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「親だから」「この家の子どもだから」は通用しない実家の片づけは何から始めるか

藤原友子小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

私は片づけを通じ、誰かのマネをするのではなく「自分らしい暮らしを選べる人」を増やす活動を始めて9年目。小中高の4人の子どもを育てる親です。

私の母は70代半ば、少し姿勢が悪くなってきたものの、まだ仕事をしていて、このままずっと元気でいてくれるのではないかと思うこともあります。

しかし、親は確実に年を重ね、これまでのようにモノの管理や家事がスムーズにできなくなります。そうなると気になるのが、実家のこと。

できれば実家の片づけは親が元気にうちにはじめたい、と気にはなっていても、最近のコロナ禍で思うように実家に帰ることもできず、何も進んでいない人もいるのではないでしょうか。

そこで今日は、実家の片づけの始め方とそのポイントについてです。

たとえ親であっても別の人間である

高度経済成長期やバブル期などを経た世代は、所有しているモノが圧倒的に多いです。

そして以前なら同居している子世代が日頃から片づけることができていたモノも、核家族化が進み、親子はは離れて暮らすようになり、実家で暮らす人の数は減ったはずなのに、減るどころか気が付いたらモノが増えていたというようなことはないでしょうか。

そこで、初めて「いい加減に片づけてもらわなくては」と思うのですが、ここに大きな落とし穴があります。

たとえ親であれ、自分とは違う別の人間であるということを忘れてはいけません。

そして実家は、自分の家ではなく、親の家であることも忘れてはいけません。

何とかして片づけてもらわないととか、終活を始めてもらおうと、親の行動を変えようとするのは難しいのです。

これまで高度成長期やバブル期を生きてきた親世代は、家、車だけでなく、モノを所有することが豊かさと喜びの証でした。

いくら片づけたら快適になると説得しても、片づけ=捨てると思っているようであれば、所有することが喜びを感じる世代は、一度手に入れたモノを手放すことは、大きな不安を感じます。

また、片づけるということは「変化」です。親世代は、不便なことを多少は感じつつも、長年積み重ねてきた生活習慣があり、散らかった部屋、ため込んだモノも風景化しています。

捨てるかどうかを考えるという普段なかなかしないことをしたり、モノが減り、モノが移動し、新しい収納道具に変わるということは、子世代にしてみたら、快適に感じる前向きな変化かもしれませんが、親世代にとってはその変化を不安に感じたり、億劫に感じる人も多いのです。

そこで、今日は始めやすい3つのことについて紹介します。

はじめ方その1、自分が実家を物置にしていないか?

実家の片づけとなると、気になるのがリビングやキッチンに溢れたモノかもしれません。でも、忘れがちなのが、子どもである自分が実家に残してきたモノが実家を占領していないかということ。

写真や卒業アルバム程度なら実家に置いたままでもよいですが、昔着ていた服、捨てようか悩んで決断できずにいたモノ、引っ越し先に入らなかったからとりあえず実家に置いたモノなど親が要不要を判断できないモノに関しては、「お母さん、片づけたら」と言う前に、まず自分がどうするか考えないといけません。

60代や70代の方と話していたら、

「子どもが残したモノをどうにかしたいけど、勝手に判断できないから困っている」

「捨てないでと言われているけど、あまりにも量が多すぎて邪魔になっている」

「子どものモノを片づけて、自分の趣味の部屋として使いたいのにそれができない」

という声を聞きました。

家は家族のライフステージの変化により、使い方が変わっていくものです。

いくら子どもの頃の思い出が詰まった家であっても、今の実家は親が生活をするところ。親にこれからの人生をもっと楽しんでほしいと思うのであれば、自分のモノが邪魔になっていないか、確認する必要がありそうです。

実際に実家に帰り、自分の置いてきたモノを見て、どうするか考え行動するのが一番ですが、それができないのであれば、不要とわかっているモノだけでも親に伝えることができればよいでしょう。

はじめ方その2、親にとって危険な場所・モノから

親と離れて暮らしていると、地震、台風などの自然災害、そして家の中での転倒などによるケガなど心配なことがたくさんあります。

親が家の中で、つまずかないように、バリアフリーにしたり、てすりを付けるなどの対策を講じていても、それだけで安心とは全く言えません。

床にモノが落ちていれば、つまずく原因にもなるし、高いところにモノが積まれていたら落ちてくる危険もあります。

ある日、私が義母を訪ねたら、ちょうどこたつ布団をしまっているところでした。

様子を見ていると、1階のリビングで使うこたつの布団なのに、こたつ布団を2階へしまおうとしているようです。

大きな布団を2階まで、階段を使って持っていくなんて危険なことです。1階で使うモノは1階に収納するのが一番です。そんな危険なことに気づいたら声をかけるチャンスです。

「2階へ持って上がるなんて、それはお母さんが大変だよ、1階のリビングの押入れを片づけたら、きっとこたつ布団が入るよ。一緒に1階の押し入れを見てみようよ」

と声をかけてみたところ、1階の押し入れに入っているモノを一緒に見直すことができました。

また以前、地震のニュースを見た義母から「食器棚が倒れないようにするためには、どうすればいいか?」と質問をされたことがあります。

もちろん、様々な対策方法を伝えたうえで、

まずは食器棚の上に置かれた明らかに何年も使っていないモノや食器棚の中身を見直した方がいい。そうすれば、古い大きな食器棚を不安を感じながら使い続けるのではなく、背の低い引き出し式の食器棚に変えることもできるかも。
そうしたら、食器も出し入れしやすいよ。

と伝えました。

説得して片づける!というのは大変ですが、地震などの自然災害が話題になったタイミングで、

「地震の時にモノが落ちてきたら危ないから」「つまずいたら危ないから」「これじゃあ非常用持ち出し袋が取り出せないから」と言うように、親の安全を守るために改善が必要だと説明すると、やりやすくなるかもしれません。

はじめ方その3、親が好きなモノ・好きなコト

義母とこたつ布団をしまうために、1階の押し入れを片づけようとしたとき、1階の押し入れには、たくさんの洋服が収納されていて、こたつ布団を収納するスペースはありませんでした。

もう着ていない洋服は捨てよう、という声かけでは、嫌な顔をするでしょう。いかにも片づけ、終活になってしまいます。

そこで、親の片づけは、その人の好きなモノを選び残したり、もっと使いやすくしたり、大切にすることを提案するのが効果的です。

義母は、友達も多く、外に出かけるのが大好きなので、

これからお友達とお出かけするときに、着ていきたい服だけにしてみる?そうしたら、押し入れは少しスッキリして、こたつ布団もはいるよ。

そう声をかけ、要不要の判断に迷ったら試着したり、おいしかったお店の話、今度友達と見に行きたいお花の話をしながら、どんな服を着ていきたいか選んでいくと、義母の好みや似合う服がだんだんわかってきました。

そういえば、お母さんはテロテロの肌滑りのよい生地で、淡い色で、優しい柄の服が好きみたいね。

義母は、そのことに気づくと、一気に残す洋服を選び、サイズがぴったりで好きな洋服だけが残り、ついでにため込んだハンガーも処分しました。もちろん押し入れにはこたつ布団を入れるスペースも確保できました。

好きなモノが残る喜びを感じることができると、片づけのモチベーションも続きます。

片づけをして欲しい子世代は、モノを捨てること、キレイにすることについつい目が行ってしまいますが、片づけは、好きなモノや好きなコトを大切にすることです。

親とは普段なかなかゆっくり話す時間は取れないと思いますが、実家の片づけは、親の好きなモノやコトを通じ、今の親の生活の様子について知る機会として考えてはいかがでしょうか。

実家の片づけに「親だから」「この家の子どもだから」は通用しない

最後に、80代のお母様と、50代の娘さんのお話をさせてください。

50代の娘さんから、親子だとついガミガミ言ってしまうとのことなので、私が片づけのお手伝いさせていただきました。

お母様はフラダンスの愛好家、家には衣装や髪飾りなどが山ほどあり、オフシーズンの洋服とぐちゃぐちゃになっています。もうフラダンスを踊ることはないかもしれません。しかし、お母様にとってはフラダンスの衣装は宝物であり希望。

つい子どもだと、もう着ないフラダンスの衣装は邪魔だから、もう踊れないから捨てるとか、他の部屋に移動しようかと言いたくなってしまいますが、

大切な衣装がホコリをかぶったら困るから、まとめて奥にしまいましょう。そして、普段着る服をもう少し出し入れしやすいよう、ハンガーにかけたいから、普段過ごすときに着たい服を教えてください。

と声掛けし、納得していただき作業を行いました。

親子なら片づけをめぐりケンカになることもあるでしょうが、他人が介入することで、うまくいくこともあります。

だからと言って、いつも片づけを人に頼むことはできません。

今すぐ片づけてほしい、という気持ちもわかりますが、「親だから」「この家の子どもだから」という理由だけでむやみに片づけても、うまくいくことはないでしょう。

だったら、たとえ親子であっても、他人であることを意識し、親の好きなコト、興味のあるコト、大切にしているモノなどを知ろうとすることで、新たな親子のコミュニケーションにもなるかもしれません。

知っているようで知らないのが、親の好きなモノ・コト、そして生活の様子。 離れて暮らしてればなおさらです。

何を手にして、どう活用して生きてきたかは、その人の人生そのものであります。

親に片づけてほしいのであれば、まずは大切にするのは実家は親の家であるという考えと、自分(子)のモノは置かないようにし、親の安全を最優先し、好きなモノ・コト、大切にしているモノに注目するということ。

それが、子どもとしてできる親孝行なのかもしれません。

                           選ぶ暮らしラボ 藤原友子                     

小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

片づけのプロとして活動を始めたのに、自分の家は「片づけても、また散らかってしまう」という矛盾に悩む。家が散らかってしまうことを隠そうとしていたが、「いつもキレイじゃなくてもいい。何かあったときにすぐに片づく家にしておけばいい」と開き直り新たなメソッドを確立。 いつもキレイにしなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない、そんなプレッシャーから解放され、もっと自由に、その人らしく生きるお手伝いを「片づけ」を通して行っている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』(マガジンランド)

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