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尹大統領「韓国は何したらいい?」 訪韓中のチャットGPT代表の答えとは?

6月5日のテルアビブ訪問時のアルトマン氏(写真:ロイター/アフロ)

きょう、チャットGTPの開発を手掛けたOpen AIのCEOサム・アルトマン氏が来日する。チャットGPT4を公開後、日本を訪れるのは今年4月10日に岸田文雄首相らに面会して以来、2度目だ。

今回、東京を訪れる前に訪れた地はソウルだった。10日には尹錫悦大統領とも面会。現地メディアでは「チャットGPT4の公開から半年も経たないうちに各国の首脳と顔を合わせる存在になった」とも表現されるなか、こんなやりとりがあった。

尹大統領: 世界中で「チャットGPT」のブームが起きていますね。試しに(今年)新年の挨拶を作成するためにチャットGPTに質問を投げかけてみましたが、かなりリアルな結果が返ってきました。

アルトマンCEO: 韓国は世界で最も多くの国でチャットGPTを活用している国の一つであり、チャットGPTの発展が可能な技術基盤を持っています。

尹大統領: 技術の進歩が速すぎるため、チャットGPTに関連する副作用を防止するためにも国際的な規範を迅速に整備する必要があります。

アルトマンCEO: 社会内でのリスクを減らし、個人の利益を保証するためにも規範整備は重要です。韓国がリーダーシップを発揮してくれることを願っています。

尹大統領: 韓国はどの分野に集中すればよいと思いますか?

アルトマンCEO: 半導体の分野が良いでしょう。AIの時代には非メモリ半導体も必要ですが、膨大なデータ量のためにメモリ半導体の需要も大幅に増えるでしょう。台湾が半導体供給を続けても需要に対応するためには韓国の半導体が必要であり、そのために他の国々も韓国との協力を切望しています。

現地メディア「イーデイリー」は、時の人アルトマン氏の「来韓目的」についてこんな考察を行った。

各国を訪問する際、Altman代表も何かを得る必要があるはずだ。おそらく韓国では'半導体'がその一つだろう。(10日に行われた)午前中の中小ベンチャー企業部との座談会でも、午後の尹大統領との面談でも、Altman代表は半導体やチップの話を強調した。

Altman代表は韓国のスタートアップに投資する計画があり、また韓国のスタートアップを米国に招待したいと述べた。特にチップ分野のスタートアップに対する関心を示した。

また、尹大統領に対しては、「韓国の半導体が必要だ」と述べ、「AIを活性化するためにはシステム半導体の生産を増やすべきだ」と助言した。AI開発の鍵は半導体。AI開発が「資源の戦争」と評されるのも、この半導体の価格が一因であるからだ。

アルトマン代表は「韓国の企業を訪問し、チップの開発を共同で行いたい」と述べていた。韓国企業中小ベンチャー企業部によれば、OpenAI側が半導体関連スタートアップの紹介を依頼してきたとのこと。果たして、国内のスタートアップ業界からOpenAIの投資や提携のニュースがすぐに聞こえてくることになるのだろうか。

韓国では当然のごとく、チャットGPTをはじめとする生成AIは大きな話題となっている。筆者は5月下旬をソウルで過ごしたが、現地で「ひとり出版社をやろうとしている人」に出会った。本文、タイトルはもちろん、カバーデザインも生成AIでやれる。そういった発想からだ。今後、韓国にはこの分野に資本が投入され、技術や活用法が速いスピードで発展するような状況が起きるだろうか。それも半導体を起爆剤として。

ただ、韓国でもその状況を生み出すためには「課題あり」とも見られている。「韓国経済」紙は12日の朝刊で「韓国がAI革新のリーダーになるための条件」という社説を掲載。その点を指摘している。

韓国が世界のAI市場をリードする国になるためには、多くの課題がある。最も緊急な課題はAI人材の育成だ。アメリカ連邦政府はMITのAI大学院設立に約1兆ウォンを投資した。中国は将来的に500万人のAI専門家を育成するプロジェクトを進行中だ。韓国では最近、各大学にAI関連の学科が増え、志願者も集まっているが、適切に教える教授や施設などが極めて不足していると言われている。

(中略)政府は積極的にこれを支援する政策を策定し、イノベーションを阻む規制は大胆に排除する必要がある。(中略)アルトマンCEOは、韓国の大企業やディープテック(基盤技術)スタートアップとの協力を望んでいる。韓国企業も技術獲得のために海外の企業、研究所、大学などと積極的に協力し、投資に取り組む必要がある。(中略)激しい米中の技術覇権戦争の中で、韓国の貿易収支は15か月連続でマイナスを記録するなど、内外の経済環境は非常に厳しい。このような時期に訪れたAI革命を危機を乗り越え、国家競争力をさらに高める機会とすべきだ。

アルトマン氏は自らのツイッターで明らかにした「17都市を巡る」というツアーを実施中。ソウルの次は東京を訪れるとされており、12日には慶応大学で学生たちとのイベントも予定されている。はたして日本の地では何を語るだろうか。

<参考>アルトマン氏がツアーを行う「17都市」

トロント(カナダ)、ワシントンDC(アメリカ)、リオデジャネイロ(ブラジル)、ラゴス(ナイジェリア)、マドリード(スペイン)、ブリュッセル(ベルギー)、ミュンヘン(ドイツ)、ロンドン(イギリス)、パリ(フランス)、テルアビブ(イスラエル)、ドバイ(アラブ首長国連邦)、ニューデリー(インド)、シンガポール、ジャカルタ(インドネシア)、ソウル(韓国)、東京(日本)、メルボルン(オーストラリア)

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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