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ノート(170) 刑務所における地獄(?)の行動訓練とは

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

~教育編(8)

受刑55/384日目

地獄の行動訓練

 週明けの月曜であるこの日は、2週間にわたる新入教育の最終日だった。この間、処遇部や総務部、医務部の幹部による講義が行われたが、その合間を縫って、3回にわたり、警備隊長が直々で指導する行動訓練もあった。

 これは、本来、新入工場に配役された受刑者らが集団生活の中で衣食住や運動、入浴、簡単な刑務作業などを共に行い、刑務所における「しきたり」を身体に覚えさせようというものだ。

 そのハイライトは、職員の号令一下、両手を大きく振り、太ももを水平になるまで上げ、「イチ、ニ、イチ、ニ」と声を張り上げて行う軍隊式の行進や、一糸乱れぬ一時停止、その場での足踏み、転回、直立不動での点呼、バラバラの状態からの整列などだ。

 受刑者の年齢や基礎体力などを問わず、全員の動きや掛け声が完全に一致するまで何度も繰り返し行われることから、受刑者は汗ダラダラでフラフラとなり、吐き出す者まで出る始末だし、ようやく舎房に戻っても疲れ切り、翌日以降も筋肉痛に苦しむことになる。

 警備隊の若い職員からも平然と怒鳴り上げられるし、1人のミスが全体の責任になるとか、職員への絶対服従を強いられるといった基本ルールを叩き込まれ、肉体をいじめ抜く形で刑務所がどのようなところかを徹底的に教え込まれるわけだ。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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