すべてが「当たりまえですよ」と笑顔を交わせる街の実現を待ちましょう。