「生き証人」の北朝鮮兵が死亡!激戦地のクルスクに北朝鮮兵が1万1千人もいるのになぜ捕虜がゼロなのか?
ウクライナに侵攻しているロシアとこれを支援している北朝鮮は国際社会の反発を恐れ、北朝鮮の派兵事実を覆い隠すため様々なカモフラージュを駆使し、これに対してウクライナは北朝鮮の派兵を立証しようと躍起になっているが、そうした最中、ウクライナ軍当局の26日の「北朝鮮兵士生け捕り」の発表はウクライナにとっては大きな戦果だった。
(参考資料:ウクライナ軍が北朝鮮兵士をついに「生け捕り」!)
しかし、この兵士が一日も持たず、その後死亡してしまったことで北朝鮮参戦の「決定的な証拠」が失われてしまった。兵士本人が自ら身元を明かし、また本人の口から北朝鮮の派兵実態が直接語られれば、しらを切っているロシア及び北朝鮮にとっては万事休すだった。返す返すも残念だ。
ウクライナ当局が北朝鮮兵士の死傷者を「3000人を超えた」とか「ドロンの攻撃の餌食にされている」といくら発表しても、証拠がないので、ウクライナの情報戦、あるいは攪乱戦の一環とみなされてしまう。
また、「遺体からロシア式名前が書かれた偽身分証が発見された」としてハングルの名前が自筆で書かれている身分証を「証拠」として提示しても、ウクライナ当局がハングル名を書き込んだのではないかと勘繰られてしまう。
例えば、ウクライナ軍当局は「懐かしい朝鮮、愛する両親のもとを離れ、ここロシアの地で誕生日を迎える我が同志よ」と死亡した北朝鮮兵士が今月9日に友人に送るため記した手紙を24日に公開していたが、北朝鮮では「懐かしい朝鮮」ではなく、「懐かしい祖国」と表現するのが一般的である。心理戦を担当するウクライナ情報当局の手によって手紙が作成されたと疑われればそれまでだ。
昨日も韓国のテレビ「KBS」が名前、生年月日、住所、出身地、血液、入隊時期など詳細が書かれてある北朝鮮の「2小隊、2組」(兵士9人)の名簿をウクライナから入手したと、報じていたが、ウクライナ軍当局がこれまでドネツク州ポクロフスク戦線にある鉱山の廃石の上に北朝鮮とロシアの国旗が共に掲げられている写真を投稿したり、重傷を負って地面に横たわっている兵士の軍服に金正恩(キム・ジョンウン)総書記の顔を縫い付けた写真を公開するなど小細工を弄してきただけに今一つ太鼓判を押すことができない。
ジョン・カービー米大統領補佐官は昨日(27日)ロシアのクルスク州でウクライナ軍との交戦に投入された北朝鮮兵士が「過去1週間だけで北朝鮮兵千人以上が死傷した」との分析を示していた。また、ウクライナ軍への降伏を拒み、自殺したとの報告があるとも述べていた。「捕虜になった場合、北朝鮮政府が家族に報復するのを恐れているため」とその理由についても語っていたが、自殺する理由はそれだけではないだろう。
ロシアに派兵された兵士が「暴風軍団」に属する特殊作戦の部隊であると伝えられ始めた頃、筆者は11月1日付の「北朝鮮の対露派兵部隊が『暴風軍団』ならば投降せず、自害する!」との見出しの記事で以下のように記した。
「ウクライナも韓国も栄養失調状態にあるとされる北朝鮮の派兵兵士にビラや拡声器などを使って武器を捨てるよう呼び掛ければ、多くの兵士が戦線を離れ、ウクライナに投降するか、韓国に亡命するだろうと期待を寄せているが、派遣された兵士が一兵卒や新兵ならばいざしらず、思想的にも精神的に鍛練、武装され、人一倍忠誠心の強い特殊部隊ならば、銃を突きつけられない限り、自発的に白旗を掲げ、投降する可能性は低いのではないだろうか」
「最高司令官の命令があれば、爆弾を抱えて敵地に飛び込んでいくことも辞さない」と、精神武装されている彼らにとって「投降」は即、死を意味する。従って、敵地に浸透する者は捕まる前に「自分の命を絶て」と、徹底的に教え込まれている。敵と撃ち合いになっても「最後の1発は自害するため絶対に残しておけ」と叩き込まれている。工作員の場合は毒薬(青酸ガス)のアンプルも携帯している。
実際に1996年の潜水艦による韓国の東海岸浸透事件でも乗務員らは自決、もしくは抵抗し、射殺されている。責任者の大佐を含め26人の乗務員のうち11人が集団自決し、14人が射殺され、生け捕りにされたのはたった一人だったが、彼もまた自殺防止用の猿轡を嚙ませられていた。日本で広く知れ渡っている1987年の大韓航空機爆破事件でも実行犯の金勝一(キム・スンイル)は服毒自殺し、また生け捕りされた金賢姫(キム・ヒョンヒ)も服毒自殺を図ったことは周知の事実である。さらに2001年に奄美大島に侵入した北朝鮮の工作船も海上保安庁の巡視船と交戦の末に自爆、自沈している。
しかし、これらはいずれもカリスマ性があった金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)時代の話である。
韓国への脱北者が後を絶たない3代目の金正恩(キム・ジョンウン)時代でもその精神が引き継がれているのか、それとも大量の投降者が発生するのか、何はともあれ、北朝鮮兵士第1号を捕まえるのが先決だ。