オリパラ、大阪万博、スポーツイベントなど、人が多く集まる「マスギャザリング」で問題になる感染症は?
東京オリンピックは無観客開催となりマスギャザリングは起こりにくくなりましたが、今後も国内で国際イベントが予定されています。
マスギャザリングによって流行しうる感染症にはどのようなものがあるのでしょうか?
マスギャザリングとは?
マスギャザリングとは,日本集団災害医学会では「一定期間,限定された地域において,同一目的で集合した多人数の集団」と定義されています。
つまり、大勢の人が一つの場所に同時に集まることをマスギャザリングと言います。
東京オリンピックは無観客開催となり、少なくとも競技会場でマスギャザリングが発生することはなくなりましたが、パラリンピックは現在も有観客開催が検討されているようですし、オリンピックでも競技場以外の場所で人が多く集まってしまうことが懸念されています。
また、東京オリンピック・パラリンピックが終わった後も、2022年の「ワールドマスターズゲームズ」、2025年の「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」をはじめ今後も国内でマスギャザリング・イベントが開催される予定ですが、マスギャザリングでは特定の感染症が流行することがあり注意が必要です。
国内外のマスギャザリング・イベントの過去の事例は?
髄膜炎菌感染症という感染症は、ハッジ(Hajj)というイスラム教徒がメッカで行う巡礼の際に流行することで有名ですが、それ以外のマスギャザリングでもときにアウトブレイクすることがあります。
例えば2015年に山口県で世界スカウトジャンボリーというイベントが開催され、世界155の国と地域から約3万4千人の青少年が集まりましたが、このイベントに関連して「髄膜炎菌感染症」がアウトブレイクしました。
髄膜炎菌感染症は飛沫感染で伝播する感染症であり、致死率約10%と重症度の高い疾患として知られています。
その他、人から人への直接の感染ではなく、お祭りの屋台で売られていた食べ物による集団食中毒も広い意味でマスギャザリングに伴う感染症と言えます。
日本国内では大学祭でのクレープを原因とした黄色ブドウ球菌による集団食中毒事例、花火大会で売られていた冷やしキュウリを原因とした腸管出血性大腸菌O157の集団感染事例などがあります。
海外でも国際イベントと関連して、感染症がアウトブレイクした事例があります。
こうした国際イベントは感染症の発生にも警戒しなければなりません。
マスギャザリングで発生しうる感染症は?
今回のオリンピック・パラリンピックではどうしても新型コロナに注目が集まっていますが、それ以外にも、国際イベントに関連して、
・蚊媒介感染症(デング熱、ジカウイルス感染症、チクングニア熱など)
・髄膜炎菌感染症
・麻しん、風しん、おたふく、水痘
・インフルエンザ
・感染性腸炎(ノロウイルス、サルモネラ、腸管出血性大腸菌O157など)
・性感染症(梅毒、淋菌、クラミジア、A型肝炎など)
などの感染症が流行することがあります。
国や自治体はイベント開催前、開催中、開催後にこれらの感染症が増えていないかを監視するサーベイランスを徹底することで、早期に検知し拡大を抑えることが重要です(例えば東京都は現在「感染症発生動向デイリーレポート」を発行するなどオリンピック開催に合わせてサーベイランス体制を強化しています)。
新型コロナの感染対策としてマスク着用、3密回避、手洗いだけでなく、他にも私たちが日頃からできる感染対策があります。
麻しん、風しん、おたふく、水痘などのワクチンで予防できる感染症は、国内のワクチン接種率を高めることで流行が広がるのを最小限に抑えることができます。自身の接種記録を確認し、合計2回の接種歴がない方は抗体検査やワクチン接種についてご検討ください。
ノロウイルス感染症など手を介して広がる感染症にも手洗いは有効です。こまめに手を洗うようにしましょう。
またデング熱などの蚊媒介感染症も海外から持ち込まれて流行が広がることがありますので、特に蚊が活動する時期は屋外では虫よけを使って蚊に刺されないことが大事です。
東京オリンピック・パラリンピックだけでなく、今後の国際イベントでもこれらの感染症を流行させないように、日頃から新型コロナやその他の感染症の予防に努めましょう。