スコットランド独立機運と温暖化
イギリス北部のスコットランドは北緯57度付近に位置し、日本でいえば北海道のさらに北、サハリン(樺太)の北部くらいでしょう。イメージするならば、ハリー・ポッターの映画を思い浮かべるといいかもしれません。ホグワーツ特急が走るシーンの撮影に使われたことは有名です。
また、この冷潤な気候が生んだのがスコッチウイスキー。独特の煙のような香りは、麦芽を乾燥させるときに使われる泥炭(ピート)によるものです。泥炭(ピート)は枯れた植物が長い間、あまり分解されずに堆積したもので、世界の約90%が北米・ロシア・ヨーロッパ北部など寒冷地に分布しています。
スコットランドの歴史や文化を考えるとき、この厳しい自然は切っても切れない関係にあると思います。
スコットランドは温暖化の先進
イギリスからの独立の機運が高まっている背景に、政治や経済、民族意識を掲げる論調が相次いでいますが、私は気象の面から考えてみたいのです。というのも、スコットランドは世界で最も温暖化が進んでいる場所であるからです。
この2つのグラフをみてください。スコットランド最大の都市グラスゴーにほど近いペイズリー(Paislly)と東京の年平均最高気温を1960年代と2000年代で比べたものです。
ペイズリーではこの40年間で、年平均最高気温が1.4℃上昇しました。一方、東京はわずか0.5℃です。ペイズリーの気温上昇率は東京の3倍にも上ります。
スコットランドは日本よりも早いペースで温暖化が進んでいる場所で、気候がダイナミックに変化しています。温暖化は負のイメージがありますが、寒冷な地域では暖かくなることで、農作物の収穫量が増えたり、氷に閉ざされる期間が短くなり経済活動が活発化するなどの良い面もあります。
実際に、デンマーク領グリーンランドでは温暖化の影響で、年々、氷が薄くなり、地下資源の採掘が容易になっています。資源から得られる利益が増えれば、さらに独立運動が高まると指摘する専門家もいます。
温暖化にともなう気候変動は単に異常気象を誘発させるだけでなく、分離独立運動を後押しする力を秘めているのかもしれません。
【参考資料】
イギリス気象庁(MetOffice):UK climate- Historic station data
日本経済新聞2012年10月14日:海外メディアから「欧州各地で分離独立の機運」