米国が警戒する北朝鮮の対露武器支援! 砲弾から対戦車ミサイルまで供与すればウクライナ情勢にも影響か
米国が北朝鮮によるロシアへの武器供与情報に神経を尖らせているようだ。
ホワイトハウスのジョン・カービ国家安全保障会議(NSC)戦略広報調整官は昨日、「北朝鮮がロシアにウクライナ戦争のため相当量の砲弾を秘密裏に提供したとの情報を得た」と述べていた。
カービー調整官によると、ロシアへの砲弾は最終目的地を偽造し、中東または北アフリカなどの国を経由してロシアに送られているとのことだ。
実際に北朝鮮の砲弾が第3国を通じてロシアに渡ったかについては「確認中である」として、「仮にロシアに渡っているならば、国連の場で責任を問えるか、同盟国と今後、議論することになる」と語っていた。
カービー報道官が明らかにした情報はこれ以上でも、これ以下でもない。北朝鮮がどのような種類の砲弾をどのぐらい、いつどの国に輸出したのかについては言及していなかった。
北朝鮮は2009年6月13日に採択された国連安保理制裁決議「1874号」によって小型兵器を含めすべての武器の輸出が禁じられている。
国連制裁委員会の監視の目もあり、空輸にせよ、海路にせよ、第3国への輸出は容易ではない。実際に2013年には北朝鮮の貨物船「清川江号」が拿捕され、袋詰め砂糖(25万袋)で覆われていたロケット推進式手りゅう弾やミサイルの部品などが押収された。2014年にもメキシコに向かっていた武器取引の容疑で国連の制裁対象リストに上がっていた北朝鮮籍の貨物船「無頭峰号」が臨検され、メキシコ当局に押収されている。
北朝鮮がロシアに武器を提供するならば、ロシアとは国境を接していることから直接陸路、鉄道で輸送するのが最も確実で安全である。確実なルートがあるのになぜ、危険を冒してまでわざわざ遠回りして輸送するのか疑問である。
バイデン政権は9月にも「ロシアが北朝鮮を対象にミサイルや砲弾の購入を打診していた」との情報を明らかにしていたが、北朝鮮の国防省装備局副局長は「我々はこれまでロシアに武器や弾薬を輸出したことがなければ、これからもそのような計画はない」と全面否定していた。
北朝鮮の否認は俄かに信じ難い。イラン当局もロシアにドローンを提供しておきながら、公式には今なお、否定しているからだ。
北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻以来、国連の場で「ロシアは米国1極の世界支配を変えるため戦っている」とロシアへの連帯を表明している。金正恩(キム・ジョンウン)総書記もプーチン大統領の誕生日(10月7日)に送った祝電で「米国とその追随勢力の挑戦と脅威に打ち勝ち、国際的な正義を実現するための闘争での相互支持」を強調していた。従って、ロシアが弾薬や砲弾、武器不足に陥っているならば北朝鮮が武器を提供したとしても決して不思議なことではない。
まして、敵対関係にある韓国に対してウクライナが対空武器体系の支援を要請し、ウクライナを支援しているNATOのロプ・バウアー軍事委員長(オランダの海軍大将)までが4月に訪韓し、徐旭(ソ・ウク)国防長官(当時)と元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長らに会い、直々に武器支援を要請していたことからその逆パタンでロシアが北朝鮮に武器の支援を要請したとしてもこれまた決して不自然なことではない。
プーチン大統領は5日前に「韓国がウクライナに武器提供を決定する場合、韓国とロシアの関係は破綻するだろう」と韓国に対して唐突に警告していた。
韓国がウクライナに送っているのは防弾ヘルメット、テント、毛布や衣料品など非殺傷用軍需物資あるいは人道支援に限られ、兵器は送っていない。それにもかかわらず、意図的にウクライナと韓国の兵器取引の話を持ち出したのは、北朝鮮からの武器調達の口実にするつもりのようだ。
中立的な立場にある国連は北朝鮮のロシアへの砲弾提供については「安保理制裁委員会で調査を行うことになる」として、深入りを避けたが、仮に砲弾供与が事実ならば、安保理は北朝鮮とロシアに新たな制裁を科すことになる。しかし、北朝鮮は安保理からすでに10回制裁を掛けられているので意に介することはないであろう。
カービー戦略広報調整官は「北朝鮮の砲弾がロシアに供与されてもウクライナの戦況を大きく変えるものではない」とコメントしていたが、今後砲弾に留まらず、ロシアが欲しがっている携帯用対戦ミサイルを含めミサイルまでも提供されるようなことになれば、ロシアを勢いづけることになりかねないだけに米国は放置できないだろう。
北朝鮮は今年だけでミサイルは延べ79発、砲弾に至っては東西の海に向け数えられないほど発射している。ロシアに供与できるぐらい在庫はあるようだ。