よく話す人はなぜ「質問ベタ」なのか?
■会話が盛り上がるまでは「相手の引き出し」を開け続けよう!
相手といい関係を築けるまでは、できる限り「相手の引き出し」を開ける質問をすべきだ。「自分の引き出し」を開ける質問は、ほどほどにしたほうがいい。
たとえば、
「あなたの趣味は何ですか?」
という質問は、相手の引き出しを開けようとしている。その反対は、コレだ。
「私の趣味は何だと思いますか?」
だ。相手と関係ができていないうちから、こんな自分本位な質問をする人はいないだろう。それでは、この質問はどうだろう。
「私はヨーロッパサッカーを観戦するのが趣味なのですが、あなたの趣味は何ですか?」
これは、自分の引き出しを開けたあとに、相手の引き出しを開けようとする質問だ。
相手に話をしてもらうためには、できる限り質問は短いほうがいい。そのため「自分語り」は少なくしたい。相手が誰に関心を向けているのかがわからなくなるからだ。
「私はヨーロッパサッカーを観戦するのが趣味なのですが、あなたの趣味は何ですか?」
これぐらいなら問題はない、と誰もが思うだろう。しかし「自分の引き出し」をいったん開けてると、その引き出しに入っていたものがドンドン出してしまうことがある。
「私はヨーロッパサッカーを観戦するのが趣味なんです。あんまり興味ないですかね。プレミアリーグとかラリーガを特に注目していて、最近応援しているのは、リバプールとアトレティコなんです。まァ、そんなこと言ってもわかんないかもしれませんが、ところで、あなたの趣味は何ですか?」
とくに「よく話す人」は、そうだ。一度「自分の引き出し」を開けるとスイッチが入ってしまい、止まらなくなる。さらにひどいケースもある。
「……ところで、あなたの趣味は何ですか?」
「盆栽です」
「え、あの盆栽ですか。へえ、意外ですね。私の母親の親戚で盆栽が趣味の人がいますよ。あれ、意外とお金がかかるんですよね?」
「私のは20万円です」
「20万円! すごい金額だ。私の親戚はそこまでお金をかけてないと思います。庭にお金かけてるって言ってたかな。けっこう広い庭があって、近所でも有名なんです。その盆栽はどんな盆栽なんですか?」
一度スイッチが入ってしまうと「自分語り」が止まらなくなる。当然、このような受け答えをしていれば、相手と関係ができるはずがない。相手よりも自分への関心が高いと思われるからだ。
■「相手の引き出し」を開けることに全神経を集中させる
大事なことは、相手に関心を寄せることだ。つまり「相手の引き出し」を開けること。そこに全神経を集中させてみよう。
「趣味は何ですか?」
「サッカー観戦ですね」
「サッカー観戦ですか。どのようなサッカーを観戦するんですか?」
「ヨーロッパのサッカーです」
「ヨーロッパのサッカーって、いろいろありますよね」
「主にプレミアリーグが好きです」
「どこか応援しているチームがあるんですか」
「マンチェスター・シティというチームです」
「それはどうしてですか?」
「監督がグアルディオラという人で、この人の戦術が好きです」
「いつから好きになったんですか?」
「たしか……。バルセロナの監督をやっていたときからですね」
「具体的に、それはいつ頃ですか?」
「10年以上前でしょうか。メッシをはじめとしたスーパースターがいて、ものすごく強かったです」
「そのときからグアルディオラ監督に注目してたんですね」
「そうなんです。その後はドイツのバイエルン・ミュンヘンとかでも監督してて……」
質問している本人は、ヨーロッパサッカーの、しかもプレミアリーグが好きで、その中でもリバプールというチームが好き好きでたまらないのだが、あくまでも「自分の引き出し」は開けない。
せっかく相手が「話してくれる」モードに入っているのに、その雰囲気を壊しかねないからだ。
「自分の引き出し」は、それなりに会話が盛り上がってからでいいのだ。
「実は私もプレミアリーグが好きなんです」
「え! そうなんですか」
「私はリバプールの大ファンです」
「そうだったんですか。リバプール、最近はメチャクチャ強いですよね」
「いやいや……マンチェスター・シティはおっしゃる通り、グアルディオラ監督が凄くて」
このように、あえて自分の引き出しを開けず、しばらくは「聞き役」に徹しよう。そうすると相手は感動するはずだ。
「なんだ、最初から言ってくれればよかったじゃないですか」
と相手は言うかもしれない。しかし気分は悪くないはずだ。まずは自分自身に関心を寄せてくれたからだ。そうでなければ、ここまで話はしなかったからだろう。
「よく話す人」は、質問ベタが多い。無意識のうちに自分の引き出しを開けて質問するからだ。
会話が盛り上がってくるまでは、ほどほどにしよう。