Yahoo!ニュース

宇野昌磨、8年間の歩みが詰まった『See you again』年齢を重ね「違った表現ができる」

沢田聡子ライター
プリンスアイスワールド提供

「プリンスアイスワールド2024-2025 『A NEW PROGRESS ~BROADWAY ROCKS!~』横浜公演」(4月27~29日、5月3~5日 KOSÉ新横浜スケートセンター)初日、宇野昌磨が披露したのは『See you again』だった。

ショーが最後に近づくタイミングで、宇野は黒いシャツとグレーのデニムを着て登場。映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』サウンドトラックの曲である『See you again』は、撮影期間中に事故死した出演俳優を悼む抒情的な曲だ。宇野は男声ボーカルに合わせて力強く伸びやかなスケーティングを披露し、4回転トウループにも挑む。ラップ・パートでは体でリズムを刻み、クリムキンイーグルもたっぷりとみせた。

公演後の囲み取材で、宇野は「この演目は、とても昔に作ったプログラムで」と説明した。

「すごく、曲も好きで。小さい時はエキシビションナンバーを作ることがレアなケースなので、張り切って作った思い出がありまして。そういう感傷にも浸りながら、思い出深いナンバーになっていますし。また今26歳なんですけれども、大分年齢を重ねた上で『また違った表現ができるんじゃないかな』という思いを込めて、今回も滑らせていただきました」

2016年7月に行われたプリンスアイスワールド東京公演で、当時18歳の宇野は『See you again』を滑っている。大人っぽく、シックなプログラムへの挑戦という印象だった。宇野は公演後、自身の公式サイトに寄せたメッセージでファンへの感謝を述べていた。

「今回も皆さんの温かい声援、ふれあいタイムでの皆さんの応援をいつも以上に近いところで感じ、とても楽しく充実した時間でした。ありがとうございます」

その数か月前となる2016年3月に行われた世界選手権で、ショート4位につけながらフリーで失速し総合7位に終わった宇野は、キスアンドクライで涙した。しかしその悔しさを起爆剤に、同年4月のISU公認大会で、史上初めて4回転フリップを成功させている。

宇野は、その後順調に世界トップクラスへと駆けあがっていく。2017年世界選手権で銀メダルを獲得、2018年平昌五輪でも銀メダルをとって表彰台に上がる。その平昌五輪のエキシビションで滑ったのも、『See you again』だった。

長年第一線で戦い、世界選手権連覇も果たした宇野だが、オフアイスで貫く自然体は変わっていない。ただ近年はリンクに立った瞬間、風格が漂うようになった。2024年の『See you again』には、貫禄と余裕、そして表現に全力を注ぐ姿勢がにじみ出ていた。

今公演後の囲み取材で、宇野はプリンスアイスワールドに対する思いを語っている。

「僕も本当に長くこのプリンスアイスワールドに出演をさせていただいて、毎年楽しんでやっています。出るキャストの皆さん、スケーターの皆さんと年々近づいて仲良くなれている感じがします。またこのプリンスアイスワールドというアイスショーが、すごく観ていても楽しくなるもの、そして僕達にとってもすごく楽しく滑ることができて。僕はゲストという立場ではありますけれども、キャストの皆さんが素晴らしいショーを作り上げていて、僕も会場の皆さん全員と一緒に楽しむことができています」

『See you again』には、8年間の宇野の歩みが詰まっている。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

沢田聡子の最近の記事