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【深読み「鎌倉殿の13人」】源頼朝に侍大将の褒美を願い出た、横田栄司さんが演じる和田義盛とは

渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役
三浦半島は、和田義盛の故郷である。(写真:イメージマート)

 大河ドラマ「鎌倉殿の13人」6回では、横田栄司さんが演じる和田義盛が登場した。和田義盛といえば、あまり知らない人も多いと思うが、どういう人物だったのか考えてみよう。なお、表題は侍大将になっているが、実際に義盛がなったのは侍所別当である。

■和田一族とは?

 和田氏の遠祖は、三浦義明である。義明の孫・義盛は、相模国三浦郡和田(神奈川県三浦市)に本拠を置き、「和田」を名字とした。この義盛こそ、のちに鎌倉幕府で侍所別当に就任した和田義盛である。

 なお、和田氏の出身を和泉国大鳥郡和田郷とする説も見かけるが、こちらは誤りである。和泉和田氏は、「にぎた」、「みぎた」と読み、まったくの別系統である。

■和田義盛とは?

 久安3年(1147)、和田義盛は杉本義宗(三浦義明の子)の子として誕生した。父の義宗は、長寛元年(1163)に安房国で長狭常伴と戦い戦死した。両者は、かねて所領をめぐって争っていた。なお、青少年期の義盛の動きは不明であるが、三浦氏の流れを汲むことは、のちに有利に作用したに違いない。

 治承4年(1180)8月、源頼朝が「打倒平氏」の兵を挙げると、義盛も三浦一族とともに味方した。頼朝は平兼隆を討ち取ることに成功したが、石橋山の戦いで大庭景親に敗れた。

 頼朝が敗れた原因の一つは、三浦一族や義盛と合流を果たせなかったことにある。あいにくの大雨で丸子川(酒匂川)が増水し、三浦一族と義盛は川を渡ることができなかった。頼朝の軍勢は小勢だっただけに、援軍が来なかったのは敗因となった。

■続く不運

 頼朝は何とか逃亡に成功したが、三浦一族と義盛は本拠の三浦半島に戻らざるを得なかった。その帰途、三浦一族と義盛は、不運にも平氏方の畠山重忠と由比が浜(神奈川県鎌倉市)で遭遇した。

 義盛は重忠の軍勢に名乗りを上げたので、もはや合戦は避けられない状態になった。しかし、両軍は同じ東国の武将として、婚姻などを通じて多くの縁者がいたので、交戦を避ける雰囲気となった。

 しかし、義盛の弟・義茂は状況を十分に把握しないまま、突如として重忠の軍勢に攻撃を仕掛けた。これにより両軍は交戦状態に入り、勝敗が決しないまま、兵はそれぞれ退却した。

 三浦一族と義盛は、三浦氏の居城の衣笠城(神奈川県横須賀市)を目指した。重忠勢は、数千の兵でこれを追撃した。義盛も重忠勢を相手に奮闘したが、しょせんは多勢に無勢で敗北が濃厚となったので、城を捨てて脱出した。最後まで城を守った義明は、非業の死を遂げたのである。

■安房国で頼朝と合流

 衣笠城を脱出した三浦一族と義盛は、安房国猟島(千葉県鋸南町)で頼朝と合流した。上総、安房には、東国の名族だった千葉氏、上総氏がいたので、その助力を得ようとしたのである。

 その際、義盛は頼朝に対して、父や子孫が死んでも、頼朝に会った喜びはこの上ないと述べた。続けて、ぜひ頼朝に天下を取ってほしいと言ったあと、その際には自分を侍所の別当に任じてほしいと懇願したのである。これが、ドラマの中のワン・シーンとして取り上げられていた。

 むろん、義盛が頼朝に懇願したのには理由があった。かつて、平氏の家人だった伊藤忠清は、平清盛から「坂東八ヵ国の侍の別当」に任じられていた。義盛はそれをうらやましく思い、いつも八幡大菩薩に「自分も任じられたい」と祈っていたのである。この話は、『平家物語』に書かれている。

 実際、鎌倉幕府が開幕すると、義盛は侍所別当に就任し、御家人を統率することになった。念願が叶ったわけだが、先の『平家物語』の逸話は、にわかに史実か否か確定し難い。

■むすび

 その後、頼朝は態勢を立て直し、再び陸路から西上した。千葉氏、上総氏も頼朝に従ったので、その軍勢は平氏に見劣りしないだけの数になった。もちろん、義盛の姿もあった。義盛は以後も活躍するので、追々取り上げることにしよう。

株式会社歴史と文化の研究所代表取締役

1967年神奈川県生まれ。千葉県市川市在住。関西学院大学文学部史学科卒業。佛教大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。現在、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役。大河ドラマ評論家。日本中近世史の研究を行いながら、執筆や講演に従事する。主要著書に『播磨・但馬・丹波・摂津・淡路の戦国史』法律文化社、『戦国大名の家中抗争』星海社新書、『戦国大名は経歴詐称する』柏書房、『嘉吉の乱 室町幕府を変えた将軍暗殺』ちくま新書、『誤解だらけの徳川家康』幻冬舎新書、 『豊臣五奉行と家康 関ヶ原合戦をめぐる権力闘争』柏書房、『倭寇・人身売買・奴隷の戦国日本史』星海社新書など多数。

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