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学校の1人1台端末は、ずっと続けていけるのか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 来年度の国家予算編成の工程がスタートするが、教育の今後を知る大きな手がかりとなる。新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)をきっかけに文科省の1人1台のICT端末の普及を柱とする「GIGAスクール構想」に拍車がかかってきている。

 構想の当初案では、2023年度までに1人1台の端末を整備するとしていたが、安倍晋三首相の休校要請で全国の学校が突然の長期休校に突入するなか、子どもたちの学びを保障するための手段として、オンライン授業が注目されることになり、GIGAスクール構想がスポットライトを浴びることになったのだ。

 そして23年度までにとされていた1人1台端末が前倒しされることになり、今年度中に実現すると文科省が発表することになる。かなりの前倒しである。そのために、4月7日に閣議決定された緊急経済対策において、ICT環境整備のための予算として2292億円が確保された。

 以来、文科省は「カネはあるから前倒しで1人1台端末を実現しろ」と各自治体の尻をたたきつづけている。これに、各自治体も「バスに乗り遅れるな」とばかりにしゃにむに取り組みつつある。早くも1人1台端末を実現した自治体も少なくないし、今年度末には全国の小中学校で1人1台が実現するのは確実だろう。

 そうしたなかで、懸念の声も聞かれる。「1人1台を急いで実現したのはいいが、次の買い替えのときに、はたして予算が確保できるのか」といった声だ。

 パソコンにしろタブレットにしろ、いちど買ってしまえば、その端末を一生使いつづけられるという類のものではない。数年ごとの買い替えは必然である。もちろん、そこで必要になるのは予算だ。

 緊急経済対策に2292億円が盛り込まれたとはいえ、これだけで全国の小中学校での1人1台端末が実現するわけではない。この特別予算で国が負担するのは、2分の1でしかない。残りの2分の1を負担するのは各自治体であり、これは、かなりの負担である。

 次の買い替え時期のときに、緊急経済対策がある可能性は低い。そうなってくると買い替え予算の全部を、各自治体が負担しなければならなくなる可能性もある。自治体によっては大きな負担であり、負担できないところもでてくるかもしれない。

 そうなると、1人1台端末を前提とした体制をとれなくなる学校がでてくる可能性も大きいし、自治体による格差が生じることにもなる。これだけは、絶対に避けなければならない。

 GIGAスクール構想を急ぐべきかどうかの議論は別にして、新型コロナをきっかけに1人1台端末を文科省と国が音頭取りをして前倒しした以上、その責任をとる必要もある。そのためには、買い替えをスムーズに行えるシステムを前提とした予算措置をきちんと講じる必要がある。

 それができなければ、学校現場は古くて役にたたなくなった端末を使いつづけなければならなくなる。授業を円滑にすすめるどころか、重荷となる。学びの保障どころから、学びの障害にもなりかねない。

 来年度予算で、買い替えまで想定した予算がきっちりと確保できるのかどうか、どこまでGIGAスクール構想を本気で考えているかの文科省と国の姿勢がみえてくることになる。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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