22人中10人が女性大臣、性の男性専門家も ノルウェー内閣改造
ノルウェーのアーナ・ソールバルグ首相は、22日に内閣改造を行った。これまで閣外協力していた「キリスト教民主党」が与党となり、4党でなる中道右派連立政権となる。
首相の過半数確保の夢が叶う
右翼ポピュリスト政党・極右に位置する「進歩党」との確執から、小政党「自由党」と「キリスト教民主党」はこれまで政権入りすることを拒んできた。
数年間かけた交渉の末、ソールバルグ首相が夢見ていた「議会で過半数を確保する政権」が誕生。
4党それぞれが、自分たちの政治の象徴となるポストを望む妥協の結果、閣僚は過去最高となる22人に。現地ではその規模から「怪物政府」と報道されている。
女性は多いが、移民閣僚はゼロ
22人中10人が女性と、女性の数は多いが、移民背景のある大臣がいない「白人政府」には以前から批判がある。
ソールバルグ首相はこれまで35人の閣僚を任命してきたが、移民背景のある人は1人もいない。ノルウェーで移民背景のあたる人口は17%であり、政府が国民の鏡として反映されていないことになる。
キリスト教政党が極右と政権入り
今回の政権入りの代償は高く、キリスト教民主党内では分裂が起こっていた。右派から左派への歴史的な方向転換を提案していたハーライデ党首は辞任した。
性科学者が大臣に
キリスト教民主党といえば、性の多様性や同性婚には保守的な傾向がある。性科学者やアーティストであり、第二の都市ベルゲンでは市議会の財務局局長を務めた同党のダーグ・インゲ・ウルスタイン氏は、国際開発大臣に抜擢される。
「カップルはセックスについて、もっと話し合ったほうがいい」という発言も過去にしており、「性科学者が大臣に」と現地では話題となっている。
健康な双子の中絶と女性の権利を巡る議論
キリスト教民主党からの要求で、健康な双子の中絶法を今よりも厳しく規制する方針の政府。1976年に妊娠中絶法が導入されて以降、中絶における女性の権利が政府によって初めて縮小されるとして、左派野党は「ノルウェーの女性にとって悲しい日」と批判している。
妊娠中絶法が昔に逆戻り?ノルウェーの女性が怒る 国会前で大規模デモ
子ども・家族大臣に任命されたヒェル・インゴルフ・ロップスタ国会議員は、閣僚の中で最年少となる1985年生まれで、キリスト教民主党の次期党首候補。「一人育てられるなら、もう一人も育てられるでしょう」という数日前の双子中絶議論における発言が物議を醸し、同氏は謝罪したばかり。
メディア嫌いの閣僚が記者たちのネタに
危機管理大臣に任命されたイングヴィル・スミーネス・ティーブリング=イェッデ氏(進歩党)は、進歩党の他の政治家にも見られる傾向である、「報道陣嫌い」で、「人間の活動が気候変動の原因かは懐疑的」な人物として知られる。「ノルウェーのメディアの憎悪の対象は、私の夫と進歩党」という過去の発言などが改めて注目を集める。同氏の夫は進歩党の炎上常連の国会議員。
新閣僚として任命された日は、過去の失言が改めて掘り起こされるのが恒例行事。各氏は、過去の言動ではなく、これからの働きぶりで評価してほしいと話している。
Photo&Text: Asaki Abumi