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ハードスケジュールの両者激突! B級1組5回戦▲藤井聡太三冠(19)-△木村一基九段(48)戦始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月20日10時。東京・将棋会館において第80期順位戦B級1組5回戦▲藤井聡太三冠(19歳)-△木村一基九段(48歳)戦が始まりました。

 対局がおこなわれるのは将棋会館5階、特別対局室。本日は祝日(敬老の日)で、将棋会館では本局のほかに対局はありません。休日に対局がおこなわれるのは例外的で、どちらかの棋士が勝ちすぎて忙しいなどの場合によります。

 本局の対局者はともにハードスケジュールのまっただ中にあります。

 B級1組5回戦の一斉対局がおこなわれたのは16日。藤井三冠は13日に叡王戦五番勝負第5局、17日に棋王戦本戦3回戦を指しています。一方で木村九段は15日に王座戦五番勝負第2局を指しています。

 両者は一昨日18日、ABEMAトーナメント決勝で対戦。藤井三冠がリーダー対決を制するなどして、チーム藤井が5勝3敗で試合を制し、優勝を飾りました。

 木村九段は本日の対局が終わったあと、明日は神奈川県秦野市鶴巻温泉・陣屋に移動。あさっては王座戦第3局で永瀬拓矢王座と対戦します。

 9時33分頃、まず藤井三冠が姿を見せ、床の間を背にして、上座に着きました。

 続いて9時45分頃、木村九段入室。下座にすわりました。

  両者、駒を並べ終えて静かに対局開始のときを待ちます。順位戦はあらかじめ先後が決められていて、振り駒はおこなわれません。

 定刻10時。

「それでは時間になりましたので、藤井先生の先手番でお願いします」

 記録係が合図をして、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間6時間の対局が始まりました。

 藤井三冠は紙コップを口にしてお茶を飲んだあと、2筋、飛車先の歩を一つ前に進めました。

 木村九段はスーツの上着を脱ぎました。白いワイシャツには「K.K」というイニシャルが刺繍されています。消費時間は1分。木村九段はしばし瞑想したあと、2手目、8筋の飛車先を伸ばしました。

 一昨日のABEMAトーナメント、両者の対戦は藤井先手で相掛かりでした。そして本局も先後は同じで、また戦型も同じ相掛かりでした。

 9手目。藤井三冠は端9筋の歩を突きます。ある若手棋士はこの序盤を「DL流」と呼んでいました。ディープラーニング系のソフトが推奨する一手で、藤井三冠はいち早くこの手を指し始めています。

 藤井三冠のコンピュータ将棋ソフトに関する話題については、先日公開された王将戦開幕前のインタビュー記事に詳しく掲載されています。

 パソコンを自作することでも知られている藤井三冠。ABEMAトーナメント優勝の賞金の使いみちについては、次のように語っていました。

「去年、賞金でパソコンを組むと言って、そのパソコンを実際組むことができたんですけど、そのパーツをもう少しいろいろ買い足していきたいなと思ってます」

 一方の木村九段も若手に負けず、コンピュータを使っての研究を怠りません。現在『AERA』(週刊誌)には連載中の木村一基九段のインタビュー記事が掲載されていますので、興味ある方はぜひご覧ください(聞き手担当は筆者)。木村九段の研究の話、そして本局の話などについても触れられています。

 将棋日本シリーズ JTプロ公式戦(JT杯)は、基本的に休日におこなわれます。

 永瀬王座は本日、糸谷哲郎八段と対戦します。

 25日、藤井三冠はJT杯で千田翔太七段と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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