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朝鮮半島で今年、何が起きたのか! 2024年朝鮮半島「10大ニュース」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
尹錫悦大統領(左)と金正恩総書記(大統領室と労働新聞から筆者キャプチャー)

 今年も朝鮮半島では様々な出来事、事件が発生した。韓国と北朝鮮関連の特筆すべき出来事を「10大ニュース」にして挙げてみる。

 1.尹錫悦大統領の戒厳令発令と弾劾(12月)

  韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が12月3日に突如、野党が多数を占めている国会を封じ込めるため非常戒厳令を発令した。韓国での戒厳令は実に44年ぶりであるが、失敗に帰した。責任を問われた尹大統領は国会で弾劾された。大統領代行となった韓悳洙(ハン・ドクス)首相も野党が求めた憲法裁判官の任命を拒否したため相次いで弾劾された。仮に憲法裁判所で尹大統領が罷免されれば、2025年上半期には大統領選挙が行われる。内乱容疑で逮捕状が発布されている尹大統領が逮捕されれば、現職大統領としては初めてのことである。

 2.北朝鮮の対露派兵(10月)

 ロシアのウクライナ侵攻以来、一貫してプーチン政権を支持し、弾薬など武器を供与してきた北朝鮮が10月に約1万1千人の兵士をロシアに派遣。北朝鮮の派兵は内戦が勃発したシリアに2011年に派遣して以来、13年ぶり。「暴風軍団」と称される特殊部隊から成る北朝鮮兵士らはウクライナが侵攻し、占領したロシア領、クルスク州の奪還を目指し、ウクライナ軍と交戦。ウクライナ軍当局の発表によると、すでに3千人以上の死傷者が出ている。

 3.韓国旅客機事故(12月)

 韓国南西部の務安国際空港で12月29日、乗員乗客181人を乗せたチェジュ航空の旅客機が胴体着陸に失敗、炎上し、乗員乗客179人が死亡。2014年に死者299人、行方不明者5人を出した大型旅客戦「セウォル号」、2022年に158人死者を出した「ソウル梨泰院雑踏事故」に続く大惨事となった。韓国の航空機事故としては1993年のアシアナ航空墜落事故(死者66人)があるが、今回は過去最悪の犠牲者数となった。日米中など世界各国の首脳からお見舞いのメッセージが寄せられた。

 韓国総選挙で与党「国民の力」が大敗(4月)

 過半数の獲得を目指し、与党「国民の力」と最大野党「共に民主党」が激突した第22代国会議員選挙が4月10日に実施された。結果は全300議席のうち、「国民の力」108議席、「共に民主党」171議席と、与党の惨敗に終わり、政権与党は前回に続いて「与小野大の国会」運営を強いられた。戒厳令が発令された際に中央選挙管理委員会を戒厳軍が占拠し、選挙データーを持ち出したが、尹大統領は「与党の敗因は不正選挙が行われたため」と、選挙管理委員会に不信を抱いていた。

 プーチン大統領の24年ぶりの訪朝(6月)

 プーチン大統領が6月19日に北朝鮮を国賓訪問。プーチン大統領の訪朝は2000年7月以来、実に24年ぶりで、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の昨年9月の訪露への答礼訪問となった。平壌到着が遅れたため僅か1日の滞在となったが、金総書記との首脳会談では「包括的戦略パートナーシップ条約」を交わした。一方が攻撃された場合、他方が遅滞なく軍事支援、協力を行う事実上の軍事同盟条約である。来年5月のロシアの対ドイツ戦勝80周年記念日式典に向け金総書記のモスクワ訪問が取り沙汰されている。

 6.北朝鮮の南北国土断絶措置(10月)

 北朝鮮は2023年7月から唐突に南朝鮮を「大韓民国」と呼称し、5か月後の労働党中央委第8期第9回総会では南北統一放棄を公式に宣言し、南北関係を「敵対的な二国間関係」と位置づけ、国歌から「三千里」という文言も削除していたが、今年はそのことを物理的に示した。軍事境界線(休戦ライン)を国境に定めた上で国境を永久に遮断するため地雷を埋蔵する一方、ベルリン壁のような障壁を構築。また、南北を繋いでいた東西の2本の鉄道線(京義線と東海線)を遮断するため枕木やレールを除去した。

 7.南北ビラ散布の応酬(5~11月)

 韓国の対北宣伝ビラ風船は5月10日に脱北団体「自由北韓運動連合」が飛ばしてから延べ11回に及ぶ。一方、5月28日から始まった北朝鮮のゴミ風船の回数は実に32回に上る。韓国軍は6月から北拡声器放送で対抗し、10月には無人機を使って平壌に金総書記を批判する宣伝ビラをばら撒いた。その後、無人機を3度も平壌上空に飛ばしたのは北朝鮮の軍事挑発を誘導し、戒厳令を敷くための挑発だったことが判明。戒厳令の計画を練った金龍顯(キム・ヨンヒョン)前国防部長官は韓国軍合同参謀本部に「北朝鮮が風船を飛ばしている原点(地点)をなぜ攻撃しないのか」と叱責いていたことも明らかとなった。

 8.韓国人初のノーベル文学賞受賞(10月)

 韓国の現代文学を代表する作家の韓江(ハン・ガン)さんが10月10日、2024年のノーベル文学賞を受賞。アジア人の女性としては初のノーベル文学賞受賞である。韓国にとってノーベル賞は2000年の平和賞を受賞した金大中(キム・デジュン)大統領(当時)以来二人目。詩人から文学者となった韓さんはイギリスで最も権威ある文学賞の翻訳部門にあたる「ブッカー国際賞」を受賞し、世界的に注目を集めていた。代表作は「菜食主義者」

 北朝鮮の偵察衛星発射失敗(5月)

 北朝鮮は5月27日に軍事偵察衛星を発射したが、失敗。昨年5月、8月に続く3度目の失敗となった。軍事偵察衛星の保有は北朝鮮が2021年に打ち出した国防発展5か年戦略目標の一つである。北朝鮮は早期の再発射を示唆し、韓国情報機関の国家情報院(国情院)も遅くとも米大統領選挙(11月6日)前後に発射すると予測していたが、北朝鮮は失敗してから一度も発射していない。金総書記は今年中に「3基の偵察衛星を打ち上げる」と公言していたが、時間切れで目標達成は不可能となった。

 10.野党党首の相次ぐ有罪判決(11~12月)

 大統領選挙期間中に虚偽の発言をしたとして公職選挙法違反の罪に問われていた最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表が11月に開かれたソウル中央地裁(第1審)で懲役1年(執行猶予2年)を宣告された。仮に高裁、最高裁で罰金100万ウォン以上の刑が確定すれば、失職及び被選挙権を剥奪され、次期大統領選挙に出馬できない。また4月の総選挙で12議席を獲得し、野党第2党に躍進した「祖国革新党」の曺国(チョ・グック)代表も娘の不正入学に関する容疑で12月に開かれた大法院(最高裁)で懲役2年を宣告され、収監された。すでに議員を失職し、公民権も剥奪されている。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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