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シリア人監督と「夢の地球」作る・子ども映画祭

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
シリア生まれの監督サラファさんと男子が作った地球 なかのかおり撮影

子どもが主役の「キネコ国際映画祭2017」で5日、シリア生まれの監督と子どもたちが「夢の地球」を作る企画があった。混乱の続くシリアの子たちも、悲しみや夢を詰め込んだ地球を10月に制作。作品を見せ合い、状況の全く違う国の子たちが、お互いを知るきっかけにする。映画祭は6日まで。

開幕イベントの記事はこちら→だいすけおにいさんも登場・子どもが主役の映画祭

シリアの子が制作。「私の地球は愛と戦争で構成されている」
シリアの子が制作。「私の地球は愛と戦争で構成されている」

映画祭の会場内テント(世田谷区・二子玉川)で5日、開かれたワークショップは「My World 夢の地球を創ろう!」。シリア生まれのビジュアル・アーティスト、サラファ・ヒジャジさんが先生で、8歳から12歳の10人が参加した。「こうなってほしい地球」を表現しながら、平和構築や紛争解決、環境問題を考えるきっかけにする。

サラファさんはアニメの監督やアート制作を手がける。紛争の続くシリアを出て、5年前からドイツに住んでいるという。

シリアの子「死んだ地球」制作

この企画に先駆けて10月、サラファさんはシリアの子どもと、同様の地球を作るワークショップを開いた。危険な地域で訪れることもできず、そこに住んでいる子も他のエリアに出られず、スカイプを通してのテレビ電話中継だった。

シリアの子が制作「私の地球は死んでいます」
シリアの子が制作「私の地球は死んでいます」

そこでできた地球の写真を見ると、「お菓子でいっぱいの地球です」と夢あふれるものもあれば、「私の地球は死んでいます」という説明のつぶれた地球もあった。

サラファさんは初めに、「シリアという国にいました。紛争があって、安全な国を求めて旅をし、ドイツへ行きました」と自己紹介。子どもたちとボールを渡しながら名前を言いあって緊張をほぐした。

それから青いシートを川に見立てて、子どもたちが二つの国に分かれた。「この川は自分たちのもの、飲まないでと主張したらどうなる?」とサラファさんが呼びかけた。子どもたちなりに、「川を半分ずつ、自分たちのものにしたら」と答えを出した。

シャイな反応に心配も

ここまでの子どもたちの様子に、サラファさんは「子どもたちは私の言葉がわからない。シャイだしどうなるか…」と心配していた。地球を作ることになり、「みんなの思う、好きな地球でいいよ。ピンク色でもいいよ」と呼びかけた。

思い思いに作り始めた なかのかおり撮影
思い思いに作り始めた なかのかおり撮影

青いボールが渡され、子どもたちは自分の作りたい地球をイメージ。材料を手に取り、飾り付けに没頭し始めた。

次第に、サラファさんの表情が明るくなった。「ナイスアイディア!」と声をかけて回り、1人ずつ「これは何?」と聞いた。

お花に包まれた地球。タイトルは「平和」 なかのかおり撮影
お花に包まれた地球。タイトルは「平和」 なかのかおり撮影

「違う個性が出ている」

子どもたちの発想は様々だ。

立体的な飾り付けも多い なかのかおり撮影
立体的な飾り付けも多い なかのかおり撮影

地球を大好きなサッカーのフィールドに見立て、グリーンで覆ってゴールゲートを付けた男子。「きらきらの地球」と名付けてかわいい飾りをちりばめた女子。半分ずつ、いい地球と悪い地球にわけて表現した子も。いい地球は、「戦争してない国」という。

スポンジを雪に見立てて貼り付けたり、色とりどりの紙で覆ったり。島を貼り付け、船の絵を描いた地球も。

こうした子どもたちの説明を聞いて、サラファさんは「初めは子どもたちがとてもシャイで。私の言葉が伝わっていなくて、みんな同じような地球ができるのではと思った。でもそうじゃなかったわ。作品は違った個性が出ている。私の話を理解して、感じてくれているとわかりました」と喜んだ。

豊かな発想を聞く なかのかおり撮影
豊かな発想を聞く なかのかおり撮影

サラファさんにインタビュー

作品を見せて場が和むと、子どもや保護者からサラファさんにインタビューする場面もあった。

中1の女子は「子どものころの夢はなんですか」と質問し、「小さいころからアーティストになりたかったので、映画やアートを作れてうれしいです」とサラファさん。逆に「あなたの夢は何?」とサラファさんに聞かれ「地球のすごさを、研究して知りたい」と伝えた。サラファさんは女子のノートに激励のメッセージを英語で書いた。

保護者はシリアの子どもたちの状況について質問した。厳しいとの答えに、「シリアの人に会う機会がないので、いいチャンスでした。日本の私たちにできることはありますか」と投げかけると、「メディア以外の、こういう機会からシリアを知ってもらいたいです」とサラファさん。

日本の作品はシリアの子にも見せる予定 なかのかおり撮影
日本の作品はシリアの子にも見せる予定 なかのかおり撮影

今回のワークショップの様子をシリアの子たちに見せて、お互いを知りコミュニケーションする機会にしたいという。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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