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THE ICEが初の東京公演 La La arena TOKYO-BAYが夏祭りのような熱い空間に

沢田聡子ライター
(c)THE ICE 2024

La La arena TOKYO-BAYに、夏祭りのような熱い空間が広がった。

例年愛知を中心に公演を行ってきた“真夏の氷上祭典”THE ICEが、今年は東京で初めて公演を行う。会場は、今年4月に竣工したばかりのLa La arena TOKYO-BAY。洗練された空間に、東京にやってきたTHE ICEへの期待が満ちていた。

オープニングを飾ったのは、国際的に活躍する太鼓芸能集団・鼓童。重量感あるパフォーマンスで、THE ICEの新境地を印象づける。続いてAdoの『唱』が流れる中、続々とリンクにスケーターが滑り出てきた。伝統的な和太鼓、そして今をときめく歌姫のヒット曲に乗った、日本の格好良さを象徴するような幕開けとなった。

今年のTHE ICEは鼓童とのコラボレーションをはじめ、ナビゲーター(宮原知子、ジャン=リュック・ベイカー)・全編撮影可能公演の導入など様々な初めての試みに挑んでいる。シングルスケーターについては男子だけがキャスティングされていることも、その一つだ。デニス・ヴァシリエフス(ラトビア)、ニカ・エガゼ(ジョージア)、ミハイル・シャイドロフ(カザフスタン)、ケヴィン・エイモズ(フランス)、アレクサンドル・セレフコ(エストニア)が今季のショートプログラムを披露し、シーズンの本格的な開幕への期待を感じさせてくれた。

2023年四大陸選手権金メダリストの三浦佳生、2023年世界選手権銀メダリストのジュンファン・チャ(韓国)、現世界王者のイリア・マリニン(アメリカ)は、それぞれの個性が際立つエキシビションナンバーを滑った。三浦はTani yuukiの『Myra』の繊細な歌詞を表現、幅を広げようとする意欲を感じさせた。モノトーンの衣装に身を包んで登場したジュンファンは、メロウなナンバー『Mr/Mme』を演じ、会場を優雅な雰囲気で満たす。一方マリニンは、ビリー・アイリッシュとカリードによる内省的な曲『lovely』に乗せた深みのある滑りで魅了し、表現面での進化を印象づけた。

そして宇野昌磨にとり、今年のTHE ICEは、プロスケーターとなって初めての座長として臨むアイスショーとなる。第1部の最後には、ジュンファンとのコラボレーションナンバー『トゥーランドット』を滑った。宇野は2018年平昌五輪、ジュンファンは2022年北京五輪で滑った名曲を、二人で再現したのだ。伸びやかなスケーティングは二人に共通する持ち味だが、宇野の重厚さとジュンファンの上品さという個性も感じられる、贅沢なプログラムとなった。

そして第2部の終盤、宇野は鼓童の『巡』に乗せ、過去のプログラムでハイライトとなった振付を散りばめた滑りを披露した。宇野の様々な名場面が思い出されるナンバーで、競技者としての自分を総括し、プロとして新たな出発をする決意が感じられた。

フィナーレでは、スケーター達が法被を着て登場、鼓童の『結』に合わせてエネルギッシュな滑りをみせた。三浦がかかとに乗るスピンを披露、マリニンはバックフリップとラズベリーツイストを決め、宇野はクリムキンイーグルでリンクを横切っていく。グランドフィナーレでは、すべてのスケーターが観客に飛び切りの笑顔を届けた。

鼓童のパフォーマンスと、スケーターの滑りが熱い化学反応を起こすTHE ICE。記念すべき東京公演は、28日まで続く。

ライター

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(フィギュアスケート、アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。2022年北京五輪を現地取材。

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