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教委にケンカを売った川勝・静岡県知事

前屋毅フリージャーナリスト

全国学力テスト(全国学力・学習状況調査)結果の公表問題で全国的に注目されることになった静岡県の川勝平太知事の「暴走」が止まらない。

10月24日、静岡県教育委員会(教委)は全国学力テストの小学6年国語Aで全国最下位だったことを受け、県下の小中学全校の校長を集めて会合を開いた。教委が指定した学力向上モデル2校の取り組みが発表させて、「学力」の向上について学習してもらうという趣旨だったらしい。

ところが、ここに出席した川勝知事が、取り組みを発表した2つの学校名を挙げ「153位と250位だった。もちろん平均以下だ」と公言したのだ。学校ごとの成績発表を文科省は禁じており、そこに異議を申し立てて公表騒ぎを起こしたのが川勝知事である。

そうした川勝知事に対して教委も文科省も不快さを表明したが、川勝知事は屈せず、屁理屈的な方法で「公表」を実行してしまった。そして今回、学校名を名指しで公表してしまったわけだ。

もちろん、これはこれで問題である。ただし、そこだけに目を奪われてはいけない。もっと注目すべきは、教委が学力向上モデル校に指定した2校を全国学力テスト成績で下位校と公表したうえで、「ほんとうに模範的な学校経営なのか」と指摘したことである。川勝知事が教委そのものを批判したのだ。

教委が学力向上モデル校に指定した学校が全国学力テストで下位の成績しかとれなかったのだか批判されて当然だろう、という受け取り方もあるだろう。そうした意見には、学力テストの結果だけが「学力」なのか、と問いたい。

少なくとも川勝知事は、「全国学力テストの結果が学力」と考えているらしい。そこで結果をだせない教委について、大きな不満をもっている。それが、今回の発言ではっきりしたわけだ。

そうした川勝知事が、今後、学力テストで上位の成績をとることを学校経営の大目標にすることを教委や学校に押しつけてくることはまちがいない。学力テストの成績しか問題にしない狭い視野の教育が押しつけられてくるわけだ。そうした知事に対して、教委や学校がどのように反応していくのか注目される。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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