PS5の高額転売「終幕」は「時間の問題」 本当は気の毒な転売ヤー
発売から3カ月が経過したソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」。同機の買い取りが、希望小売価格以上で推移していますが、ここ数日価格が乱高下しました。その理由と、実は「転売ヤー」は踊らされていてお気の毒……という話について考えます。
PS5を「高額転売」する手段は、フリマアプリ、オークションサイト、中古ゲーム店などでしょう。心無い人は、PS5の販売抽選に参加して、手に入れるとそのまま売ってしまえば、(今であれば)数万円の利益が手に入るわけです。目の前に美味しいエサがあれば、簡単に飛びつくのは、ある意味本能なのかもしれません。
人気商品を買い占める転売ビジネスを「違法でない」と擁護する声もありますが、独自のサービスを提供することもなく、ただ「中抜き」をしているにすぎません。感謝されないサービスであり、違法でないとはいえ問題があると言わざるを得ません。
◇“転売相場”のピークは年末だった
さてPS5の“転売相場”を3カ月観察して、価格データを取っていくと興味深いことがあります。PS5の急激な出荷増を恐れている……ということですね。PS5の価格が乱高下したのは(1)11月の発売直後(2)1月上旬の家電量販店のゲリラ販売(3)そして2月8日の中国のPS5発売時期の発表……でした。
PS5の買い取りをするビジネスは、価格下落について、可能性のレベルでも敏感に反応しているようです。その中には、買い取ったPS5を中国に出荷し、高値で売るルートもあるからでしょう。予想通り中国でPS5の発売時期が2021年4~6月になることが明らかになった瞬間、PS5の“転売相場”が大きく下がりました。
【参考】PS5は今年の4~6月に発売(以下記事は中国語です)
面白いのは、価格は下落したものの、PS5の買い取り価格が(ある程度)元に戻ったことです。要するに、リスクを考えてまずは買い取り価格をすぐに下げて、その後の状況を見て、「まだ高値で買い取れる」と価格を調整していることですね。
なお“転売相場”の流れとしては、PS5の発売から11月末まで価格がやや不安定でした。ですが12月に入り、PS5の出荷数が増えないままクリスマスと年末商戦を迎え、価格が右肩上がりになりました。長期休暇に入るので「少々高くても欲しい」という、経済的に余裕のある人がいたからでしょう。10万円前後になったこの時期がピークで、実はその後は下落する流れになっています。
1月に入り、家電量販店でPS5がゲリラ販売される記事が出てから、再び“転売相場”が乱高下します。普通は数千円の単位で動くのですが、1月上旬はいきなり1~2万円の価格変動がありました。「店頭で販売できるレベルの出荷数が出たのか」と予想して慌てたことがうかがえます。
それも1週間程度で落ち着き、以後は7~8万円で推移。そして2月8日に中国でのPS5の発売時期が明かされると、再び価格が乱高下したのですね。PS5の中国向けの発売が始まると、日本から中国に持ち込んで高く売る転売ビジネスは厳しくなりますから、これで「デッドライン」ができたわけです。
◇“転売相場”の暴落は「時間の問題」
そもそもPS5はインドでも今月に発売されるなど、流れ的にはアジア地域への出荷増の流れにあります。「先に日本に回せ」との声も聞こえそうですが、転売ヤーをつぶしたいのは当のソニーですし、アジアの出荷数増加は日本への供給増のサインとも取れます。ただ日本市場が落ち着くのを待っていては、ビジネス的には遅くなるので動いているわけで、「アジアにも出すということは、日本へ供給増の手を打った」と考えるのがごく普通のビジネス視点です。出荷数が実際に増えてからなら誰でもが分かることで、そう予測できるかでしょう。
また販売店も苦労しながらも転売ヤーを除外するノウハウを蓄積していますから、転売ヤーにはますます厳しい条件がそろいつつあります。PS5を入手できないユーザーのイライラもあるでしょうが、“転売相場”の暴落は、PS5の週の出荷が一定数増えた瞬間に雪崩のように起きることが予想されるわけで、もう「時間の問題」です。
予想はもちろん絶対でありませんが、取材を重ねて、そういう可能性が極めて高いのです。予想というリスクを取ったのは、二つの理由があります。一つはPS5の高額転売に手を出さず我慢したゲームファンに「もう少しの辛抱です」とお伝えするため。もう一つは「転売に手を染めるのは、もうやめた方がいい」ということです。特に後者は、転売で痛い目にあってからでも良いのですが……。個人的な見立てを言えば、今月中に変化があっても不思議ではないのです。
◇高額転売で真に利益を得たのは転売ヤーではない
それにしてもお気の毒なのは、PS5の転売に熱を上げていて、今後の価格暴落で赤字を抱える人たちですよね(全然同情しませんが)。ある程度社会が分かるなら、人気商品に目をつけて高値で売りつけるという、こんな不確定で、人前で誇れず、喜ばれず、世の中に貢献できないビジネスには手を出さないですよね。
そして、PS5の“転売相場”が暴落しても、フリマアプリなどの転売ビジネスの仕組みを助けるサービスは、手数料で収益を稼げる構図になっており、リスクは転売ヤーが背負っているわけです。ビジネスは厳しい弱肉強食の世界だと思う次第です。