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新型コロナ 夏休み・お盆・帰省シーズンにおける感染対策の考え方

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

この週末は3連休となり、その後は夏休みシーズンを迎えます。

2022年7月15日現在、新型コロナの新規感染者数が増加する中、夏休みを楽しく安全に過ごすための感染対策のポイントについてまとめました。

新規感染者数が急激に増加

日本国内の新型コロナ新規感染者数と死亡者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)
日本国内の新型コロナ新規感染者数と死亡者数の推移(Yahoo!JAPAN 新型コロナウイルス感染症まとめより)

2022年7月15日現在、新型コロナの新規感染者数が急増しています。

7月13日には全国で1日に94000人の感染者が報告されており、いよいよ第7波の流行が始まったと考えて良さそうです。

この感染者の急激な増加の背景には、

・ワクチン接種後の時間経過による集団としての感染予防効果の低下

・行動制限緩和による人流の増加

・酷暑に伴うエアコンの使用による換気の低下

・オミクロン株の亜系統BA.5の拡大

などがあると考えられます。

次に、重症者数および死亡者数の推移を見てみます。

新型コロナ重症者数の推移(厚生労働省. データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-より)
新型コロナ重症者数の推移(厚生労働省. データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-より)

新型コロナ死亡者数の推移(厚生労働省. データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-より)
新型コロナ死亡者数の推移(厚生労働省. データからわかる-新型コロナウイルス感染症情報-より)

現時点では、重症者数や死亡者数については緩やかな増加にとどまっています。

新型コロナワクチンの高い接種率が達成され、デルタ株と比べて重症化しにくいオミクロン株が広がっている現在、感染者のうち重症化する人の割合は低下しています。

そういった状況では、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある人の重症化をいかに守るのかが重要になってきますし、これからは新規感染者数よりも重症者数や死亡者数により注目していく必要があります。

今のところは増えていないとは言え、重症者や死亡者は新規感染者数の増加から少し遅れて増加してくると考えられます。

第6波ではデルタ株と比較して重症化しにくいと言われていたオミクロン株が主流でしたが、結果として過去最多の死亡者が出てしまいました。

第6波のときと比較すると、高齢者や基礎疾患のある人のうち3回目のワクチン接種を完了した人が増加していることから、重症化する人は減ることが期待されますが、一方ですでに3回目接種から時間が経過している人では重症化予防効果も減衰していることが懸念されます。

さらには、現在拡大しているオミクロン株BA.5の重症度についてはまだ十分に分かっていないことから、今後の重症者数・死亡者数の推移については注意深く見ていく必要があります。

夏休みの旅行・お盆の帰省での感染対策の考え方

この週末は3連休ですし、7月下旬からは夏休みシーズンに突入します。

またお盆の時期に帰省を考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

現在は第7波の入り口にあり、これからさらに感染者が増加しているタイミングですので、感染対策にも配慮が必要です。

夏休みを楽しく過ごすためにも、必要な感染対策はしっかりと行うようにしましょう。

帰省の前に、お互いにワクチン接種歴の確認を

提供:イメージマート

特に帰省先に高齢の方がいらっしゃる場合は、帰省前にワクチン接種について確認しておきましょう。

現在は、

60歳以上または基礎疾患のある人:4回

12歳以上で上記以外の人:3回

5歳〜11歳の人:2回

のワクチン接種が可能です。

ワクチン接種による感染予防効果が低下しているオミクロン株が広がっている現在も、重症化リスクは大きく下げることができます。

ワクチン接種をしていれば、万が一感染してしまったときも軽く済む可能性が高くなります。

移動そのものの感染リスクは高くない

(提供:イメージマート)
(提供:イメージマート)

新型コロナの流行初期から、旅行は感染症の拡大につながりやすいと言われていますが、移動すること自体の感染リスクは高くありません。

では、なぜ旅行で新型コロナの感染リスクが懸念されるのかというと、移動そのものよりも移動先での活動内容(会食、マスクを外しての会話など)が感染リスクに繋がり得るためです。

ですので、現在の状況においては、旅行すること自体は妨げられるものではないでしょう。

移動中の行動内容に過度に気をつかうよりも、帰省先での感染対策を徹底することの方が重要です。

もちろん飛行機や新幹線は屋内になりますので、移動中はマスクを装着し、食事をする場合も黙食やマスク会食を心がけましょう。

旅行先で注意すべきことは?

前述の通り、帰省の際に注意すべきポイントは移動そのものよりも帰省先での行動です。

特に大勢の人が集まるイベント、例えば中学・高校の同級生との飲み会などは感染リスクが高いと言えます。

特に今のように感染拡大が懸念される時期での会食は、

・なるべく少ない人数で

・マスクを外す時間を少なく

・あまり長時間にならないように

・大声を出さない

といった点に注意しましょう。

屋内でのマスク着用やこまめな手洗いといった基本的な感染対策も引き続きしっかりと行っていきましょう。なお現在広がろうとしているオミクロン株の亜系統BA.5は、過去に新型コロナに感染したことがある人も感染することがあります。「もう罹ったから大丈夫」とは思わずに、しっかりと感染対策をしましょう!

一方で、屋外で人との距離が確保できている状況ではマスク着用は不要であり、これは感染者が増えたとしても変わりません。

新型コロナの流行から3回目の夏を迎えました。

必要性の低いことは省略し、やるべき対策をしっかりと続けるメリハリをつけた感染対策を続けていきましょう!

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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