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「おっさんずラブ」映画化発表でOL民はどれだけ盛り上がったか

境治コピーライター/メディアコンサルタント
角川アスキー総研・エンタメツイート分析データより

「おっさんずラブ」映画化にファン沸騰

今年4月クールにテレビ朝日土曜深夜枠で放送されたドラマ「おっさんずラブ」。おっさんの純愛を描いて話題になり、そのピュアで美しい世界観がコアなファンを生んだ。OL民(おっさんのO、ラブのL)と自らを呼ぶファンたちがTwitterで熱い想いを語り合いながら、マイナーな放送枠のこのドラマを心から愛した。最終回ではTwitterで大盛り上がりとなり世界トレンド1位を獲得している。

筆者はこの現象を追ってここYahoo!ニュースでいくつか記事を書いている。

「「おっさんずラブ」ツイート数「逃げ恥」を抜いて大記録!番組への愛がネットを駆け巡る」

「「おっさんずラブ」のツイート数爆発は「愛」としか言いようがない」

昨日12月7日、その「おっさんずラブ」の映画化が発表された。私にも事前リリースが届いており、7日朝5時に情報解禁とあった。当然ながら様々なメディアが朝5時になると同時に映画化を伝える記事を配信。私の興味は、それを受けてOL民がどれくらいTwitterで盛り上がるかだった。

そこで角川アスキー総研にお願いして「おっさんずラブ」ツイートが発表の前後でどう変化したか、データを収集してもらった。同総研はツイートの中の映画やドラマ・音楽・小説などについての「エンタメツイート」を特に抽出しての分析で実績を持つ。「カメラを止めるな!」の分析でもお世話になっている。

→「『カメラを止めるな!』の感染経路をTwitter分析で追ってみた」

その結果が上のグラフだ。午前5時の情報解禁と同時にツイートが沸騰し午前7時にはピークを迎えた。その後もすっと落ちてしまわずに、いわゆる”熱気冷めやらぬ”状態でツイートし続けている。

まず私が驚いたのが、沸騰の速さだ。朝5時解禁で少しずつ情報が拡散し、通勤時に拡散していって12時のお昼休みにピークを迎える。そんな推移を想像していたのだが、それよりずっと速かった。OL民は自らそう呼び合い互いの情報交換を密にしている。また互いにOL民だと認識するとすごい勢いで言葉を交わし合い”仲間”意識を育てている。だから映画化情報を発見したら狂喜しつつ、その喜びを共有しようと積極的に拡散したのだろう。通勤時にはほとんどのOL民が情報を認識できたに違いない。

私も、前に記事を書いた時に知り合ったOL民のTwitterアカウントと映画化について言葉を交しあった。その時に、拓郎さんというアカウントがこんなツイートをしてくれた。

「変な声が出てスマホを落とし」たのだそうだ。「変な声が出た」という表現が面白いと思った。そして「スマホを落とす」のだ。昨日の朝は、これに近い喜びの悲鳴が日本中を駆け巡ったのだろう。

放送後もくすぶり続けた熱が再燃

「おっさんずラブ」は6月の放送後もTwitterで熱がくすぶり続けていた。9月からは「おっさんずラブ展」が開催され大阪と名古屋でも展開された。10月にはDVDが発売され動画サービスでの配信もはじまった。ファンブックやシナリオブックも販売され出版不況にも関わらず売れている。この物語を愛でて語り続けたいファンの声に呼応する形で語る題材をテレビ局側も提供してきた。

テレビ情報誌「ザテレビジョン」はWEB上でテレビ番組についてのツイート数を表示している。「おっさんずラブ」は放送中のドラマに混じっていつもベスト10圏内に留まり続けた。映画化発表前の12月6日も7位にランクインしていた。それが昨日はぶっちぎりの1位になっていた。放送中のドラマを抜く沸騰ぶりで、映画化情報がどれだけOL民の熱を急上昇させたかがはっきりわかる。

「ザテレビジョン」視聴熱ランキングより筆者作成
「ザテレビジョン」視聴熱ランキングより筆者作成

そしてそんな熱が伝わりOL民は増殖し続けている。先の拓郎さんのツイートにも出てきたパプリカさんは、実は動画サービスでの配信で「おっさんずラブ」を見てOL民化したのだ。

「おっさんずラブ現象」に興味のある方は、ここにあるパプリカさんが書いたnoteも読んでみるといいと思う。「クラスター」がどうやって生まれるのか、Twitterを通じてOL民がコミュニティを作るプロセスがよくわかる。ファン同士の心が通じ合い「おっさんずラブ」というコンテンツのブランドが形成されている。ブランドとは結局、それを使うユーザーとの関係で形成されるとよく言われるが、その好例だと思う。

「おっさんずラブ」は来年夏の公開だという。それまでにOL民がさらにどう膨らんでいき盛り上がるのか、注目していきたい。

コピーライター/メディアコンサルタント

1962年福岡市生まれ。東京大学卒業後、広告会社I&Sに入社しコピーライターになり、93年からフリーランスとして活動。その後、映像制作会社ロボット、ビデオプロモーションに勤務したのち、2013年から再びフリーランスとなり、メディアコンサルタントとして活動中。有料マガジン「テレビとネットの横断業界誌 MediaBorder」発行。著書「拡張するテレビ-広告と動画とコンテンツビジネスの未来」宣伝会議社刊 「爆発的ヒットは”想い”から生まれる」大和書房刊 新著「嫌われモノの広告は再生するか」イーストプレス刊 TVメタデータを作成する株式会社エム・データ顧問研究員

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