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朝ドラ「舞いあがれ!」の好感度はなぜ高いのか。要因のひとつは撮影方法の工夫にあり

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
連続テレビ小説「舞いあがれ!」より 写真提供:NHK

朝ドラこと連続テレビ小説「舞いあがれ!」(NHK)の第4〜6週は、主人公・舞(福原遥)が大学に入学、人力飛行機サークル・なにわバードマンに入部して人力飛行機を飛ばすことになる。広々とした空間のなかで俳優たちが躍動しとても爽やか。朝ドラにしてはロケが多くないだろうか。撮り方も工夫している? これからもこの調子で抜けのいい空間が多く出てくる? 制作統括の熊野律時チーフプロデューサーに第4〜6週について取材した。

福原遥の本気の覚悟が伝わってくる迫真

熊野「飛行機の憧れにものづくりの喜び、このふたつが結びついた象徴的な存在が人力飛行機です。朝ドラヒロインで大学生は少ないですが、人力飛行機という手作りの飛行機に乗って空を飛ぶ、このドラマにうってつけの題材だったので、ぜひやりたいと思いました。ここでの経験が、これからの長い物語の核になってきます。たくさんの人と手を携えて、一緒に何かを作り、みんなで力を合わせて空に向かっていきたいという思いを舞の心に刻み込んでいくことになります」

――第5週では舞が由良(吉谷彩子)に代わってパイロットになるため、トレーニングをはじめます。

熊野「事前の番組『もうすぐ舞いあがれ!』でも舞がトレーニングしている場面の映像を少し出していますが、視聴者の方に納得していただけるものにしたいということを福原さん本人も希望されていたので、撮影に入る前からロードバイクの指導の先生にアドバイスを受けて、トレーニングをしていただきました」

颯爽とロードバイクを走らせる舞(福原遥) 写真提供:NHK
颯爽とロードバイクを走らせる舞(福原遥) 写真提供:NHK

――人力飛行機を飛ばすシーンの撮影はいかがでしたか。

熊野「幸い、天気が良くいいシーンが撮影できましたが、人力飛行機はすごくデリケートなもので、風が強いと動かすことができないので、風待ちすることがかなりありました。スタッフ、キャストは準備万端なのに、安全面を最優先して慎重を期すため、じりじりと進みましたが、キャストの方々も状況をご理解してくださいました。その経験によって、飛行機が飛ぶことはこれだけ繊細で大変であることを実感してもらえてよかったと思います」

――そのときの福原さんはいかがでしたか。

熊野「安全上のこともあるので、福原さんに実際に搭乗してもらったのは、機体が地面を滑走している部分ですが、発進するとき部員たちに福原さんがかける声が想像以上に力強くて驚きました。みんなと一緒にやってきたという思いを背負って飛ぶ本気の覚悟が伝わってくる迫真の演技でした。それまで、彼女がトレーニングをしてきたこと、共演者たちと芝居を積み上げてきたことがギュッと詰まった声なのだと思ってとても感動しました」

朝ドラで見たことのない風景が出てきます

――人力飛行機サークルを取材しているのですか。

熊野「ベーシックな部分は、大阪公立大学のWindMill Clubと堺市の有志の方による大阪公立大学 堺・風車の会の方々に取材しています」

――五島列島、東大阪の飛行機が近くに見える場所、テスト飛行の場所や琵琶湖など広い場所でのロケが多くていいなと思っていますが今回はロケが多めになりますか。

熊野「空を飛ぶ関連はロケが必須ですから、そこは頑張っています。人力飛行機編のあとの航空学校編でもこれまでの朝ドラで見たことのない風景が出てきますよ。そうはいっても特別に『舞いあがれ!』だけロケがたくさんできるわけではないので、全体のバランスを考えながらやっています」

テスト飛行で走るなにわバードマンの面々  写真提供:NHK
テスト飛行で走るなにわバードマンの面々  写真提供:NHK

――朝ドラは基本的にはセットが中心なのでしょうか。

熊野「朝ドラは半年間の長いドラマなので、たくさんのシーンを効率よく撮っていくためにスタジオでのセット撮影がどうしても多くなります」

――セットでも自然な感じがします。光の具合がいいですね。

熊野「朝ドラを長年撮ってきた蓄積のなかで、照明や撮影、映像技術のスタッフもがんばってくれています。セットとロケの境目を意識させないような映像にするというのはとても重要ですので、各部スタッフが工夫をしながらセットっぽく見えないように、常に努力しています」

ーーセットでも空を合成していることが多い印象ですが意識的なものでしょうか。

熊野「セットにおける空は、合成が必要になるので、多用は出来ませんが、シーンの意味合いに応じて演出的に必要なところでは、空を入れるようにしています」

――ロケ撮影で工夫していることはありますか。

熊野「『舞いあがれ!』というタイトルなので、ロケではドローンを積極的に活用しようというのはチームの最初の方針にありました。いままでやってなかった撮影方法にトライしています。凧や飛行機などどうやって撮るか、かなりテクニックを要しますから、プロのドローン操者のかたにお願いして、事前に打ち合わせして、入念にテストをしながらやっています」

――第5週23回のドキュメンタリー番組ふうや、第24回の舞の実写とアニメの融合など 工夫もあります。

熊野「ドキュメンタリー番組ふうは桑原亮子さんが書いてきたもので、こういう工夫も面白いと思いました。特定のドキュメンタリー番組ふうというほど寄せてないですけどね(笑)。アニメは、人力飛行機の構造の説明をわかりやすくしたいと考え、思いきってアニメで表現してみました」

――福原さんとアニメが合っていますね。

熊野「いい形でおもしろい映像になったと思います。今後も楽しく見ていただけるように色んな工夫をしていきたいと思っています」

――脚本の魅力は? 

熊野「桑原さんの脚本の魅力は、それぞれの登場人物の気持ちをていねいに描いていることです。劇的なドラマティックなことは、そんなには起きませんが、ささやかな日常で感じることにしっかり言葉を与えて、気持ちがわかるようにしてくれるし、言わないほうがいいことは役者の芝居にまかせてあえて語らせない、その表現がすてきだなあと思っています。例えば、八木(又吉直樹)の言葉とか、むずかしい言葉を使っていないにもかかわらず、非常に深い気持ちを表現していて、読んでドキリとします」

照明の力でセット感が薄らぐ 写真提供:NHK
照明の力でセット感が薄らぐ 写真提供:NHK

連続テレビ小説「舞いあがれ!」

総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00

BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15

出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介/吉川晃司、高畑淳子ほか

作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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