京口紘人フライ級第2戦
IBFミニマム級、WBAライトフライ級と2階級を制した京口紘人(29)。昨年11月1日に、WBCライトフライ級王者の寺地拳四朗に敗れ、プロ生活初黒星を喫した。その後、フライ級に転向。来る22日に、112パウンドで2戦目を迎える。
プロ19戦目を控えた京口は言う。
「『3階級制覇』は幼い頃から僕が『世界チャンピオンになる!』という夢を追いかけていたものと、同列ではないです。自分としては、2階級制覇でさえ出来過ぎです。世界タイトルを獲得して、上のクラスでも世界のベルトを巻けて、4回防衛して統一戦もやれました。
井上尚弥は当然のように3階級、4階級と制覇しましたが、僕にとっては凄過ぎることなんですよ。彼と同じレベルの3階級じゃないんです。僕のなかでの3階級は、本当に難しいチャレンジです。でも、目指す資格はあるのかな、と。
ライトフライに留まって、もう一度ベルトを、という選択肢もあるにはありましたが、自分の中では既に達成しているステージなんですね。それではモチベーションが上がらなかったんです。ライトフライで世界タイトルを狙う方が、フライよりは、成功の確率は高かったでしょう。でも、敢えて茨の道を選んで、大きな目標に挑む方が、人生においてプラスかなと感じました」
筆者が京口の練習を見学した日、重心の低いバランス、リングを滑るように動くステップが印象的だった。
「今は、新しいことに取り組むよりも、初心に戻るじゃないですけれど、バランスだったり、足の運びだったり、丁寧に基礎をおさらいしようという意識で練習しています。階級を上げたことにより、パワーアップはもちろんですが、全体的に体を大きくしなくては、という思いがあります。
そのうえで、フライ級で戦える肉体作りをやってきました。その成果を実感しています。試合までのスパーリングは、100ラウンドをちょっと超えるくらいじゃないかな。前回よりも、フライ級にアジャスト出来てきたかなとは感じますね。今回はKOで勝つというのを、自分の中でテーマとして掲げています。いいパフォーマンスを見せたいです」
小林尚睦トレーナーも言う。
「メンタル面の充実が見て取れます。フライ級で一戦したことにより、同階級でもやれる自信を持ち、不安感が拭えていると感じます。次にフィジカル面ですが、パーソナルトレーナーとのフィジカルトレーニングのお陰で、ジムワークでの1発1発のパンチ、下半身の粘り強さ、自分より大きい選手に押し負けなくなったことは間違いありません。ディフェンス後に、すぐ攻撃に移れるようになっていると感じます。
ラウンドの組み立て方、ガードだけで終わらない、相手のパンチをよけた後に軽いパンチで多角的なコンビネーション、その合間に強いパンチと、より手数も増えました。左ボディだけでなく、いくつか、これならば倒せるな、と思うパンチも身に付けましたよ。まだまだ、この階級ではチャレンジャーですので、心を引き締めて、しっかりと勝負したいですね」
フライ級第1戦は、再起戦でもあり、京口は慎重な戦い方をした。また、試合途中で右の拳を痛め、自分らしさを出せなかった。
「ですから、今回はKOに拘りたいです。身体が大きくなっていますから、減量が楽になったという訳ではないです。変わらないですね」
京口の代名詞とも呼べる左ボディアッパー。
スパーリングでもミット打ちでも、コンビネーションにこのパンチが入ると、俄然、リズムが上がる。
「スパーでも、いい時は上下に打ち分けられていますし、ジャブとボディがしっかり打てている時は、内容が良くなりますね。そこは、自分の武器です。
僕も今年30歳ですし、ボクシングキャリアも18年目ですから、自分の中では最終章だと感じています。長くても、あと5年くらいかな」
この日、京口は自分の練習メニューを一通りこなした後、デビュー前の後輩のスパーリングを目にした。その折、「出来ないことを出来るようにするのが、練習だぞ」と、声を掛けた。
「自分は器用な人間じゃないんです。努力し続けて今があります。自分らしさというか……今後もそうやっていきますよ」
フライ級での京口の挑戦を、しっかりと見届けたい。