Yahoo!ニュース

なぜバルサはニコ・ウィリアムスを狙っているのか?ヤマルとの共存の可能性…ハンジ・フリックの目論見。

森田泰史スポーツライター
スペイン代表で活躍したヤマルとニコ(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

新たなシーズンが、幕を開ける。

昨季、無冠に終わったバルセロナだが、この夏に監督交代を行った。シャビ・エルナンデス前監督に代わり、ハンジ・フリック新監督が就任。2024−25シーズン、タイトル奪取を目指して、一丸となる。

■補強の必要性

タイトルを獲るためには、補強をする必要がある。

今夏、バルセロナが狙っている選手の一人が、ニコ・ウィリアムスだ。アトレティック・クルブでプレーするニコ・ウィリアムスは、6月から7月にかけて開催されたEURO2024で、スペイン代表の優勝に大きく貢献。左サイドで切れ味鋭いドリブルを見せ、スペインの攻撃にアクセントをつけていた。

EUROを見ていてもドリブラーの希少価値は高かった。ジャマル・ムシアラ(バイエルン・ミュンヘン/ドイツ代表)、フィル・フォーデン(マンチェスター・シティ/イングランド代表)、ウスマン・デンベレ(パリ・サンジェルマン/フランス代表)…。チームのアタックに推進力をもたらす存在に、ビッグクラブが触手を伸ばすのは、自然な流れだ。

アトレティックでプレーするニコ
アトレティックでプレーするニコ写真:なかしまだいすけ/アフロ

ただ、ニコに関してバルセロナに競争相手がいないわけではない。パリ・サンジェルマンが、虎視淡々とチャンスをうかがっている。

ニコ・ウィリアムスの契約解除金は5800万ユーロ(約96億円)に設定されている。ネイマール(契約解除金2億2200万ユーロ/約366億円)、キリアン・エムバペ(移籍金1億8000万ユーロ/約297億円)を獲得した過去があるパリSGにとっては、語弊を恐れずに言えば、“はした金”だろう。

パリSGは、この夏にエムバペがレアル・マドリーに移籍した。ランダル・コロ・ムアニ、ブラッドリー・バルコラ、マルコ・アセンシオ、ゴンサロ・ラモス、デンベレというアタッカーが揃っているが、エムバペの抜けた穴は大きい。クラブは前線の補強を考えている。

パリSGが獲得を検討しているのがニコ、ジェイドン・サンチョ(マンチェスター・ユナイテッド)、ラファエル・レオン(ミラン)だと言われている。そのなかで、最も“安価”で獲得できそうなのが、ニコなのだ。

■ヤマルとの共存 左サイドのウィンガー

一方、バルセロナは純粋なウィンガーを欲している。

2023−24シーズン、バルセロナは左ウィングの人選に苦しんでいた。2023年夏の移籍市場で、デンベレがパリSGに移籍。シャビ前監督は、ガビを左サイドに押し出して“偽WG”で起用するのを好んだが、そのガビもひざを負傷して長期離脱を強いられた。

ラフィーニャ、ジョアン・フェリックス、フェラン・トーレスが、シャビ前監督によって、左ウィングで試された。だが最後までピースは嵌まらず、指揮官は実質的に解任されるという憂き目に遭った。

ドリブルするヤマル
ドリブルするヤマル写真:なかしまだいすけ/アフロ

バルセロナの右サイドには、ラミン・ヤマルがいる。昨季、バルセロナと2026年夏までの契約延長を行い、契約解除金が10億ユーロ(約1650億円)に設定された17歳のアタッカーは、その才能をEUROで欧州中に見せ付けた。

ヤマルとニコ・ウィリアムスが、スペイン代表で“共存”したのは12試合だ。その間、ヤマルは2得点8アシスト、ニコは3得点5アシスト。2人で18ゴールに絡んでいる。

また、ヤマルとニコは、ピッチ外でも仲が良い。スペイン代表の合宿や遠征では、同部屋。この夏のバケーションの期間においても、スペインの南部、マルベージャで一緒に食事を摂っている姿が目撃されている。2人の良好な関係が、移籍の助力になる可能性はある。

バルセロナを率いるハンジ・フリック監督
バルセロナを率いるハンジ・フリック監督写真:代表撮影/ロイター/アフロ

「すべてのポジションが重要だ。(ニコについては)バルセロナの選手ではない。私は自分のチームに集中している。なので、私から言うことは何もない」とはハンジ・フリック監督の弁だ。

「最初の日から(スポーツディレクターの)デコとは良いコミュニケーションが取れている。私はピッチ内のことにフォーカスしている。それ以外のところは、彼に任せているんだ」

王座奪還に挑むバルセロナ
王座奪還に挑むバルセロナ写真:なかしまだいすけ/アフロ

バルセロナは、24−25シーズン、王座を奪還しなければならない。

ディフェンディングチャンピオンのレアル・マドリーは、エムバペとエンドリックの獲得を決めて、純粋に“増強”している。ニコ・ウィリアムスがバルセロナに移籍した場合、戦力アップになるのは間違いない。問題は、そのための決定打を、バルセロナが準備できるかどうかだ。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事